第82話 獣人国へ

ジュノン男爵との金額の交渉もモモカが無事行い、獣人国へ行く報酬も前払いで貰って、獣人国へ行くソウタ御一行。


雷獣のリャンゾウとドリアードのクロリス、青い鳥の魔獣ブル、ナナミ、モモカ、ソウタと………。


ペストマスクのブリュンヌ王女とその従者達。


「ねぇねぇ、何とかならない……のっ!」

バシッ!

襲い掛かる盗賊を殴るブリュンヌ。


倒れた盗賊に剣の腹で叩き、気絶させるペストマスクの従者達。


「何が?」

ドカッ!

盗賊を蹴飛ばすソウタ。


蹴飛ばされた盗賊にリャンゾウの雷撃が放たれて、白目を向いて気絶する盗賊。


「こっちは終わったよー」

パンパンと手を叩きながら歩いて来るモモカ。


その後ろから、ズルズルと盗賊達を縛った蔦を引き摺りながら、ニコニコ顔でついてくるクロリス。


「盗賊が多過ぎだよ」

豊穣の杖を持ってクロリスの横を歩くナナミ。


「今の獣人国は荒れ果ててますからなぁ」

ペストマスクの従者が申し訳無さそうにしている。


「ソウタ達が弱そうだから盗賊が次から次へと襲ってくるわ」

ブリュンヌがソウタをジト目で見た。


「どうしろって言うのさ」

(そんなのどうしようも無いよ)


「このマスクをつけたら?」

予備のペストマスクを差し出すブリュンヌ。


「やだよ。カッコわるい」

手のひらを前にだすソウタ。


「ヤダー」

顔を顰めて断固拒否のナナミ。


「そのマスクは盗賊避けだったのね」

モモカもペストマスクはいらないゼスチャーをしながら、ブリュンヌに声をかける。


「まあ、それもあるわね。後は関所をノーチェックで通れる事かしら、早く王都に行きたいしさ。どう?」


ブリュンヌに促されて、申し訳無さそうに再度ペストマスクを差し出すブリュンヌの従者。


「絶対ヤダ!」

そう言うソウタの肩に「ピイピイ」と鳴きながらブルがとまった。


「そいつら、王都まで連れてく気?」

クロリスが引き摺る盗賊達をイヤな顔で見るブリュンヌ。


「そうだね。急いでいるから、ここに置いて行くか」

クロリスが引き摺る盗賊達を困った顔で眺めるソウタ。


「分かった」

クロリスがそう言うと蔦は跡形もなく消えた。


「は、はあ。た、助かった?」

口を覆っていた蔦が消えてホッとする盗賊。


「犠牲者が出るから、このまま置いて行く訳にはいかないですな」

剣を構えるペストマスクの従者。


「ひい、助けて下さい」

「もう盗賊は辞めます」

ひたすら命乞いをする盗賊達。


「どうか──」

ズシャ!

ペストマスクの従者達は盗賊達に剣を振るい、目を背けるソウタとナナミ。

(うわー、いきなり殺しちゃったよー)


「さあ、急ぎましょう」

ブリュンヌはソウタ達を急かし獣人国方面に目を向ける。


「そ、そうだね。ブル、警戒宜しく」

ソウタは肩にとまっているブルに声をかけた。


「ピピイイイイ」

ブルは空に飛び上がった。


ソウタ達御一行は急ぎ足で獣人国の王都へ向かうのであった。

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