第17話「隣のカーテンの中で 王女マリー=テレーズ ⑥ 」
さて、やっと話し合いが始まりましたが、どうなるのでしょうか。
うーん、やはりエクトル様はお怒りですね……。
まあ、実の娘を目の前で侮辱されたら普通、怒りますわよね。
あ、お義父様が八つ当たりされてますねー、と言うか、お義父様は今更、甘やかし過ぎた事を悔いても遅いと思いますの。
少し反省すべきですの。
そして、子離れすべきです、主に私から。
少々ウザいですし……。
まあ、お忙しかったのと叔母様のこともありますから、気持ちは分からなくもありませんが。
それにしても全く、お義兄様もあの女もやってくれます。
少しは私の苦労も考えて欲しいものです。
今回の相手は国王と宰相、脅しや金品で何とかなる相手ではありませんのに。
でも、お義父様は私が目をうるうるさせてお願いすれば何となりそうな気がしないでもないですが。
さてさて、どうしたものでしょうか。
これはいよいよ力尽くで消えてもらうしかないかなぁ、などと考えていると……。
おや、どうやらお義兄様は暫く幽閉されるようですね。
妥当ではありますが……あの子供に甘いお義父様にしては頑張りましたわねぇ。
あと、反対側のカーテンの中でセシルお姉様はきっと嫌!殿下は私のものです!邪魔するなら剣の錆びに!とか言っているのでしょうね、単純ですから。
私なら逆にチャンスだと思っちゃいますけどね。
幽閉されると言うことは、対策を考えたり、準備をする時間ができる訳です。
さらに身分が剥奪され平民になれば、あとはさらって来るなりお金で買い取るなりして、なんとでもなります。
そして、人里離れた場所に屋敷を建てて私の愛人として囲ってあげちゃいます!くふふ。
まあ、これはちょっとした冗談ですが。
ちょうどいい機会ですので補足をしますと、今のような感じで私とセシルお姉様は考え方、というかタイプが異なります。
まず、セシルお姉様は戦術家タイプ。
短期的、局地的な範囲で目標を達成することが得意です。
それに頑張って隠していますが脳筋ですの。
次に私は、すでにご存知かと思いますが、戦略家タイプですの。
中長期的、大局的に物事を見て、最終的に大きな目標を達成する為に動きます。
例えば、セシルお姉様は一つの戦争の中で起きる個々の戦いで勝利を収めるのが仕事、私は戦争そのものに最終的に勝利することを考えるのが仕事なのです。
もちろんこれは例えで、戦争などしたくはありませんが。
閑話休題。
おやおや、今度はエクトル様が何やら、お義兄様の命をどうとか不穏なことをおっしゃっていますの。
うふふ、残念ですわね。
私、エクトル様のことは嫌いではなかったのですが……海の底と山の中ではどちらがお好みかしら?
……結局、セシルお姉様の殺意を感じ取ったのか、暗殺の件は無くなり、無難に僻地へ島流しに決まりそうです。
婚約破棄も無かったことにされるようですし、セシルお姉様も一安心でしょう。
あと、これ絶対、死んでも任地へ付いていくとか思ってますわよね……。
後で何とかするとか、考えられないでしょうからね。
良いですわよねー、目の前のことだけしか見えないお姉様は……私なんて最悪の事態も考えて、普段からストリアへの亡命も可能なように根回しを頑張っているのに……。
ああ、なんだか愚痴っぽくなって申し訳ありません。
これは後から報酬として頭撫で撫でに加えてキスのひとつも無ければやってられませんわ!
と、私が労働への対価を要求していると、ここで侍従に連れられたお義兄様が入室されました。
漸く主役の登場ですわね。
さて、脳内お花畑のお義兄様が現状を理解して、この温情ある提案を受け入れるのでしょうか?
⑦へ続く。
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