再び・・・
第25話 再び「お願い!」
「・・・お疲れさまー」
今日も午後8時ピッタリに
僕がエプロンを外しながらロッカー室へ行こうとした時、丁度先輩が女子ロッカー室から出てくるところだった。
「あー、先輩、お疲れ様ですー」
「並野君こそ、お疲れ様ですー」
僕と先輩はそう言い合って軽く頭を下げた・・・が、すれ違った時、僕は左手を先輩に捕まれた!
「・・・並野君」
「あー、はい」
「ちょっと話したい事があるんだけど・・・」
僕は先輩に無理矢理引き留められた格好になったのだが、その時の先輩の顔はいつものスマイル全開の先輩だ。あれっ?あれあれっ?
「・・・何かあったんですか?」
「何かあったから、並野君と話したいんだけど、ダメかなあ・・・」
先輩は僕を真っ直ぐに見ているけど、スマイル全開だから何を考えているのか全然想像できない。
「・・・まあ、僕はどうせこの後は何もないですし、見たい番組は予約録画が入ってるから、明日以降に見れば問題ないですよー」
「じゃあ、この前と同じでフードコートで待っているからー」
「分かりましたよー」
僕はイマイチ先輩の考えが分からないけど、今回も先輩に言われた通り、エプロンをロッカーに入れるとバックパックを持ってフードコートに向かった。
先輩は金曜日と同じ席で待っていた。
「・・・遅くなりましたー」
僕は先輩に謝ったけど、先輩は「べつにー」と言って気にしてない素振りだった。でも、さっき僕を誘った時にはニコニコ顔だったのに、今は全然ニコリともしないから、怖いくらいだ。
そのまま、先輩は黙ってしまったから、僕の方が沈黙に耐えきれなくなってきた。
「あのー・・・」
僕は沈黙が耐えきれなくなって先輩に話し掛けたけど、その先輩は僕の目をジッと見ていた。
「・・・並野君、会長とエントリーするの?」
あれっ?
僕が姉ちゃんとエントリーする事と、今までの沈黙が何か繋がるのかあ?
僕はちょっとだけ戸惑ったけど、ちょっと先輩側に誤解があるようだ。それなら、事情を説明した方がいいかも・・・
「・・・あくまで仮登録ですよ」
「仮登録?何それ?聞いた事ないよー」
「僕が会長以外の誰かとペアを組んで出場するなら、そっちが優先ですけど、他の誰ともペアを組まなかったら、その時には会長とペアを組んで出るんですよ」
「そんな事、ルールに書いてあるの?合法なの?」
「書いてないですよー。ただ、僕がエントリー用紙を受付締め切りまでに出さない時は、会長が職権で僕とのペアで出場すると言っただけです」
「あのー、もしかして、論寄先輩と見田目先輩が会長と一緒にいたという事は、もしかして・・・」
「そういう事ですよ。騒ぎを収拾させる妥協案が、僕が他の誰かとペアを組んで出るならその人と、そうでないなら僕と会長がペアを組んで出場するという事です。先輩たちが食堂で騒ぎ出したから、会長が乗り出してきて先輩たちを抑え込むために提示した妥協案を、僕も先輩たちも同意したというだけです」
「もしかして・・・『生徒会長権限』じゃあないの?」
「そうですよー」
「そっか・・・ついでに、もう1つ聞いてもいい?」
「ん?何ですかあ?」
「会長のイトコというのはホントなの?」
「ホントですよー。僕の母さんの姉にあたる人が会長のお母さんですから、正真正銘の従姉弟同士です。疑うのなら、先生方に確認してもらっても構いません」
「そっか・・・」
先輩はそれだけ言うと再び沈黙した。いや、そのまま「はあああーーー・・・」と長ーいため息をついてしまったぞ。どういう意味だあ!?
でも、その時、先輩は黙ってバックパックを持ち出し、中からクリアファイルを取り出した。あれっ?あれっ??
そのクリアファイルから取り出したのは・・・エントリー用紙!?
「お願い!この大会、100円で出場して!あ、消費税は10%で」
「はあ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます