第15話 転移の部屋

目を開けると・・・・白い空間。

そして当然のように、目の前には狸のぬいぐるみが・・・・


わたしは躊躇することなく力いっぱい蹴り飛ばす・・・・はずがよける狸。

豪快に転ぶ私・・・。


「なんで避けるんですか?」


「痛いの嫌だし・・・・所で”ゆきち”よ魔王を討伐して戻ったか?」


「・・・・・・・」


「そうか、そうか、ずいぶん時間が経ったようだが、討伐できたか!これで私も本業に戻れる!」

ご機嫌の狸。


(実はまだ・・・討伐できていません!)

言い出せない私。


(でも、魔王は私に降伏したようなものだし!ゲームクリア!?)


そんな私を狸は手招きする。


私が狸に近づくと前に扉が現れる。


「さあ、この扉を開ければ元の世界に戻れるぞ!」

私は扉の前まで移動し、扉に手をかける。


「ゆきちよ~よくやった!女神様によろしく伝えてくれ!」

狸が最後の挨拶をしている。


(女神って誰なんだろう?)

そう考えながら扉についているノブに手をかけ回して押す。


『ガチャ』

(異世界転移、いろんな小説で読んだけど・・・・イメージと違ったな~楽しみより、苦しかったな~特に、ジュリエッタの特訓!

あれはないわ~、知っていれば誰も転移を受け入れない!でも一度体験すれば怖いものはなくなるな~

私の知らない所で世界が変わるような出来事があったけど・・・・私には関係の無い、異世界で起こった出来事だし!

なんといっても!ジュリエッタからの追撃を受けることなく生還できる!)


「・・・・・・・」


『ガチャ、ガチャ』


「・・・・・・・」


(あれ?押すのかな?引くのかな?)


「・・・・・・・」

扉は動かない


(ひょっとして引き戸?)


「・・・・・・・」

扉は動かない


「ゆきちよ、どうした?」


扉が開かずに苦戦している私に狸が話しかけてくる。


「開きません!」


「・・・・・・」


「・・・・・・」

見つめある2人?


「ゆきちよ、魔王は討伐したのだろう?」


「・・・・降伏させました!討伐寸前まで行きましたし!」


「・・・・・・」


「・・・・・・」

再度、見つめある2人?


(はあ~)

狸はがっかり感が半端ないほどのため息をつく。

そして大きな尻尾の付け根からタブレットを取り出して何かを操作している。

しばらくタブレットで何かを見たあと、タブレットをしまう。


(尻尾の大きさとよりタブレットの方が大きいはずなのに・・・)

私は思ったが・・・黙っていた。


「ゆきちよ、魔族の王を降伏させても・・・・私が言っている魔王は、悪魔の王!」

生意気な狸はしれっと言った!


「はあ?前に魔王って言ったじゃん!魔族の王、略して魔王!」

私は声が裏返る!


「じゃあ、魔族の王を討伐してきて!」

狸は言ってくれる。


「魔族って!?」


私の目の前が白くなってくる・・・。


狸め!質問に答える気、無いのね!

次会ったらボコボコにしてやる!

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