第51話 鉄鼠
「良し、方向性が決まったところで、幹部を呼んで、詳細を詰めよう」
とビーカル伯爵が言い出した。
「ちょ、ちょっと待ってください」
ソウタは、基本的はコエザにビーカル伯爵との会話を任せているが、ビーカル伯爵と何度も顔を合わせてるので、それなりに会話が出来る様になってきていた。
ビーカル伯爵も元冒険者だけあって、気さくに話し掛けて来るし、敬語じゃ無くても問題にしないところが話しやすいのかも知れない。
「おっ、どうしたソウタ。珍しいなぁ」
「幹部と言うとライゴー大司教も来ますよね?」
「勿論だ、ライゴーもこの領地の幹部と思ってるからな。ライゴーの宗教はとても穏やかで、俺の領地には最適と思って誘致したんだ。王都のイテンダ教に入られると、金の亡者共に領内を荒らされるからなぁ。それもあって、イテンダ教と関係が深いリーキヤ公爵に、狙われたのかもな」
「ふーん、ライゴー大司教って、鼠を従魔にしてますか?」
「ん? ……何でそれを知ってる? 皆には、内緒にしていたのになぁ。まあ、寄子のソウタだ。教えても良いだろう」
「やっぱり……」
「俺は貴族になる前は冒険者だった事を、前に話した事があると思うが、ライゴーもその頃の知り合いでなぁ。テイマーでアイアンマウスをテイムしている」
「そのアイアンマウスは眷族を従えているのですね」
「うっ、そこまで知ってるのか……」
「は、はぁ」
「分かった、分かった。全て話そう。ライゴーは、宗教としての誘致もあるが、本当の狙いは諜報さ。ライゴーがテイムしているアイアンマウスは、現在は数千のアイアンマウスを眷族にしていて、諜報活動を担って貰う方向で進めている。もう少し早く態勢が整えられれば、今回の事も防げた可能性もあるのだがなぁ」
「数千では、他領の監視までは難しだろうのう」
コエザが口を挟む。
「その通りだ。現在は数も増やしていてな、将来は数万単位にして国中の貴族の情報を得たいと思っている」
「そうですかぁ」
「ところでソウタ。何故君がその事を知っているのか、教えて貰っても良いかな?」
(ビーカル伯爵は信頼出来る人だと思うし、俺の事も仲間だと思ってるから……、話しちゃうかぁ)
ソウタはコエザを見た。
コエザは頷く。
ソウタは、コエザには自分が転生者で、この世界は自分が前の世界でやっていたゲームに似ている事を打ち明けている。
もっとも、ゲームについては理解して貰えなかったので、呼んだ本の内容と同じだという事で納得して貰った。
「今から打ち明ける話は、この3人だけの秘密にして貰えますか?」
「おっ、勿論いいとも約束するよ」
「実は……」
ソウタは自分が転生者で、この世界が転生前の世界で遊んだゲームと同じ事を説明した。
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