第12話 決めた!
「へえー、これが『集まれ!動物のまち』かあ」
「そうですー」
僕は先輩と一緒に駅向かいの
「『何もない所だから、何でもやれる』かあ。こんなのにみんなハマってるんだね」
「ある意味、みんなやってるから、話題に取り残されたくなくて自分も始めるって感じですかねえ」
「ふーん」
「リアルは殺伐とした時代ですから、逆に現実離れした『ほのぼの』としたイメージが結構ウケてるみたいです」
「たしかにねー。私は逆に『ほのぼの』系の物はやらないから、全然知らなかったなあ」
「それじゃあ、先輩は普段はどういうゲームをやってるんですかあ?」
「ナイショ」
「あー、ズルイですー」
先輩は人差し指を立てながら左右に振って『ちっちっち!』とかやってるけど、他人に言えないようなのをやってるんですかあ!?
「・・・たしかに4DSもサービスを終了するゲームがかなりあって、私もそろそろBUTTONに変えようかなあ、って思ってたから潮時かもねー」
「あれっ?その口ぶりだとBUTTONを買えるだけのお金があるとか・・・」
「あるわよー」
「アッサリ言わないで下さーい!」
「今は持ってないよー」
「その事じゃあありませーん!」
「決めた!中間テストが終わったら買うね」
「もう決めたんですか!?」
「
「使い方が目茶苦茶です!」
はあああーーー・・・ホント、先輩の頭の中はどうなっているのか、一度、本気で覗いてみたいですー。
先輩はBUTTONのソフトが並んでいる棚の前で色々と見てるけど、本気で買うつもりなのか、スマホのメモ機能を使って値段を書き込んでるぞ。僕もバイトの金が溜まったら買いたいソフトは沢山あるけど、絶対に買いたいのは1つだけだ。
「・・・ところで並野君はアツマチ以外にはどんなソフトを持ってるの?」
「僕ですか?」
「そう。並野君が持ってるソフトは何?」
「えーと・・・個人で持ってるのはチョコットモンスターのエメラルドと戦国無敵ですね。妹と共同の形で持ってるのはマリコカート、ぷよんぷよん、マリコパーティですよ。アツマチは本当は妹が買った物ですけど、僕も使ってます」
「ふーん」
「うちでBUTTONをやらないのは父さんだけです。母さんは自分専用のBUTTONを持ってるくらいですから」
「うっそー!?」
「ホントですよ。自分だけは個人用のBUTTONを買っておきながら、子供には『きょうだいで仲良く使いなさい』とか言って1つしか買ってくれないんですよ」
「あらー、ホントに災難ね」
「でしょ?だから僕は個人用のBUTTONが欲しくてバイトを始めたんです」
「ナルホドナルホド・・・因みにお勧めは何?」
「先輩の好みと合う保証はありませんが、スーパーマリコメーカーですよ。僕が欲しいソフトの中ではイチオシですから」
「サンクス!じゃあ、帰りましょう」
「はあ!?」
ちょ、ちょっと先輩!!僕の話を聞いたら、すぐに帰ろうって、どういう事ですかあ!?それとも、最初から僕の意見はスルーするつもりだったんですか?
そんな先輩はニコニコしながら店の出口に向かって歩き始めてるから、慌てて僕も先輩を追った。そのまま先輩は店を出たけど、店を出ると左に行った。あれっ?
「・・・せんぱーい。たしか自転車でしょ?」
「そうだよー」
「置いて行くつもりですかあ?」
「違うよー。自転車があっちに置いてあるからー」
「あー、ナルホド」
「並野君の言う通り、自転車だと探すのが大変だし、駅の近くは全然空いてなかったから最初から歩いてきた方が早かったくらいだよー」
「でしょ?」
「ま、次に来る時は自転車はやめるよ」
「そうして下さい」
僕と先輩は並ぶようにして歩いているけど、その距離は僕が校内で論寄やクラスメイトと並んで歩く距離よりも遠い。まあ、当たり前だとは思うけどね。
「・・・行っておくけど、私はGEMOでBUTTONを買う気は最初から無いよ」
「となると、イーオンで買うんですかあ?お客様感謝デーの時ならWAANで買うと5%引きになるから」
「でもー、真穂子ちゃんが言ってたけど、イーオンは品数が少ないし、だいたいBUTTONは朝早くから行ってないと買えないよ。5%引きはお得かもしれないけど、買えなかったら意味ないからー」
「たしかに・・・」
「それに、私、買いたいソフトは決めてあるけど、十中八九アマゾネスの方が安いからね」
「アマゾネス!」
「そう、アマゾネス。お母さんにやってもらうけど、お金はお母さんが立て替えてくれるからね。それに4DSもアマゾネスで買ったよー」
「ふーん」
「お姉ちゃんが
「じゃ、じゃあ、もしGEMOが一番安かったらGEMOで買う?」
「えーっ!GEMOに行くまでが面倒!それにTSUTSUYAだったらお姉ちゃんにお金を渡せば済むし、お姉ちゃんの店の売り上げに貢献するから、どちらにせよGEMOでは買わないよー」
「ま、たしかに最近は家電製品を買うにしても、現物はハマダ電機やピーズ電機で見て、買うのはアマゾネスという人も珍しくないって聞いてますから、先輩の考えがおかしいとは言えないですね」
うーん・・・先輩の思考は相当ぶっ飛んでるけど、たしかにこの考えはぶっ飛んでるとは思えない。全部が全部ぶっ飛んでいる訳ではなさそうですね、はい。
「・・・ところで先輩、自転車はどこに置いてあるんですか?」
僕はいつまでたっても先輩が横を歩いてるから疑問に思って先輩に聞いたけど、それを言った途端、先輩は「はーー」とため息をした。えっ?どうしてため息なんかつくんですかあ??
「だってー、結局、駅の周りをあちこち探しまくったけど見付からないから、平凡坂ショッピングモールに置いて来たんだよー」
「はあ!?それじゃあ、駅まで行ったあと、またショッピングモールまで逆戻りですかあ!」
「そうだよー。勘弁して欲しいわよ、ったくー」
「ま、殆どが放置自転車なのは間違いないですけど、警察や市も色々とやってるけど『イタチごっこ状態』になってるみたいですよー」
「だよねー。特に平凡坂駅の周辺はどこもかしこも自転車で埋まってるし、これなら最初からショッピングモールに自転車を置いて、そこから歩いた方がマシだったよ。ホント、『骨折り損のくたびれ儲け』の典型だよー」
「お疲れ様ですー」
「ホントに疲れがドッと出るから勘弁してよー」
「あー、すみません」
せんぱーい、ホントに災難でしたねえ。ま、笑うと失礼だけど内心では笑っちゃいましたあ。
結局、僕も先輩も並ぶようにして平凡坂ショッピングモールまで行って、そこからは先輩は自転車に乗り換えた。
「・・・それじゃあ並野君、明日はバイトを頑張りましょうね」
「ですねー。僕も明日は5時までですから」
「おう、稼ぐわねえ」
「お互い様ですよ」
「だね。じゃあ、また明日」
「はいはーい」
こうして、僕は先輩から受けた最初の依頼『一緒にエッキーのサイン会へ行って』は無事(?)に終了した。
先輩に付き合わされたにも関わらず、僕の方が先輩にお金を渡した形(実際にはドーナツを買ってあげた)というのも変な話だけど、色々と面白い(?)話も聞けたし、これはこれで楽しい時間でした、ハイ!!
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