第22話 回復薬
錬金術師コエザは屋敷に戻るとソウタに状況を告げた。
「……そう言う訳で、ソウタは当面この屋敷に住むのじゃ。何も心配はいらんのじゃ」
「へっ? 良いの?」
「良いのじゃ。妾に任せるのじゃ。アイテムバッグもあるから、どうせ宿に荷物も無いじゃろう。暫く仕事は休んで休暇のつもりでここにいるがよい」
と言うわけで、ソウタはコエザの屋敷に身を隠す事になった。
その為、低ランク冒険者達は都市中でソウタとリャンゾウを探し始めたが、ソウタ達を見つける事が出来ない。
数日が過ぎると冒険者ギルドでは、大問題が発生していた。
「何だってぇ! 回復薬が無い?」
「はぁ? 回復薬無しで、どうやって依頼をこなせっていうんだ!」
「ギルドで何とかしろ!」
受付で文句を言っているのは、中ランクと高ランクの冒険者達だ。
ソウタが採取の仕事を休んでいるため、薬草が都市に極端に少なくなった。特に中級と上級の回復薬はソウタの薬草が無いと作れない。
ソウタがくる前は、錬金術師が上質の薬草採取をしていたが、ソウタが大量に上質の薬草を採取してくれる様になったので、あまり採取しなくなっていた。
ソウタが採取しなくなった事で、多少は錬金術師が自力で採取を始めたが、コエザの声掛けで冒険者には回復薬を一切売らない事になっていた。
「誰も薬草を納品しないので、回復薬が作れないらしいですよ」
カモリナが冒険者に説明する。
「全部『草毟り』が悪いのよ、『草毟り』の癖に最近薬草採取もしないで、いなくなったのよ」
カマルカが冒険者に説明する。
「むむ、『草毟り』がいなくても他の冒険者いるだろう」
「薬草の納品をする冒険者は、誰もいないのです」
「ちっ……」
Aランク冒険者のドアサ・ヒフーは、ギルド内にいた低ランク冒険者に向かって叫ぶ。
「お前ら、今直ぐ薬草採取をしてこい!」
「ドアサさん、俺達はモンスターを狩るのが仕事です。薬草採取なんて『草毟り』の仕事は──」
ドガッ!
話す冒険者の腹に蹴りを入れて、話を中断させたドアサ。
「グダグダ言うなぁ! あ゙ぁ! 回復薬無しで狩りなんて出来るかぁ! 直ぐに取って来い!」
他の高ランク冒険者達も、低ランク冒険者達を威圧を込めて睨んでいた。
「ひぃいいいい」
「分かりましたぁ」
逃げるようにギルドを出ていく低ランク冒険者達。
低ランク冒険者達が必死に薬草採取を行うが、数年ぶりに採取を行う為、薬草が何処に生えてるか探すのも苦労し、当然採取も雑、保管も雑、薬草じゃ無い草や毒草も混ざる始末。
低ランク冒険者が総出で採取するも、ソウタの採取量の半分にもならず、品質も最低。それどころか近隣の薬草を根刮ぎ引き千切ってきた為、近隣の薬草は絶滅し、事態は悪化の一途だ。
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