第26話 絶対にナイショだよ

 僕は先輩の想定外の言葉に思わず声が裏返ってしまった!

 100円で出場?一体、どういう意味だあ?


 い、いや、先輩の事だから・・・僕が先輩に110円払って、この大会に僕と先輩のペアで出場して欲しいという意味かあ!?


「・・・せんぱーい、もしかして、僕とペアを組んで出場したい、って事ですか?」

「・・・うん」

「それじゃあ、何でため息をついたんですかあ?」

「・・・い、言わないとダメ?」

「当たり前ですよ!普通に考えたら『イヤイヤだけど出場します』とか言われたのも同じですよ」

「そ、それは・・・厳密に言えばそうかも・・・」

「はあ!?」

「お願い!とにかく出場して!!何なら100円でいい!消費税はゼロでもいいから!!」

 先輩はそう言うと両手を頭の上に乗せて、いわゆる『お願いポーズ』を取った。


 今度は僕の方が「はーー・・・」とため息をついてしまったけど、どうやら事情がありそうだ。


「・・・真面目な話、僕が既に証子先輩と見田目先輩以外の誰かとペアを組んで出場登録をした、という可能性を考えた事はあるんですか?」

「あれっ?ゴメン、私、並野君は会長と出る事が決まってると思ってたし、もし会長と出ないというならダメ元でお願いするつもりだったから、全然考えてなかった」

「正直に言いますけど、僕、同じクラスの雀愛すずめさんから誘われてます」

「まじ!?」

「でも、雀愛さんの方が姉ちゃんに遠慮して『別に会長優先でもいいよ』と言って僕の返事待ちになってます。もっとも、論寄君が雀愛さんを誘ってるのも事実ですから、全て僕の返事待ちです」

「ロンヨリ君?」

「あー、すみません。ちょっと紛らわしいですけど、証子先輩の弟さんで僕や雀愛さんと同じ1年E組のクラスメイトですよ」

「あー、だから論寄君ね。納得しました」

「話を戻しますけど、雀愛さんは僕の返事待ちです。僕が金曜日の昼休みまでに誰ともペアを組まない時は僕と参加するけど、僕が姉ちゃんか別の誰かと出るというなら論寄君と参加するという事で互いが納得してますし、論寄君も承知しています」

「ようするに、並野君は会長かクラスメイトのどちらかと参加するつもりだ、と言いたいのね・・・」

「そういう事です。でも、先輩が困っているというなら、雀愛さんに断りを入れて先輩と出るのは構いませんけど、理由があまりにも馬鹿馬鹿ばかばかしいものなら僕は雀愛さんと出ますよ」

「やっぱり、言わないとダメ?」

「当たり前です。とーにーかーく、事情を教えて下さい!僕としても二重の意味で返事に困ります!」

「・・・分かった。でも、言ったらエントリーしてくれる?」

「内容次第です。さっきも言いましたが、内容が余りにも馬鹿馬鹿しい話なら、速攻お断りして雀愛さんと出ますよ」

「はあああーーー・・・絶対にナイショだよ」

「分かりました。それは約束します」


 それだけ言うと、先輩は「はああああああああーーーーーーーー・・・」と今までで一番長ーいため息をついた。


「じ、じつは・・・」

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