第25話 公開裁判1
その日は城壁都市ビーカルの広場に、大勢の人が押し寄せていた。
冒険者、商人、錬金術師、都市に住む人達……。様々な職業の人がいた。
「おっ! お前も来たのか?」
「当たりめぇよぉ、『回復薬を始め各種薬代高騰の元凶を裁く』って言うんだから、文句の一つでも言ってやらねえとよぉ」
「だよなぁ。うちのかあちゃんも薬代が値上がりして、困ってたしよ」
街の人々が本日の裁判について、あちこちで話をしていた。
それをステージの陰から恐る恐る見ているソウタ。
「やっぱり、ステージに上がりたくないなぁ」
緊張して震えるソウタ。
「何を言っておる、この問題を解決出来るチャンスじゃ。何も悪いことをしていないソウタは、堂々としておれば良いのじゃ」
エルフの錬金術師コエザがソウタに答える。
「いやぁ、悪い事はなにもしてないけど、こんな大勢の人の前に出るのは……」
「大丈夫よ。私もコエザさんも一緒にステージに上がるから、心配しないで」
冒険者ギルドの受付嬢カモリナが、ソウタと手を繋いだ。
「皆のもの! 静まれぇ! これから薬草採取問題にかかわる公開裁判を執り行う」
役人の声に一度静まり返った後、街の人々が囃し立てる。
「おー! 待ってましたぁ!」
「犯人は許さねえぞぉ!」
「まず、我が都市を繁栄に導いてくれた立役者、採取士のソウタ殿と相棒の従魔リャンゾウを紹介しよう」
「おー!」
「ソウタ殿ぉ!」
「リャンゾウちゃーん」
パチパチパチパチ……。
湧き上がる歓声と拍手。
「え? ナニコレ?」
ソウタは歓声と拍手を聞いて固まる。
「お主がここ数年必死に頑張った結果じゃ。さあ、ステージに行くぞ」
コエザがソウタの手をとって、ステージへ
コエザとカモリナが一緒にステージへ上がり、ソウタを前に押し出した。
「良いぞー!」
「ソウター!」
パチパチパチパチ……。
更に歓声があがる。
「おい、『草毟り』ってこんなに人気があったのか?」
「馬鹿な? あり得ん」
「俺は夢を見てるのか?」
観衆として集まっていた冒険者達は、ざわめいていた。
ステージの上で『狂鬼』側の立会人を務める冒険者ギルドの受付嬢カマルカが、横にいるギルド長コヤマザに尋ねる。
「『草毟り』って、こんなに人気があったのですか……?」
「おい、滅多な事は言うな。ソウタ殿と言い直しなさい。ソウタ殿を『草毟り』なんて陰口を言う受付嬢がいると、ギルドの信頼に関わる」
「えっ……」
(これって、拙い展開じゃ……)
カマルカは冷や汗を流し顔を青くした。
「そして、このソウタ殿が従魔リャンゾウを嗾けて、襲ったと主張している冒険者パーティー『狂鬼』の5人もステージに上がって貰おう」
両手を拘束されて、衛兵に引っ立てられて、ステージに上がる『狂鬼』の5人。
(はぁ? あんた達なにやったのよ)
焦りまくるカマルカ。
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