第58話 謁見の間2
(はぁ、この
コトウハ将軍は国王をジト目で見る。
「兎に角、儂の軍は損傷が大きい、継続して戦う事は不可能だ。儂は領地に帰る。替わりの人選をするのだな」
「なにぃ、コトウハ! 逃げるのか?」
国王の言葉に無言で応えず、コトウハ将軍は謁見の間を後にした。
その後、コトウハ将軍が抜けた王国は敗戦に次ぐ敗戦で領土の半分を失う。
敗戦の全ての責任はメアサ男爵にある事になり、メアサ男爵は死刑になった。
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「うぬぬ、
「はい……」
国王とリーキヤ公爵は明確な対応が出来ないまま、いつもの回答が出ない会話を続ける。
コトウハ将軍の変わりに任命した将軍が、各地の貴族達の兵を連れて出陣したが連戦連敗。
しかもこの度の敗走で命を落とした。
「何とか敵国の侵攻は止めているが、いつまで持つか分からん。なにか、良い対応策はないのか? このままではこの国は終わるぞ」
「……ビーカル辺境伯に兵を出させましょう……」
「ビーカルか……」
「……ビーカル辺境伯は転封の為、3年の兵役の義務を免除してるのではないでしょうか……」
脇に控えていた文官の一人がおずおずと尋ねる。
「そんな事言ってる場合か! 国が危ないのに兵役の免除もないだろう! それに、良いかビーカルが
「ふむ」
国王は満更でもない表情を浮かべた。
「こ、ここでビーカル辺境伯が反乱を起こせば、ますますこの国の──」
「何だと! 貴様、この国難の中でビーカルは反乱を起こすと言うのかああああ!」
「いや……でも……しかし……」
苦労をして治めていた領地が発展し始めた途端、転封させられた事は、ビーカル辺境伯にとって恨みこそすれ、感謝など欠片もない事を文官達は理解している。
しかし、褒美を与えた気でいる国王を前にして、そのやり方が間違いであった事など言えない文官。
「ビーカルには国王であるこの儂が広大な領地を与えたのだ! 感謝こそすれ裏切るなど有り得ん! 良し、ビーカルに回復薬を持参し兵を出すように申し付けて来い!」
国王はこの命令により王国の未来が大きく変わるとは思ってもいなかった。
(しめしめ……)
リーキヤ公爵はビーカルの参戦で王国が勝てば自分の手柄になり、ビーカルが負ければ溜飲がさがる。どっちに転んでも自分にはメリットがある策が進む事にほくそ笑む。
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