第21話 狂鬼2

Cランク冒険者パーティー『狂鬼』のリーダーであるカイズは、目を覚まして首を左右に振る。


「くっ、何があったんだ……」


カイズは4人の仲間が目の前で倒れているのを見て、急いで起こす。


「おい! しっかりしろ大丈夫か」


「う、う~ん。あれ?」

「うっ……。『草毟り』の奴は?」

「逃げられたのか?」

「クソっ」

「あの従魔野郎」

「拙いぞ、冒険者ギルドに報告されると……」

「だな、強盗にされてしまう……」


と言うか、明らかに強盗未遂です。


「従魔に襲われた事にしようぜ」

「だな、声をかけたら、いきなり襲われた」

「まともに喋れない『草毟り』の証言なんて誰も聞かんだろう」

「そしたら、『草毟り』の財産と従魔の魔石をゲット出来るな」

「『草毟り』はかなり貯め込んでいそうだからなぁ」

「うはは、変わった従魔だから魔石も高く売れるぜ」

「そうと決まれば早く行くぞ」

「お、おう」


『狂鬼』の5人は冒険者ギルドに急いで向かうのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方、ソウタと雷獣リャンゾウは、冒険者ギルドには行かなかった。


冒険者達が自分を良く思ってない事を、薄々気付いているソウタは、冒険者ギルドには行かず、錬金術師コエザの屋敷に来ていた。


「はぁ、はぁ……」

「どうしたのじゃ? 青い顔で……」


ソウタは採取帰りの出来事の一部始終をコエザに話した。


「なんじゃと! 酷い奴らがいたものじゃぁ! 妾に任せておくが良い」


「ふぇ?」


「ソウタはここにいるのじゃ、妾がギルドに報告してやるのじゃ」


「は、はい」


錬金術師コエザは冒険者ギルドに向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


冒険者ギルドでは、『狂鬼』のカイズが担当の受付嬢である、カマルカ・ワセイに嘘の報告をしていた。


しかも、ギルドの受付前で、周りに聞こえる様に態と大声を出して話をしていた。


「『草毟り』の従魔に襲われたんだ。あの野郎に従魔の責任を取らせなきゃダメだ。従魔は殺処分を求めるぞ。勿論、魔石は俺達が貰う」


「由々しき事態ね。『草毟り』の従魔の捕縛の依頼を出す様に、ギルド長に進言するわ」


カマルカは、ソウタを担当する事でカモリナの評価が上がっている事を、面白くなかった為、ここぞとばかりに『狂鬼』の提案に乗った。


大声で話す2人の声を聞いて、元々ソウタにあまり良い印象の無い、周りの冒険者達もその話に賛同していた。


「『草毟り』の野郎、美味しい思いをしてるだけじゃなく、従魔で襲うなんて許せねぇ!」


「あの従魔足が6本あって気味悪かったんだよぉ」


「依頼を待つ事はねえ、俺達で捕まえようぜ!」


「おー!」


カマルカがカモリナをチラ見して、ニヤリと笑う。


それを見ていたカモリナが止めようとしたが……。


「ちょっ──」


コエザがカモリナの口を塞いだ。


「カモリナ、ちょいと相談があるのじゃ。何やら厄介な状況になっとる様じゃのう」


うんうんと頷くカモリナ。


「妾がソウタに聞いた話と全く異なるのじゃ」


コエザとカモリナがヒソヒソ相談し始めた。

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