第22話 異世界見聞録編 05 やり直しのやり直し
私達は焚火を囲んでの食事。
宿屋の元気だった女の子が虚ろな瞳で料理を配膳してくれる。
こんなはずではなかった!
この世界来て、3日経っていないのに全8国の内、これで3つの国を滅ぼした。
あと5日でこの人間界は滅亡!?
建物を魔法で修繕するのは面倒くさい!とジュリエッタ談
人は蘇生させたが・・・・建物はなく・・・・焼け野原のままだ。
人々は街を再生するべく協力して作業をしている・・・虚ろな瞳で・・・・
私はその虚ろな瞳に耐えられず早々にこの街を出発する事を決意する。
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そして我々は何事もなかったように新たな街を目指す。
小さな丘に上ると遠くに城がある街が見える。
このフレーズにデジャヴ感を感じながら・・・・
今度は工業に特化した国とか・・・
私は昨日から考えた。
何がいけなかったのか?
今回は私が一人で先に行く。
なので3人は私が合図してから来て!
とした。
そう昨日考えていたのは・・・・
3人ともこの世界の人間?をどう感じているのか?
反応を見ていると・・・自分達と同じ形はしているが完全に見下(みくだ)している。
彼らはこの世界の人間に敬意を払わないし、逆に自分が敬われる立場だと思って疑わない。
初めは知識レベルがわからなかったのでこの世界の人間に興味をもっていたが・・
彼らは今まで滅ぼした3つの国でこの世界の人間の知識をある程度知ってしまった。
その知識レベルも自分が持っている知識レベルに遠く及ばないことを・・・・
なので・・・・全く無関心。
だからこの世界の人間を殺すことも、生かす事にも全く興味が無い、この世界の人間を例えば食用だと思ってくれれば、
今までたべたパンの枚数をおぼえているのか?的にこの世界の人間をせめてパン=食用として認識してくれるだろうが・・・。
(さあどうしたものか?)
そんなことを考えていると門の入り口に到着した。
門番は横柄な態度だったが、私の笑顔?で街への入場を許された。
街に入ると、、、先日の経済の街よりも人が少ないが
市場は活気があって・・・・キョロキョロ周りを見ながら進む私。
市場もある!武器屋も!防具屋も!
街をウキウキ、スキップしながら一人で探索する私!
市場でおいしそうなフルーツを購入♪
食べ歩きだ。
人々の会話が耳に飛び込んでくる。
私達が今まで滅ぼした街の情報が・・・・。
各都市とも復興は淡々と進んでいるとのこと、そこは安心したが・・・・
住人の目に覇気がなく、生きる屍のようだ・・・との事。
「・・・・・・」
聞かなかったことにしよう!
しばらく進むと広場が見えてきた。
広場には石段、その中央には噴水が女性の裸体像があり、肩には瓶?を乗せ、そこから水が落ちている。
シャチ的な像の口や股間から水を出している小僧的な像とは違いちょっと雰囲気がある。
私は石段を駆け上がる、
恋人同士と思われるカップルが両手でコインを噴水に入れている。
(後ろ向きにコインを投げればいいんだっけ?)
と思い、袋からコインを取り出し、投げようとする・・・・
その時、小学生ぐらいの少年が私にぶつかってくる。
よろける私、その少年は私を見ることなく、一目散に走り去る。
私が持っていたコインの入った袋を持ちながら・・・
「待ちなさい!」
といい、私は追いかけようとするが、石段に足を取られ・・・・ゴロゴロゴロ・・・・
哀れ、勇者ゆきちは石段に足を取られ落っこちて死んでしまいました・・・・GAME OVER
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目を開けると・・・・白い空間。
当然目の前には狸のぬいぐるみが・・・・
だいぶ慣れてきました。
又、私、死んでしまったようです。
わたしは躊躇することなく力いっぱい狸のぬいぐるみを蹴り飛ばす。
今回は避けることなくしっかりヒットしました!
「又、死んでしまいましたよ!いい加減、私を強くしてください!」
狸に話しかける私。
「・・・・」
狸は何も答えない。
今度は狸のぬいぐるみをつかんで投げ飛ばす。
「・・・・」
狸は何も答えない。
狸のぬいぐるみを抱きかかえ揺すっても
「・・・・・」
反応が無い
「あれ?狸さん!いないの?」
話しかけても
「・・・・・」
返事は無い。
私は考える・・・・これから私、どうなるの?周りを見てもこの白い空間から出る扉等は無い!
(私、この世界でこのぬいぐるみと一緒に閉じ込められるの!? 嫌だ!嫌だ!!嫌だ!!!)
悲しくなって涙が出てくる。
(元の世界に戻って、高校受験に合格して4月から女子高生になるんだから!)
涙で目の前がぼやける・・・・。
私は狸のぬいぐるみを抱き寄せ、顔をぬいぐるみに押し当てる。
するとぬいぐるみより声が聞こえる。
「あ~~~~~あ~~~あ~~~~ マイクのテスト中・・・・音取れてる?大丈夫?」
といつもの狸の声。
「音量は大丈夫かな?・・・・・」
ぬいぐるみから顔を離すと聞こえなくなる。
「・・・・・・」
再度ぬいぐるみに顔をつけてみると・・・・
「勇者ゆきちよ・・・又この空間に戻ってきたな?」
いつも通りの狸の声と口調。
「声ちっさ!音量調整できていないです!」
私は絶叫する!
「今は本業が忙しくてな・・・・お前の相手をしていられないのだ・・・ゆきちのことだ、私を蹴ったり、投げたり・・・でこの声の存在に気が付かないで・・・
もう元の世界に戻れない!で泣いたりしていないだろうな?」
と一方的に話す狸。
「余計なお世話だ。」
私は涙を拭いて狸に文句を言う。
「今度は・・・毒を盛られたか?山賊に教われたか?落とし穴に落ちたり・・・単純な罠に引っかかっていないよな?
階段で足を踏み外して落ちたなんて笑えない死に方ではないよな!」
周りを見渡す私?
どこかで見ている?
「さて、時間になったようだ!」
と狸の声
「?????」
「なお、このテープは自動的に消滅する・・・・。これで録音は大丈夫?・・・・停止ボタンをおして・・・・と」
そんな狸の声を聴きながら私は目の前が白くなっていくのを感じる。
「消滅するのは私の意識なのね!」
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目を開けると・・・・私はベットに寝かされていた。
起き上がろうとするが・・・全身が痛い!
石段から派手に落ちたので全身にあざがあるのだろう。
そんな痛い体を起こし、座る体制になる。
先日泊まった宿屋より粗末な感じがする。
部屋は現代の私が使っている四畳半の部屋と同じ位だろうか?天井、壁、床も板が貼ってある。
所々穴が開いているようでそこから日差しが入ってくる。
部屋の外で物音がする。
そしてゆっくりと扉が開き・・・・私からお金の入った袋を盗った少年が目の前に立っている。
「やっと意識がもどった。」
と少年。
私は少年が差し出したコップを受け取る。
私が飲むのを躊躇していると、少年は一口飲み、私に差し出してくれた。
それを見て一口のむ・・・・。
(普通の水・・・・だけど美味しい)
一息つく私。
少年は・・・・
「おねえさん、ごめんなさい!」
と謝ってきた。そして私から盗んだ袋を私に差し出す。
「お金に困って盗みを働いて・・・でもお姉さんが階段から転げ落ちて動かなくなった時、怖くなって・・・・」
少年は泣きはじめる・・・。
「大丈夫だから・・・・」
と私はいい、頭を撫でた。
少し時間が経ち、少年が落ち着いて来たので
「所で・・・ここは何処かしら?」
と質問する。
「ここは俺の家、宿屋を経営していたんだ」
と少年。
その時、外から女性の声がする。
「意識が戻ったのかしら・・・・」
扉を開けてお腹女性が部屋の中に入ってきた。
この少年の母親だろうか?
「うちの息子が大変失礼いたしました。」
と母親が謝罪してくる。そして少年の頭をつかみ、下げさせる
「大丈夫ですよ!」
私は明るく答える。私は少年の頭をなでる。
その声を聴いて安心したのか・・・。
「母さん、お店に買いものに行ってきます。」
といい、部屋を出て行った。
私達も部屋を出て広い部屋に移動する。
その部屋にはカウンターがあり、正面には入り口が見える。
カウンターにある椅子に私は母親を座らせて質問する。
「聞いてもよろしければ・・・ですが何か月ですか?だいぶ大きいようですが・・・。」
「はい、もうすぐで生まれる予定です。」
彼女は幸せそうに微笑みながら答える。
「でも・・・・いえ、何でもないです。」
その後、含みのある笑顔に変わった。
「キャー」
その時外から少年の悲鳴が聞こえる。
私はゆっくりと立ち上がる。
そして窓際まで移動し、外の様子を伺う。
外にはガラの悪い3人の男達が先ほどの少年を捕まえている。
そして暴れる少年の襟をつかみ、こちらに向かって歩いてくる。
私は武器をとり、扉の裏側に隠れる。
そして乱暴にノックする音・・・・。
「メルフィス姫?どうしましょう?」
私は脳内のメルフィス姫に声をかける。
「ん?」
と間の抜けた返事!
「メルフィス姫?」
「ゆきち様すいません、最近私を呼んでくれないので・・・すっかり他人事の感覚になっていまして・・・油断していました。」
呑気なメルフィス姫・・・。
自分の体が乱暴されていたらどうする気なのだろうか?
(大丈夫です。その際はゆきち様の体と交換してもらいます・・・。)
なんか怖い考えが聞こえた・・・・気がしたが聞こえない事にしよう。
大きいお腹を抱えたお母さんが不安のよう顔をしながら扉を開ける。
3人の男たちは、乱暴に扉を開け、家の中に入ってきた。
乱暴に開けた扉と壁に挟まる私。
(かなり痛い!)
メルフィス姫の美しい顔に傷が!
でも白い部屋に移動しない・・・・ダメージがヒットポイントを上回っていないようだ。
「ゆきち様」
メルフィス姫の声がする。
「ヒットポイントが先ほどのダメージで残り2しかありません!」
それは大ピンチ!
あとちょっとのダメージで白い部屋行きだ!
「金は用意できたか?」
3人の中で力が強そうな男がお母さんに声をかける。
「もう少し、待ってもらえませんか?」
とお母さん。
「もう少しで子供が生まれます。生まれたら働いて返しますので・・・」
と男たちに懇願する。
「お前の都合は知らねえよ!今まで待ったんだ!今日、金貨1枚払えないなら・・・子供を連れて行くぞ」
と言い、お母さんに凄む。
「・・・・・・」
声を出せないお母さん。
(ここは私の出番!?)
私はプレッシャーで体調不良のスキルが発動する前に・・・済ませてしまおう。
「金貨1枚?ここにあるから持っていきなさい!」
私は扉の後ろから颯爽?と現れると男たちの足元に金貨を1枚投げる。
「え?」
男たちは私がいたことに驚くのと同時に足元に投げられた金貨に驚いている。
「お前は誰だ?」
「・・・・私の名前は必要?あなたたちが必要なのはお金でしょう?」
と私。
そんな私を見て、男たちは何か相談している。
「利息の一部は確かにもらった。元本を含め後金貨2枚が無いと子供は返せないなあ!」
と言い出す男たち。
「借りたのは銅貨1枚だったはず・・・・」
とお母さん。通貨の価値はわからないけど・・・・男たちは高い利息を取っているのは間違いないようだ。
私は男たちの足元に金貨4枚を投げる。
「倍の金額を払った。これで問題ないよね?」
といい、私は剣を床に突き刺す。
剣から噴き出す炎!
男たちは金貨を拾うと少年を床に落とし、扉から逃げていく!
「覚えていろよ!」
と男たちは捨て台詞をはきながら・・・・。
(熱い!熱い!熱い!!)
剣から炎が出るって聞いてないよ!
私は自分のダメージが気になる。
「ゆきち様、あとヒットポイントは1です。」
ギリギリ耐えることができたようだ。
これも冒険で経験を積んでヒットポイントを増やした成果?
そんな私の隣でお母さんは少年を介抱している。
少年の顔には殴られた跡があるが・・・他は大丈夫そうだ。
お母さんは私に向かい・・・
「息子がご迷惑をおかけしながら・・・お金まで出していただきありがとうございました。」
と言い、母親は土下座のようなしぐさをする。少年もそんな母親に従い、同じ動作をする。
「いえいえ、大したことはしていません。」
と私。
「お借りしたお金は、出産後に働いて返します」
とお母さん
「俺も働くよ」
と少年。
「でも盗みはダメよ」
と私。
「それはしない!」
と少年。
ふと私は思いつく。
「私の他に後3人いるのですが・・・・ここに泊まらせてもらえませんか?」
と聞いてみる。
「家の形状が・・・宿屋に見えたので・・・・」
と私。
「宿屋を昔は経営していたのですが・・・私が出産の為、休業していまして・・・・何もできないのですがそれでよろしければ・・・・」
とお母さん。
「私は構いません。又、私達も手伝いますよ」
といい、私は微笑む。
そして私は3人を呼び寄せる。
宿屋の研修を3人にもさせる為に。
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