第7話「テレビショッピング!?①」
「なんと!今ならデメリット無く非常に多くのメリットを得ることができるのです!」
ジャン!と脳内で効果音が響く。
「「なんと!」」
そして無駄に驚くナイスミドル二人。
まずはインパクトのある言葉で客?を引きつけて、と……なんかプレゼンというよりテレビショッピングみたいだな。
さあ、いってみよう!
「まず、一つ目、無能な第一王子が王位に就かない!有能な第二王子フィリップが王位に就けばこの国は安泰です!国民への人気は高く、また対外的にも国は盤石だとアピールする材料になるでしょう!」
「おお!!」
よし、いい感じだ。
続けて行くぜ!
「二つ目のメリットはズバリ、セシルです!彼女のメリットは大きいですよ?まず無能な皇太子と結婚しなくて済みます。確かに、大人数の前で婚約破棄をされたら多少の精神的なダメージはあるでしょう……が、しかし!よく考えてみて下さい!中長期的考えて一生涯、無能でうだつの上がらない夫と居るよりも、多少のダメージでスパッと別れて、より相応しい相手と結婚したほうが建設的だと思いませんか!?しかも、今なら彼女の意中の相手に婚約者はいません!」
「セシルに意中の相手?なんの冗談ですか?セシルは昔からマクシミリアン殿下一筋のはず……そもそも娘の事で知らない事など有るはずが……」
ありえないとばかりにスービーズ公は反論する。
いや、それに知らないことは無いって?流石にそれは親バカだろう……。
「何を言っているのです!宰相閣下、思い込みは良くありませんよ?私とはあくまで政略結婚、セシルは私に愛など無いのです!そして、疑問にお答えします。ですが、貴方に多くの言葉は必要ないでしょう。セシルは貴方の娘なのですよ?」
暗に、優秀な貴方の優秀な娘なのですよ?秘密の一つや二つ隠し通せないはずがないでしょう?と。
「た、確かに……しかし、証拠は?そして相手は誰なのです?」
父親としては相手が気になって仕方がないらしく、宰相にしては珍しく焦っている。
「相手は我が弟のフィリップですよ。証拠は、と言うか証人は私です。セシルとは幼少からの付き合いですから、他人には分からない微細な違和感を感じ取ることができます。セシルは私といる時でも、ほんのちょっとした仕草や視線をフィリップに向けている事で想いが弟に向いていることが私にはわかりました。もちろん彼女は聡明ですから、その想いを押し殺し私と添い遂げるつもりだったでしょう」
「そ、そうだったのか……」
これまた珍しく宰相閣下が驚愕している。
因みに、実はこの話は本当だったりする。
ごく稀ではあるが弟のフィリップの前で、セシルから違和感を感じ取ったことがあるのだ。
まあ、当時の私はピンク髪のビッチことアネットに夢中でそんなこと全く気にしなかったが……。
そう考えると、本当に少しだけ彼女にも落ち度があったのではないだろうか?
今更どうでもいいことだが。
「つまり、この婚約破棄によって、意中のフィリップと婚約できるのです。しかも、フィリップもセシルを好いている(これは宮中では割と有名な話だったりする)のです。どうせ同じ政略結婚なら、お互い好き合っている方がいいと思いませんか?いや、こんなに幸せなことはないでしょう!そして今回の婚約破棄を社交界はどのように考えるでしょうか?大多数は無能な皇太子がやらかしたとしか考えないでしょう。さらに国民の間でセシルは悲劇の令嬢、その可憐な容姿も相まって多いに同情が集まることでしょう。元々国民に人気があるフィリップと今回の件で同情と言う名の支持が集まったセシルが婚約すれば多いに祝福されることでしょう!あらゆる意味でこれ以上にない夫婦となります!つまり、彼女には得しかないのです!」
「おお、素晴らしい!」
更に驚くおっさん達。
「まさか殿下がここまでセシルのことを考えて下さっているとは!」
宰相が感極まっているようだ。
「元婚約者として当然のことですよ、私にとってセシルは何よりも大切な存在ですから」
キリッ!
ここで宰相閣下には媚を売らないとね!
実はセシルのこと大事に思ってましたアピール!
「まさか、殿下は今でもセシルのことを本気で想って……はっ!舞踏会でおっしゃった真実の愛の為とはまさか、セシルのことだったのですね!」
ん?さらに感極まった感じの宰相閣下がよく分からないことを叫んでるが……一体何を言ってるのだろうか?
「確かあの時、殿下は、私は真実の愛と正義の為、敢えてこのような場で、はっきりとそれを示した、とおっしゃいました。」
「ああ」
うん、言ったな……。
「字面だけをそのまま受け取れば、アネット嬢への愛とセシルの悪事を断罪するという正義、というように受け止めるのが普通ですが……しかし!」
「!?」
え?違うの?
「実際には違ったのですね!殿下は誰へという事を明言されていない!」
「ま、まあその通りですね……」
「つまり、真実の愛とはセシルへの愛、正義とはセシルへの冤罪をでっち上げた輩を許さない、という意味だったのですね!全てはセシルのことを想ってのことだったと!」
「…………」
え?そうなの?ま、まあいいか。
つまり宰相閣下は私がセシルを愛するがゆえに、彼女には幸せを掴んで欲しい、と身を引き背中を押したと勘違いしているようだ。
どちらかと言うと、押した、と言うより、蹴り飛ばした、と言う方が正しい気がするが……。
ま、まあ、いっか!
「フッ…………」
敢えて私は何も言わずに寂しげな笑みを浮かべるだけ。
「殿下!」
言質を取られないための無言だったのだが、なんか宰相閣下はさらに勝手に勘違いして盛り上がってるので放っておこう。
と、その時……。
ガサガサッ!
なんだ!?今、奥のカーテンが動いたぞ!
だ、誰かいる!まさか、伏兵が?
しかも、父上も宰相閣下も気づいていない!?……いや、意図的に無視している?
いや、よく考えたら当たり前か。
血気盛んな色ボケ王子が鼻息荒くやってくるのだ。
血迷って危害を加える可能性がある以上、護衛の一人や二人いない方が不当然だろう。
きっと、シュ○ちゃんとか、スタ○ーンとか、ボ○ドみたいなやばい連中に違いない。
これは気を付けなければな。
下手に誤解で斬られでもしたら目も当てられないし……。
まあ、気にしていても仕方がない、兎に角今はやるしかないのだ。
「さあ、次に参りましょう!」
因みに、余談だが物音に対しておっさん達が反応しなかったのは感極まっていて気づかなかっただけである。
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