第75話 黒死病3

ソウタ達が泊まっていた宿に衛兵が来た。ソウタ達が連れて来た盗賊達の中にペストが発症した者が出たらしい。


モモカに熱が出て寝ていた事を宿の従業員が衛兵に告げていたが、モモカの熱が下がっているので、ただの風邪と言ったのだが。


「いや、伝染している可能性があるため、同行して貰う。隔離させて貰うぞ」


「私達がペストを持って来たって言うの? 取り敢えず朝飯を食べたいんだけど」

ナナミは宿の従業員と衛兵達に尋ねた。


「いやダメだ、隔離させて貰う。ペストの疑いだから強制だ。本当は有無を言わさず連行するのだが、これでも旅人と言う事で特別待遇なんだぞ」


ナナミはソウタを見る。

(どうする?)って無言でソウタに問い掛けているのだ。


ソウタは首を振る。

(仕方ない。実際モモカが発症したし、隔離は当然の行為なんだろう)


「どのくらい発症しなければ解放されるのかしら?」


「数日は隔離だな。兆候がある場合は更に延びる」


と言う訳で連行されて隔離される事になったソウタ達。


連行された先は町外れの一軒家。そこには奴隷商のリングがいた。


「ソウタ! 俺はもう終わりだあああ……」

ソウタを見てすがり付き泣き崩れるリング。


どうやら、リングと俺達に対応した門番、衛兵、食事をした店の従業員など俺達と話をした人達がその家に隔離されていた。


(あぁ胸が痛い。俺の所為では無いのは分かっているが、何だか責任を感じちゃうなぁ……)


ソウタは隔離されている人達を見て胸を痛める。


その内、リングがペストを発症した。


頭痛と高熱、内出血から黒くなる肌。呼吸も荒く具合悪そうにベッドで横たわる。


そして他の人達も次々と発症していく。


居たたまれなくなったソウタは、勾玉を使って治療する事にした。


このままここに居ればソウタ達も発症する。いや発症した。治療したので元気だけど。


時々食事を持って様子を見に来る衛兵達は、発症しないソウタ達を見て不思議そうに見てる。


ソウタはペストを発症した人達を全員治療し、ナナミとモモカとクロリスは隔離された家を大掃除した。


「なあ、もしかしてソウタが治してくれたのか?」

リングがソウタに尋ねる。


「内緒だよ」

ソウタはウィンクして人差し指を口の前で立てた。


「おおおおおお、ソウタは命の恩人だあああああああ!!!」


「ペストを治療するなんて信じられない」

「まるで聖者様のようだ!」

「いや、聖者様その者だ!」

「ありがたや~、ありがたや~」


ペストが治った者達は拝み始める始末。


様子を窺っていた衛兵がその事を知る。そして隔離された一軒家にペストが発症した者達を連れて来た。


「すみません。このまま、ペストを発症した者を町に置いておく訳にはいきません。なんとか治療して貰えないでしょうか」


頭を何度も下げて土下座してお願いされた。


ナナミがソウタを見た。


「仕方ないなぁ。格安で対応してあげよう」

ソウタは小声でナナミに言う。

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