第30話 職権乱用(?)
”トントン”
僕は生徒会室の扉を軽くノックしてから扉を開けたけど、どうやら先輩より先に着いたようだ。生徒会室には執行部のメンバー6人が全員揃っていて、なぜか窓際の小さな机に置いてあるパソコンの前に全員が集まっていた。
しかも既に事務机は4つだけ並べられていて上には広辞苑や英和辞典などがドーンと山積みされていて、2つの事務机は壁際に追いやられている。つまり準備万端の状態なのだ!
「・・・よお、思ったより早く来たなあ」
右手を軽く上げて僕に声を掛けた人は、僕を『生徒会長権限』という伝家の宝刀で呼び出した張本人だ。
「・・・というか会長、僕を生徒会長権限で呼び出さないで下さいよお」
「おーい、校内だからと言って『会長』『
「ちょ、ちょっと会長」
「だーかーら、『会長』はNGだ。お姉ちゃんはショーちゃんには特別に『姉ちゃん』と呼ぶのを許可しているのだ。生徒会長の言葉は有難く受け取るのが我が校の生徒の務めだぞ」
「はーーー・・・分かりましたよ、姉ちゃん」
「分かればよろしい!」
僕は「はーー」とため息をつくしか出来なかったけど、そんな僕と姉ちゃんのやり取りを見て、他の生徒会執行部の5人はクスクスと笑っている。
「・・・それにしても並野くーん、たしか河合さんは男嫌いだった筈だけど、どうして並野君とペアを組む事になったのか、おれが聞きたいぞー」
「そうそう、わたしも聞きたーい!」
「オレも聞きたいぞー」
うわっ!姉ちゃん以外の5人の目が笑ってる!完全に揶揄ってるとしか思えない!
あー、そうそう、先に言っておくけど姉ちゃん以外の5人の肩書とクラスは、副会長の
「・・・言わないとダメですかあ?」
「当たり前だあ!生徒会長権限以前の問題だぞー」
「はーーー・・・」
勘弁して下さいよお、どうしてここで言う必要があるんですかあ!?
「・・・そんなに悩む事ではないぞー。お姉ちゃん以外の女に興味を持ってくれた正太郎ちゃんには感心を通り越して感動したほどだ。で、どうやって誘ったんだ?」
「えーっ、違いますよお。ただ単にバイト先が同じで、それで先輩の方から『一緒に出てくれ』って言われただけですよお」
「「「「「「わおーっ!」」」」」」
「勘違いしないで下さーい。それに、先輩だってイヤイヤ出場なんですからあ」
「イヤイヤ出場なのか喜んで出場なのかは関係なーい!肝心なのは生徒会のイベントに参加するという心意気なのだ!生徒会執行部を代表して感謝の言葉を述べさせてもらう!」
姉ちゃんは口では立派な事を言ってるけど、顔は完全ににやけていて、とてもではないが普段のクールな姉ちゃんからは想像できない!それに他の5人も完全にニヤニヤしているから、ホントに勘弁して欲しいですー。
”トントン”
「おー、噂をすれば何とやらだ。ショーちゃん、開けてやれ」
「ちょ、ちょっと姉ちゃん!」
「何を言う!一番扉に近いのはショーちゃんだぞ。年功序列とかいう以前の問題だというのは常識だぞ」
はーー・・・僕は仕方なく生徒会室の扉を開けたけど、予想通り、扉をノックしたのは先輩だった。
「・・・あれー、先に来てたんだあ」
「『先に来てたんだあ』じゃあないですよー。お陰でこっちは大変だったんですからあ」
「何かあったのー?」
「何かあったんですよー」
僕は半分ため息混じりで先輩を出迎えた格好になったけど、そんな先輩が生徒会室に入ってきたら姉ちゃんがサッと立ち上がった。
「さあ、練習を始めるぞ!」
あれっ?姉ちゃん、さっきまではニヤニヤしてたのに、普段のクールな姉ちゃんに戻ってる。それに強井先輩を除いた他の4人も真面目に仕事をやり始めたぞ。
「・・・姉ちゃん、何かあったのー?」
「ん?時間が勿体ないから練習するに決まってるだろ!」
「ちょ、ちょっと姉ちゃん!それじゃあ、さっきの話は何だったんですかあ?」
「あー、あれはショーちゃんだったから聞けた話だ。見ず知らずの人に聞くのは失礼なのは我々だってわきまえてるゾ」
「勘弁してよお・・・」
「まあ、気にするな。我々執行部一同は来月には平凡坂高校祭『
姉ちゃんはそう言いいながら生徒会室の棚の中からビニル袋を取り出したけど、その中に入ってたのは・・・はあ!?コップヌードルの空容器だ!しかも10個以上も入ってる!!
「こ、これって・・・」
僕は思わず右手で指さしながら言ってしまったけど、姉ちゃんは澄ましている。
「ん?これは執行部が生徒会予算で買ったコップヌードルの空容器だ。いわば生徒会執行部専用の練習道具だ」
「「マジ!?」」
「そういう事だ。歴代の執行部以外の人には知られていない、まさに秘密道具を君たちの為に特別に公開してあげたのだ。むしろ君たちはボクの心の広さに感謝の意を表して欲しい位だぞ」
い、いや、姉ちゃん、それは違うと思います。僕から言わせてもらえれば『職権乱用』『公私混同』とかの方が正しいと思いますけど・・・
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