第24話 SS ホントに省エネなんですか? 後編


「・・・全てがLEDで解決出来た訳ではないよ」


 いきなり後ろから話し掛けられたから僕も先輩も後ろを振り向いたけど、そこに立っていたのは平凡坂市立大学2年生のアルバイト店員の只管ひたすら 頑晴がんばるさんだ。

「・・・たしかにLEDは寿命や消費電力だけを見れば、白熱電球や蛍光灯よりも高効率で長寿命だ。それに、蛍光灯には水銀が使われているけどLEDにはそれが無いから環境にも優しい。だからLEDを使った蛍光灯も売られているしタイソーでも一般家庭で使われる20ワットの直管の物を売っている。でも、LED電球にも欠点がある。ほら、河合ちゃんが持っているLED電球のパッケージにも書かれているけど、致命的な欠点がこれだ」

 只管さんはそう言うと先輩が持っているLED電球のパッケージの裏面に書かれている注意書きの一部を指差した。


 僕も先輩も只管さんが指しているところを見たけど、そこには『密閉型の器具では使えません』と書かれていた。


「・・・LED電球といえども、僅かだけど熱を発生する。だけど、発光ダイオードそのものが低温には強いけど高温に弱いという欠点がある。放熱は白熱電球や蛍光灯以上に必要だから、浴室のような場所では漏電対策で密閉型の器具が使われる以上、LED電球は使えない。他にも、オレの出身地である北海道のような雪国では、LEDを使った信号機では雪が付着したら融けない、いわゆる『白信号』という問題が発生して交通事故の原因になる事もある。白熱電球を使った旧来の信号機なら電球の熱で雪が融けるけどLEDでは雪を融かすほどの熱量が無いし、雪が融けない事による雪の重みで信号機の支柱が折れ曲がるといった事も起きている。だから雪国のLED信号機は顎を極端に引いたような形で取り付けたり特殊なカバーをつけて雪がつきにくくするなどの工夫がされてるけど完全に防げる訳ではない。他にも、いわゆる『電照菊』は白熱電球に含まれる特定の波長の光を使って育てていたけど、一般的なLED電球には植物を育てるのに必要な波長の光が入ってないから特殊なLED電球が必要だから値段も高い。あと、最近問題なっているのが、いわゆるブルーライトによる目への影響だ。静電気や雷のサージ電流に弱いという欠点もある。他にも幾つかの欠点があるけど、とにかく、LED電球が急速に普及しているのは事実だけど、まだまだ改良の余地はある。たしかにシリコンの精製に大量の電気が使われているのは事実だけど、産業用は産業用、家庭用は家庭用と切り離して考えるべきであり、それを一緒に考えたら頭がパンクするだけだよ」

「「ふーん」」

「河合ちゃんの考えは間違ってないとは思うけど、全ては考え方次第なんだよ。溶鉱炉では鉄鉱石とコークスを一緒に燃やして鉄を精製するけど、コークスは石炭の一種だから、鉄を作るという事は大昔に地面に封じ込めた炭素を再び大気に放出するのと同じだ。でも、その溶鉱炉で作られた鉄がないと全ての面において困ってしまうのも事実だ。地球温暖化対策として再生可能エネルギーが盛んに叫ばれてるけど、太陽光発電で作られる電気は直流だから、それをバッテリーに貯めておくのは問題ないけど、送電するにあたっては交流に変換する必要がある。直流を交流に変換するにはインバーターが必要だけど、インバーターの整流器はシリコンダイオードだ。ソーラーパネルも最近は有機パネルの物が普及しているけどシリコン製の物もある。これは発光ダイオードの原理を逆利用して電気を得ているんだけどね。環境問題もそうだし地球温暖化もそうだけど、さっきのイレブン・ナインという一点を見れば『悪』そのものかもしれないけど、その『悪』が無いと全て回らないのも事実だから、全体を見て環境負荷を減らしていく、省資源を進めていくのを考えないとダメだよ」

 只管さんはそう言うと僕と先輩の肩をポンポンと叩きながらニコッとした。

 そのまま只管さんは「あんまり仕事中にサボってると真面目似まじめにさんに怒られるよ」と言って手を振りながら向こうに行ってしまった。


 さすが現役大学生、説明力というか説得力のあるお言葉、感動しました!僕も先輩も納得顔になって仕事に戻る事が出来ましたあ!

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