第24話 狂鬼3
「やべえよ。『真実の箍』なんて使われたら、俺達が嘘をついてたのが、バレちまう」
冒険者ギルドからの帰り道、『狂鬼』の5人は小声で囁き合っていた。
「だな、処刑一直線だ」
「どうする?」
「どうするって、決まってるだろ」
「決まってる?」
「逃げるんだよ。このまま明日になって、公開裁判に出たら終わりだ」
「そうか、そうだな」
「仕方ねぇ、宿に戻って荷物を纏めるか」
「今夜の内に街を出ようぜ」
『狂鬼』の5人は常宿に向かった。
それぞれ荷物を纏めて宿を出ると、門に向かう。
すると、街路樹の陰から幼女が現れた。
「『狂鬼』の5人じゃな。そんな荷物を持って何処に行くのじゃ? 夜逃げか?」
現れたのは錬金術師コエザだ。
「別にぃ、宿を替えるだけだよ。あんたは誰だ。こんな夜更けに女の子1人で危ないよ」
『狂鬼』のリーダーであるカイズは惚けて言う。
「妾は錬金術師コエザじゃ、お主らは明日の公開裁判に出て貰わんといけないのでな、逃げられると困るのじゃ」
「けっ、錬金術ギルドの回し者か。馬鹿な事を言うなよ、小娘1人で何が出来る。殺されたく無かったらそこを退け!」
カイズが剣を抜くと、他の4人も武器を出した。
「これで、もう言い訳は出きんぞ、小娘1人に剣を抜いて襲おうとした事実は覆らぬのじゃ」
コエザは余裕の表情だ。
「うるせぃ」
カイズは剣を振り上げ、踏み込むとコエザに剣を振り下ろした。
カキン!
コエザの周りには魔法の障壁が張ってあり剣を弾く。
「ちっ、障壁か!」
「あはは、これで確定じゃな」
コエザは『狂鬼』の5人の後ろに声を掛けた。
「はい。現行犯逮捕ですな、コエザ様、ご協力有難う御座います」
応えたのは、5人の後ろから現れた全身鎧の衛兵。
そして、街路樹の陰からも次々と衛兵達が現れ、5人を取り囲む。
「クソっ、こんなところで終わってたまるかぁ!」
衛兵達に襲い掛かる『狂鬼』達。
しかし、対人の戦いは衛兵達に分があった。
刺股を使って5人を拘束していく。
「チクショー! 離せぇ!」
「助けてくれぇええええ」
「見逃してくれえ……」
「死にたくねぇよぉ……
「あぁ、もう駄目だぁ……」
「……」
「こんな事だと思ったわ、ソウタくんが、何もしない冒険者をリャンゾウちゃんに襲わせるはずはないわ」
コエザの後ろに現れた受付嬢カモリナが、コエザに話し掛ける。
「これで、明日の公開裁判は完璧じゃ。ソウタを『草毟り』扱いした奴らに目に物を見せてやるのじゃ」
「はぁ、冒険者ギルドの事を思うと頭が痛いわ」
「自業自得じゃろう」
「そ、そうね……」
『狂鬼』の5人は衛兵達に捕まり、牢屋で一晩を明かすのであった。
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