鬼の涙
かなしい。かなしい。
「虫も殺せぬとは、君のことだな」
悲しい。悲しい。
「それでも鬼か」
哀しい。哀しい。
「きがねなく、えんりょなく、心おきなく」
かなしい。かなしい。
「むごたらしく、えげつなく、いさぎよく」
カナシイ。カナシイ。
「……ころせよ」
カナシイ。カナシイ。
「ころして食えよ」
生きるのが。
「どうして」
食べるのが。
「もうわたしはどうせ死ぬのだ」
眠るのが。
「だから君がやってくれ」
明日が来るのが。
「終わらせてくれ」
自分が続くことが。
「……君だから頼んでいるのだ」
君が終わることが。
「大丈夫だ」
鬼よりも鬼らしく。
「来世で会える」
敵に容赦せず、友に優しく。
「きっと来世で」
そんな君が。
「また会おう」
死んでしまうのか。
「わたしはどうなるだろう」
おいていくのか。
「生まれ変わったらどうなるだろう」
だったら。
「きっとろくでもないんだろうな」
いっそ。
「いつまでも泣くんじゃねえ」
自分もいっしょに。
「君は死ぬな」
どうして。
「わたしが来るのを待っていろ」
君は強い。
「わたしの勘はあたるのだ」
自分は弱い。
「生きるくらいできるだろう」
でも。
「うるさいな。とっとと死なせてくれよ」
――。
「きっと何度も会うだろうさ」
――。
「お前は長生きだから」
そうだね。
「じゃあな。殺さないなら死んじゃうぜ」
わかったよ。
「……さらばだ」
わかったよ。
「 」
待っているよ。
「 」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
木が吐いた記録媒体。そこには短い動画が保存されていた。内容は全くわからない。情報量が少なすぎる。三文芝居の方がまだ泣ける。
――まあ、暇つぶしくらいにはなるか。
ポケットにデバイスをつっこんで、歩き出す。
ここがどこかはわからないが、いつ出口が見つかるかわからないが。というか出口があるかもわからないが、なんとなく、わたしは帰れるのだとおもう。
わたしの勘はあたるのだ。
――ココロの奥で、何かがきらめいた。
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