第99話 襲撃
「いや〜、野営地でこんなに美味い飯を食ったのは初めてだぞ」
サイコはソウタの料理に満足そうだ。
「でしょ〜」
料理を手伝ったジュネも自慢気だ。
「まあ、マジックバッグに食料品も保存しているからね。材料があれば作り甲斐もあるってもんだよ」
(ん? そう言えば肉はサイコが大量に狩って来たけど、人も増えたから、調味料とか野菜とか買い足した方がいいな)
と言う訳で、近くの村に寄り食料品を買い足したソウタ一行だが、村では素材の買い取りは出来なかったので次の町を目指す。
「街道を行かないでさぁ、森を通って行かない? 森に貴重な薬草があるそうなのよ」
ナナミがそんな事を言い出した。
「良いね良いね。森だ〜い好き!」
ドリアードのクロリスは大賛成だ。
「村の人の話だと、途中で薬草や果実、野菜の原種なんかもあるらしいよ」
(モモカも賛成か)
「また、採取三昧かよ」
(サイコは反対と)
「お兄ちゃんは狩りをすればいいじゃん。私はまたソウタ様に採取を教わりたいなぁ」
「それもそうか。腕が鳴るぜ」
(おっ、サイコがジュネに説得されたぞ)
「狩り! いいねぇ」
(ブリュンヌも賛成、………と言う事は、みんな賛成じゃないか。嫌では無いけど、反対とは言えないな)
「良し、森を通って次の町に行こう」
「やったー!」
みんな大喜びだ。
ソウタ達は採取と狩りをしながらゆっくりと森を進んだ。
この森は各種薬草や果実、野菜の原種、ハーブなど食べらるモノが豊富に存在していた。
それらを食べる動物や魔物も多く、命に満ち溢れている。そんな森だった。
「はふぅ〜。気持ちいい〜」
クロリスがボーとしてふわふわと宙をさまよい始めた。
「え! クロリス! なんだか透けてないか?」
「そうよぉ〜。久しぶりの森だしぃ。この森はなんだか精霊に優しい森みたい。とっても気に入ったわ〜」
クロリスの気配が希薄になっていき、まるで森と一体化していくようだ。
(確かに清々しい魔力が満ち溢れて精霊が好みそうな森だキュ)
「へえ、そんな事がわかるのか。リャンゾウは流石聖獣だね」
(まぁ〜ね〜。キュゥ)
その時………。
ヒュン!
パシッ!
「え! ええええええええええええ!!!」
ソウタの目の前に矢尻があり、クロリスが腕だけ元に戻して矢を掴んでいた。
「うひゃっ!」
ソウタは腰が抜けて尻もちをついた。
「どうした!」
(くそっ!全く気付かなかったぜ)
「ソウタ様! 大丈夫ですか?」
(私のソウタ様になんという事を………)
サイコとジュネが血相を変えて駆け付ける。
「周りに気配はなかったのに………」
モモカが悔しそうに感知を強めて周りを警戒しだした。
(匂いも音もないキュ)
眉を寄せてリャンゾウも辺りを睨む。
「感知外の遠方からの狙撃だわ」
クロリスの気配が元に戻り、ソウタを優しく抱きしめると、いつになくシリアス口調になっていた。と言うかだんだん存在感が増していく。
「そんな事が可能なの?」
モモカがクロリスに問う。
「風の子の仕業よ。後はエルフね! ふふふふふふ、森の中で私に喧嘩を売るなんて身の程知らずだわ。私のご主人様を狙うなんて舐めた事をしてくれたわね」
(クロリスがマジで怒ってるぞ。怖っ!)
バキッ!
クロリスは掴んだ矢を握力でへし折り、膨大な魔力を放出し始めた。
(クロリスが本当に怖いんですけど。サイコとジュネも臨戦体勢だし、リャンゾウも歯をむき出して唸ってるし………)
ほんのり日が射して暖かかった森が、急激に薄暗く寒くなっていた。
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