第31話 こ、こんな事、あってもいいんですかあ!?
結局・・・僕と先輩は、姉ちゃんと強井先輩の練習相手だけでなく第二音楽室や第二工作室の片付けまで手伝わされた。
学校を出た時には既に星空になっていた程だ。
「お疲れさまー」
「お疲れさまでしたー」
「来週、また会おうぜー」
僕と先輩は正門のところで生徒会執行部と別れた。学校前の県道を右に曲がるのは僕と先輩だけで、執行部の6人は正門前の横断歩道を渡るか県道を左に行くのどちらかだったので、ここから先は僕と先輩の二人だけ・・・二人だけ!
こ、こんな事、あってもいいんですかあ!?
僕は正直心臓バクバクだけど・・・あれっ?先輩は普段と全然変わらない・・・僕の方が意識過剰!?
「・・・並野くーん、結構疲れたよねえ」
「そりゃあそうですよー。僕も右手がガッチガチですからねえ」
「強井先輩がボンテリンのスプレーを持参してた理由がよーく分かりましたー」
「ボンテリンに感謝です!」
そうなのだ。僕も先輩も最後は筋肉痛だったから、強井先輩が持っていたボンテリンを右肘に『これでもか!』という位にかけまくったほどだ。結構楽にはなったけど、それでも僕も先輩も自分の左手で右肘を揉みながら歩いているから、笑うしかないですー。
「・・・それにしても会長、やる気満々だったわね」
「そうだよー。だって姉ちゃん、中学の時は卓球部だったもん」
「うっそー」
「ホントだよー。昔からカラオケ好きだったから高校ではカラオケ同好会に入ってるけどねー」
「どうせカラオケ同好会とか言っても、カラオケ好きの子たちが毎週1回『カラオケこま犬』で歌いまくるだけの同好会だよねえ」
「そうだよー」
「並野君は会長のレパートリーを知ってるの?」
「姉ちゃんはアニソンしか歌わないと言っても過言じゃあないよー」
「うっそー、全然想像出来ない!」
「でしょ?でも事実なんだよねー」
僕も先輩も他愛ない事を言いつつも並んで歩いてるけど、ホントに先輩はこのシチュエーションを何とも思ってないのかなあ。それとも、ホントに『男に興味ありません!』が正しかったりして・・・
「・・・いやー、机の数、足りるのかなあ」
僕は帰り際に生徒会掲示板に貼られた組み合わせを思い出して呟いたけど、それは先輩も同じようで首を縦に振ってるほどだ。
「96組よ、96!史上最多だった去年をアッサリ更新したからねー」
「全校生徒の4分の1以上がエントリーした計算になるよー」
「第1回大会は12組しかエントリーしなかったんだから、15年で8倍かあ。凄いよねー」
「しかもー、今年はそのうち2組は先生同士のペアだよ。先生がエントリーするのは15回目にして初だよ!」
「ん?並野君は知らなかったの?」
「あれっ?先輩は知ってたんですかあ?」
「だってー、男子卓球部の顧問の
「あれー、そうだったんだあ」
「今日の帰りのショートホームルームの時にボヤいてたよー。雪佐先生と女子卓球部顧問の
「ふーん」
「もう1組の男子テニス部顧問の
「という事は、姉ちゃんがワザと同じCブロックに入れたとしか思えないよねー」
「でしょうね。初戦を勝てば次に激突するんだから、どう見ても出来過ぎよね」
「ま、どうせ僕たちは1回戦で終わりだよねー」
「だよねー。今日だって散々だったからねー」
そう、僕と先輩はサーブを相手のコートに入れるのだけで一苦労で、ラリーだってまともに出来なかったから、姉ちゃんや強井先輩だけでなく他の執行部のメンバーにも腹を抱えて笑われたくらいの酷さでしたからねえ。だから今日の僕と先輩は互いの顔を見合わせながら、笑って誤魔化すしかなかったからね。
そんな訳ですから、僕と先輩はAブロックだけど、どうせ初戦敗退確定(?)ペアですから相手が誰だろうと気にしてませーん、ハイ。
「大会は参加する事に意義がある!」
「そうだそうだあ!」
「勝敗は度外視して出場できた事を喜ぶべきだあ!」
「そうだそうだあ!」
「我々は勝ち組だ!」
「そうだそうだあ!」
「『リング・デ・ポン』は我々の物だあ!」
「そうだそうだあ!」
僕と先輩は意味不明の気勢を上げて(?)半ばふざけながら歩いてるけど、そんな楽しい時間も終わりだ。
そう、先輩の家がある交差点まで来たからだ。
「・・・じゃあ、また明日ねー」
「じゃあねー」
先輩はそのまま右手を振りながら家の敷地へ入ったから、僕は横断歩道を2回渡ってから家へ入った。
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