第6話「皇太子が無能なのが原因です!?」
「全てはこの国、ランスの為なのでございます」
神妙な顔つきで私は言った。
「何?」
父上は先程からの急な展開に、もう訳がわからないと言う顔だな。
と、その横から再び宰相が口を挟んだ。
「陛下、もう少し殿下のお話を聞いて見ても良いのではありませんか?やはり何かしら考えが有ってのようですし」
チラリと私に目を向けながら、宰相が父上を嗜めた。
その目からは下らない内容だったら本当にわかってるよな?ああん?というのがヒシヒシと伝わって来るのが恐ろしい。
「では失礼して続けさせて頂きます。結論から言いますと、今回の婚約破棄は私の計画の一部なのです。」
「うむ、計画とな……それで?」
「では、お聞かせ頂けますか、殿下の計画とやらを」
二人が続きを促してくる。
よし、乗ってきた!
私は出来る限り殊勝な顔で話を続けた。
「はい。この計画を思いついたのは、私が幼いころでした。当時、私は皇太子として自覚を持ち努力をしているつもりでした。そして、聡明な婚約者のセシルや優秀な弟のフィリップや友人達に囲まれて、このまま父上の後を継ぎ、皆で力を合わせより良い国にして行きたいと心から思っていました。しかし、ある時気付いてしまったのです。私はどうしようもなく劣っている、無能であると。特に、セシルやフィリップを見ていると、いやがおうにも自分が無能だと自覚させられました。才能溢れる彼らに対しては自分はなんと無能なのだろうか、と。耐えられませんでした。そして将来について考えたのです。このまま成長し、王位を継いだらどうなるのか。恐らく、優秀なセシルやフィリップを始め多くの者たちの助けを借り、周囲に多大な負担を掛けながらなんとか国政を担うのだろうと思いました。それは私にとっては幸せな状態かも知れませんが、恐らく周囲は誰も幸せにはならないでしょう。その時はっきりと思いました。私はそんな未来は望まない、なんとか変えなければと!」
徹底した自分sageとセシルageで宰相閣下に媚びる作戦!
名付けて、媚び媚び作戦です!(某jk戦車アニメ風)
これは宰相の心象を少しでも良くしようという試み!
欠点は自分のメンタルが容赦なく削れるところ……。
うん、泣きそう……。
「うむ、それが今回の計画なのですね?ですが、何故、今このタイミングで婚約破棄なのですか?」
お、プライドがズタズタになった代わりに宰相閣下の興味を引けたようだ、ヤッター……。
「はい。今が計画の各目的に最適なタイミングだったのです。まず、私が考えたのは私が王位につかない事でした。しかし、ただ王位継承権を放棄しただけでは足りないような気がしたのです。たとえば婚約者であるセシルは王妃としての教育を受けた素晴らしい女性ですが、仮に私が継承権を持たないただの王子になれば、彼女は単に無能な王族の妻という地位に甘んじてしまう。つまり彼女の活躍の場を、輝く場を失ってしまう。それではいけません。ではどうすれば良いか、どうすればセシルを始めより多くの人に利益があるか。それを考えた上で出した結論が今回の計画なのです!」
私は勢いに任せて、ありもしない計画について一気に此処まで捲し立てた。
どうだろうか、急ごしらえの言い訳にしては中々信憑性のある話ができたのではないだろうか。
実は少しだけ工夫をしたのだ。
昔、何処かで聞いたのだが嘘は真実を混ぜると信用されやすいらしい。
そこで、今回は幼少期の自分の記憶から幾つかの事実をピックアップして、実際に自分のセシルやフィリップへのコンプレックスを話に混ぜたのだ。
因みに今は前世と今世の記憶がミックスされた状態で、どちらも自分自身である為、代償に大分メンタルがやられた……。
ああ、また涙出そう……。
だが、リターンは十分にありそうだから取り敢えずいいとしよう!
「では、殿下……今回の婚約破棄は……」
「そう、最も大きな利益を皆が享受できるタイミングが今日だったのです!」
問われた私は堂々と自信があるような顔をしながら答えた。
「で、ですが、婚約破棄されたセシルは傷つきこそすれ、何一つメリットはないように思いますが……」
宰相閣下が訝しんできたが、このありそうな問いに対して答えを考えていた私は揺るがない。
「そんなことはありません。寧ろ彼女は受益者の中でも特に大きなメリットがあります」
「本当に?」
「はい!」
私は再び自信たっぷりに返す。
「そ、それで?」
恐る恐るという感じで宰相閣下が続きを促してくる。
よしよし、いい雰囲気だ。
では、始めよう。
プレゼン?の時間だ!
まずは結論から。
「なんと!今なら誰も損をせずに非常に多くのメリットを得ることが出来のです!」
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