第31話 奴隷商

ソウタとナナミが朝食を食べていると、執事のヒンカネがソウタのところに来た。


「コエザ様が見えました」

「よぉ、ソウタ! 今日は奴隷商に行くのじゃろ」


「あ、んぐっ……。コエザさん、お早うございます」


ナナミが食べていた物を飲み込み、コエザに挨拶する。


コエザはギルド長になったので、と理由をつけてソウタを呼び捨てにしているが、ソウタも元々お世話になってるコエザに「さん付け」されるのは、イヤなので問題無い。


コエザは食堂のイスに勝手に座るとメイドのリエが、コエザの朝食を持って来た。コエザはこの様にちょくちょくソウタの家で食事をする。


「うん、奴隷商は初めてだから同行して貰いたいね」


そして、ソウタとナナミ、コエザの3人は、採取士ギルドの入口で待ち合わせしたジメイと合流し、奴隷商に行った。


奴隷商は古い大きめの建物だった。


「ソウタ男爵様、本日はお越しいただき有難う御座います」


奴隷商の主が入口で出迎える。


「ど、どうも……」

(うはっ、何だか、古くて幽霊でも出そうな雰囲気だ)


ソウタは軽く会釈して、建物の中に入った。


奴隷商に案内されたのは、応接室の様な商談室だった。俺とコエザとナナミは3人掛けのソファーに座り、ジメイと奴隷商は立っていた。


「早速だが、事前に連絡した通り、戦闘が出来る若い奴隷を見せてくれ」


同行したジメイが奴隷商に告げた。


「承知しました。おい!」


奴隷商が合図をすると、奴隷商の配下の男に連れられて、ソウタより年齢が下の少年少女達が5人、部屋に入ってきた。


ソウタは頭に着けていた鑑定のゴーグルを装着して、奴隷達を見る。


(ん? この子って……)

1人、気になった女の子がいた。


(シナリオの選択によっては、勇者のパーティーに入りハーレムの1人になる女の子、確か王都で暴れる盗賊を、勇者がやっつけた時に仲間に出来る子だ)


彼女の名前はモモカ。探索者シーカーのジョブを持ち、探索系のスキルや隠蔽や隠密を覚えて、将来は盗賊、忍者、暗殺者のジョブになる事が出来る。


(今、俺が買わないと、この後で盗賊に攫われるか、買われるかするんだ。これは買い、……だよな? 採取士としての素養もあるし……)


ソウタは5人の少年少女に確認する。


「えー、君達は薬草を採取する仕事をメインで働いて貰う予定だが、問題ないかな?」


(始めに確認しておかないとね、遣りたくない仕事に就いたら可哀想だ)


「「「「はい」」」」

4人は即答で返事をした。


男の子が1人、返事を躊躇っている。


「どうした? 薬草を採取する仕事は嫌かな?」


ソウタが男の子に聞くと。


「俺は始めは薬草採取でも良いんだけど、将来冒険者になりたいんだ」


「こら、余計な事を言うな……」って奴隷商の配下の男が男の子に言うのを、ソウタは手で制止する。


「ふーん、君達に頼む仕事は、ビーカル伯爵肝煎りの案件でね。城壁都市ビーカルにとって重要な仕事だ。途中で辞められるのは困るんだよ」


男の子は黙り込む。


「ジメイさん、この男の子を除く・・4人も子を購入する。」


「はい。畏まりました」


「あっ……」って驚く顔をする男の子。


「君は希望が叶う様な人に買い取られれば良いね」


ソウタは男の子に微笑む。


この男の子はモモカに替わり、王都の盗賊に攫われる事になるのだが、この時のソウタと男の子はその事を知らない。


ソウタはモモカを含む3人の女の子と、1人の男の子を購入し、奴隷契約をした。

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