第16話 魔族の王
しばらくして私は意識を取り戻す・・・・。
目を開けるが・・・目の前は真っ暗。
体に力を入れるが・・・・動かない!
「メルフィス姫?」
問いかけるが・・・・反応は無い。
(これが死後の世界!?)
「・・・・・」
(やだ~~~もっとやりたい事があったのに!)
混乱する私。
(待てよ!異世界転移する前の世界に戻っているからメルクス姫がいないだけかも!)
そう思うと・・・・目を開けたら・・・本日は、高校入学試験日!
(私の脳、短期記憶能力がただでさえ少ないのに・・・・異世界転移で覚える事が多く、受験対策で覚えた内容、すっかり忘れているじゃん!どうしよう~~~~~!)
急に現実味を帯びてきた。
(今回の入学試験失敗したら・・・・高校浪人?そんなの聞いたこと無い!)
そう思うと異世界転移したままの方がよかったかな~。
だんだん目の前が明るくなる・・・・。
目が覚めるのかな?
・
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・
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・
目の前に地面が見える。
私は正座をしているようだ。
目の前にデカい胸の山が2つ見える。
なだらかでは無いので・・・・残念!、メルフィス姫の体のようだ。
足が痺れている。
立ち上げれない程に・・・・
そして、頭をつかまれている感覚があった・・・・が今、無くなった。
私はゆっくりと頭を上げる。
目の前には、ジュリエッタが立っていた。
赤い瞳は閉じたまま、何かをつぶやいているのか、特徴的な赤い唇が小さく動いている。
「メルフィス姫」
脳内で話しかける。
「ゆきち様、大丈夫でしたか?」
メルフィス姫が答えてくれる。
「メルフィス姫こそ大丈夫でしたか?」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
大丈夫ではなかったようだ。
周りを見ると・・・・
地面に倒されて傷だらけの赤い龍と魔族の2人が見える。
私は立ち上がろうとするが・・・・足が痺れていて立てない。
「なるほど・・・・・大体わかりました。」
ジュリエッタはそう呟くと・・・目を開ける。
いつも通り?の赤い瞳、私を見ている。
「ジュリエッタ様!色々とありまして!」
と言い訳をしようとする私。
「事情は大体わかりましたので大丈夫です。」
と、聞きなれた”大丈夫口調”のジュリエッタ様。
(機嫌がいい?)
私はジュリエッタを観察する。ジュリエッタは小さな胸の前で両手を組み、何かを考えているようだ。
私は立ち上がり、痺れた足を引きずりながら魔族の2人へ近づく。
そして2人を観察する。
2人とも怪我をしていて意識は無いようだが・・・・命は大丈夫そうだ。
「魔法で蘇生したからもうすぐ意識を取り戻しますよ。」
ジュリエッタが教えてくれる。
「蘇生?」
質問する私。
「はい、記憶を覗くのに必要でしたので一度、死んで頂きました。でも大丈夫です。」
「赤い龍も」
「はい、同様です。でも大丈夫です。」
「ひょっとして私も?」
「はい、同様です。でも大丈夫です。」
普通の”大丈夫”口調で恐ろしいことを”さらっとおっしゃる”ジュリエッタ様。
ジュリエッタは指『パチン』と弾く。
すると魔族の2人と赤い龍が目を覚ます。
そして全員がジュリエッタを見つめる。
赤い龍は地面に頭をつけて・・・・魔族の2人も膝をつき服従の姿勢をしている。
ジュリエッタは静かに口を開く。
「皆さんの事情は分かりました。・・・・すべての元凶はゆきち様のようですね・・・・」
と言い、赤い瞳で私を睨む。
とっさに視線を外す私。
「この後ですが・・・・魔族の2人はどうなさいますか?」
ジュリエッタの質問に魔族の長老は答える。
「私は魔族に戻り、勇者様が我らの主人であることを伝え、逆らうことが無い様に彼らをまとめたく思います。」
魔族の王は・・・。
「私の主(あるじ)である勇者様に着いていきたく思います。」
とジュリエッタの方を見て答える。
「王の主(あるじ)?」
私が言うと・・・・。
「はい、勇者様は我らの王の主(あるじ)です。つまり、我々魔族の王に命令できる唯一の存在です。」
と長老が言う。
「いつの間に?」
私は驚いて質問する。私は一切存じておりませんが!
「先ほど王の頭に触れて頂きました。我々魔族の中で、主(あるじ)となるものは魔族の頭に触れ、髪の毛に指を絡めることで魔族の心を縛ります。」
「・・・・・」
沈黙する私。
「・・・・・・」
私を見つめる魔族の王。
(確かに私は王の髪の毛を触りました。でも!それは寝ぐせを直すため!邪念はありませんでした!)
「私は・・・・・」
言いかけた所でジュリエッタが口を挟む。
「ゆきち様、王の主(あるじ)となっては?万が一断られたら、大変なことになりますよ」
「大変な事?」
「はい、勇者様、主(あるじ)に必要とされない魔族に存在意義はありません。消えて無くなるのみです。」
「・・・・・・」
ジュリエッタ様、会話を止めてくれてありがとう!
大変な事になる所でした!
「わたりました。魔族の王よ、よろしくお願いいたします。」
私は王に向かって微笑む。
「はい、勇者様」
私の目をまっすぐに見て答える。
ぴろり~ん
勇者・ゆきちは魔族の王を配下に加えた。
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