第74話 黒死病2

モモカがペストに感染した。


為す術がなく焦るソウタと悲しむナナミを前に、木の精霊であるドリアードのクロリスが平然と「治せば良いんじゃない」と言う。


「クロリス、もしかして精霊の力でペストを治せるの?」


「精霊の力では無理ね」


「だったらどうやって?」


「え? ソウタは王国で『月の勾玉』を手に入れたでしょ」


「月の勾玉?」


「それよ」


クロリスはソウタが隠している八尺瓊勾玉やさかにのまがたまを指差す。


「ああ、八尺瓊勾玉やさかにのまがたまの事か。勾玉の機能にそんなのないと思うけど……」


「『月の勾玉』は闇魔法の神器よ。勾玉があれば闇魔法で身体の中の生物を吸い込むとか、消滅させる事が出来るはず」


「え! そうなの?」


ナナミと雷獣のリャンゾウ、青い鳥のベルをソウタの部屋に残して、ソウタはクロリスと共にモモカの部屋に入った。


ソウタはクロリスの魔力を勾玉に流して、クロリスの魔力操作で闇魔法を発動した。


勾玉から闇が滲み出てモモカを包み込む。


暫くして、闇が勾玉に吸い込まれるとモモカの熱は下がっており、規則正しい寝息が聞こえる。


「クロリス、モモカは治ったの?」


「鑑定してみて、魔力を流すわ」

クロリスが俺のゴーグルに魔力を流す。


「お、おう」

ソウタはモモカを鑑定した。


モモカの状態は「正常」に戻っていた。


「おお! 治ってる。……ところで、これって俺必要なくない?」


「月の勾玉はソウタの所有になっているから、ソウタがいないと発動しないよ」


「そっか。取り急ぎナナミにも結果を教えて来よう。そう言えば、ペストは清潔にしないとダメなんだよ。クロリス、掃除しておいてね」


「はふ、分かったわ。ノミも駆除しておくね」



ソウタは隣で待機していたナナミにモモカが治った事を説明し、念のため自分とリャンゾウ、ナナミ、ブルの状態も鑑定で確認した。


(みんな「正常」だ。良かったよぉ)


後は各自が泊まっている部屋も掃除してその日は終える。


次の日。


ペストの事を考えると直ぐにでも町を出たいところだが、モモカが本調子では無いので数日は町に留まる事にしたソウタ達。


朝食を食べる為にみんなで1階の食堂に降りたら……。


宿の1階で衛兵達が待ち構えていた。


「君がソウタだな?」


「はい、……俺がソウタです」


「私はソウタの連れのナナミですが、何かご用ですか?」


「君達が連れて来た盗賊がペストにかかった。君の仲間でペストにかかった症状の者がいるそうだな」


(え! 盗賊がペストだったのか……。すると盗賊からモモカに伝染したんだな。ペストの治療が出来るなんてバレたら面倒だから……)


「……いや、いませんよ」


「嘘だ。その子が昨日高熱を出したって……。え、熱が出てたよね?」


宿の従業員が声を出してモモカを指差すが、ソウタと共に歩いている元気そうなモモカを見てビックリしていた。


「熱は出てましたよ。でも熱は下がりました。風邪だったみたいです。今は熱はありません」


モモカは従業員の手を掴み自分の額に当てた。


「ね!」

モモカが従業員に同意を求める。


「本当だ……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る