第9話 迷いの森。

次の日、朝起きた時、私はあることを思いついた。

獲物が現れた時に剣を持ち、振り下ろすと魔法が発動する・・・・

なので獲物が居なくても剣を掲げたらどうなるのだろうか?

そんな疑問から

天に向かって剣を掲げ、


「聖なる光を!」

私は思いついたら実践!


なんと剣は輝き、雷撃が四方に飛び立つ。

ある一定の範囲内に獲物がいると剣から電撃の魔法は発動。

勝手に攻撃してくれるようだ。

その攻撃は獲物が隠れていても!


「メルフィス姫!すごくないですか?」

私はご機嫌で脳内に話しかける。


「剣にそんな使い方があったとは・・・・」

メルフィス姫も驚いている。

でも、この方法で歩いていれば敵に会うことなく、進める!

思い付いた私って天才!?


今日も良い日になりそうだ!

スキップをする気分で森の道を進んでいく。




この世界には聖なる光が生まれる森が天空にあると言われている。

その天空にある森には大きな大木があり、その大木は世界樹と言われている。

この世界にある聖なる光はこの世界樹から生まれ、世界の規律を司っている。


今その世界樹の周りに聖なる光が集まっている。


「どうなっているのだ・・・・」

世界樹は数ある聖なる光の中でも大きな輝きを放っている塊に話しかける。

話しかけられた光は形を変える・・・・。

小さな人型になりピンク色の髪の毛、長さは背丈と同じ位の長さがあり、背中にはトンボのように4本の羽が生えている。妖精のような形・・・・。


「はい、世界樹様・・・」

妖精は神妙な声で答える、


「キャロルが管理している南の森、3年前は魔王軍の侵入を許し、今は勇者がやりたい放題しているようだが・・・・どうなっているのだ。」


「昨日、南の森で生き物達ので取りまとめをしている長である、私の友人である妖鹿が『なぜ生き物を虐殺しているのか?』を私に代わって聞く為、勇者へ接触するべく近づいたのですが・・・・交渉が上手くいかなかったようで・・・・。」

キャロルと呼ばれた妖精は声を震わせる。


「キャロル・・・・またミスしたの?」


「世界樹が怒っているよ」


「又、人の理由(せい)?」

キャロルの周辺に色々な光が集まってきて取り囲むように飛んでいる。

そして形を変えて妖精のような形状に変化する・・・・。

そしてキャロルと取り囲むように飛び回わる・・・。

キャロルは世界樹の次に力が強く、長く存在している理由か知識も高く世界樹と会話が成り立つが・・・

他の妖精達は片言に言葉を発するのみで会話が成り立つほど知識が育っていない。


「キャロルよ・・・・」

世界樹が話しかける。


「勇者をお前が管理する南の森にある迷いの湖に連れてきなさい・・・。私が直接勇者に聞いてみよう」


「話しかけても返事しない・・・あの子よくわからない・・・・」


「世界樹様・・・危険・・・あぶない・・・・。」


「移動してはダメ・・・・」

キャロル以外の妖精が世界樹の周りを飛び回る。


「心配するな!世界の規律である私にエルフ族が危害を加えることはできない。・・・・キャロルよ勇者を連れてきなさい」

キャロルは頷くと飛び立つ・・・。

勇者を迷いの湖へ導くために・・・・。



「メルフィス姫、獲物が少なくないですか?」

剣を掲げて歩いているが・・・・最初のように魔法が発動しない。

周囲には獲物がいないようだ。

さっきから結構歩いているはずだが・・・同じような木々が並び景色・・・・

そして又2又に分かれる道が出てくる・・・。


「ゆきち様」

メルフィス姫の声が脳内に響く。


「迷いの森に入り込んだのかもしれません」


「迷いの森?」


「はい、私は本で読んだ知識なのですが・・・。南の森には聖なる力をもった妖精達の悪戯?と言われている現象があるそうで、その現象とは道が2本に分かれている所が出てきて・・正しい方を選べれば迷いの森から抜け出すことができるのですが、間違えた方を選ぶと何日も歩いて、やっと森から出たと思ったら・・・・最初の入り口に戻っていた・・・とのことです。」


「・・・・」

私は考える・・・・。

戻されるのは嫌だな・・・・。

う~~~~ん・・・・ここは・・・・選択で迷った時の鉄板な決定方法!


「どちらにしようかな?」

右に行こう


「天の神様の言うとおり♪」

左に行こう。


「あべべのべ♪」

右に行こう。


「かきのたね♪」

右に行こう。


「まだわからない♪」

右に行こう


「もうわかったよ♪」

右に行こう


歌を歌いながら道を選ぶ私に


「ゆきち様・・・・どうしたのですか?」

メルフィス姫が不安になったのか聞いてくる。


「メルフィス姫、この歌は私の世界では迷った時に選ぶ時に使う伝説の呪文です、呪文の内容は住んでいる場所によって異なるのですが、花びらを使い人の好意を占ったりできる素晴らしい呪文なのです!」

私は自信満々に答える・・・。


「そんな素晴らしい呪文?が・・・・聖なる光が示す道とは違う道を選んでいたので不安になっていたのですが・・・・」

とメルフィス姫・・・。


(まずい!そんなことが起こっていたとは・・・・。)

聖なる光が見えない私・・・・


「迷いの森は・・・・正しい聖なる力が妖精の悪戯によって歪められて方向感覚を狂わせ何処に向かっているかがわからなくなり、迷子になり・・・迷う・・・・と私は推理しました。なので私は”あえて”聖なる光が導く道とは違う道を選んでいたのです!」

と自信満々に答えてみる。


「素晴らしいです!ゆきち様!」

メルフィス姫は感動しているようだ・・・・。



一方、キャロルは頭を悩ませている・・・・。


「勇者よ・・・・世界樹様がお前を呼んでいる・・・」

さっきから何度勇者に声をかけても勇者は一切反応せず・・・・知らない歌を口ずさみながら迷いの湖へ向かう道とは違う道を選んでしまう。

キャロルは困ってメルフィス姫にテレパシーで問いかけると


(道は勇者様が選んでいることなので・・・・)

との返事。


「無視すんな!ゴラ~」

キャロルはイライラして勇者の顔の前に立ちふさがり、顔にキックを入れようとするが・・・・

勇者の右手が虫を追い払うよう動き・・・・キャロルの顔面にヒット!簡単に撃ち落された・・・・。


(痛い!!!しかしなぜ勇者は私の言葉に反応しないの~、世界樹様には迷いの湖に連れてくるように言われているのに!どうしよう!)

キャロルは顔を抑えながら悩んでいると・・・・


「キャロル!勇者はまだか?」

先に迷いの湖に到着している世界樹が私にテレパシーで話しかける。

イライラしているようだ・・・・。

世界樹が待たされることは無い。

だってこの世界で尊い存在だから。


私は決心し勇者の前で実体化する。

なぜ今まで実体化しなかったかというと普段は幽体なので痛みがあってもダメージは受けないが実体化した状態で攻撃を受けてしまうと実際にダメージを受けてしまい、ケガをしてしまうと治らず、酷いダメージをを受けてしまう最悪消えてしまうからだ。



「ゆきち様」

メルフィス姫が声をかけてくる。


「先ほどから妖精様が私達へ話しかけて来ているのですが・・・なぜ無視をされるのですか?」


「・・・・・」

私は答えない・・・・。


(妖精様が話しかける??この世界は妖精がいるのか~!さすが魔法と冒険の世界!会いたいな~~でも私には見えないし妖精の声は聞こえない・・・でも、無言でいるわけにはいかないし・・・・どうしよう!?)


「メルフィス様、あえて無視しているのです。迷いの森は妖精の悪戯なのですから・・・・」

私は冷や汗をかきながら答える。


「なるほど・・・・。流石ゆきち様!」

メルフィス姫は感動しているようだ。


その時、森の木々より右側から左側に光るものが高速で横切ったのが見える!

長い棒状で羽・・・・昔テレビの不思議映像で見たことがある、未確認動物(UMA)のスカイフィッシュ!

流石、魔法と冒険の世界!未確認動物である妖精だけではなく、スカイフィッシュも!?

そのスカイフィッシュは私に向かって飛んでくる。


(攻撃されると私ヤバくない?防具で防げないと・・・・ヒットポイント少ないし!)

慌てて剣を抜き払ってみる。

軽い手ごたえがあり、スカイフィッシュは急旋回して逃げ出す。

目の前にはトンボのような羽が2枚落ちている。


「ゆきち様!」

メルフィス姫の驚いた声が聞こえる。


「メルフィス姫、静かに!」

私はスカイフィッシュを追いかける!


「未確認動物(UMA)のスカイフィッシュ!がいました!正体を確かめましょう!」


「ゆきち様、うま?・・・なんですか?それ!」

メルフィス姫の叫びはスカイフィッシュ!に夢中な”ゆきち”には届かなかった。


(何なのあの勇者)


(ザッ、ザッ、ザッ・・・・・)

木々をかき分け追いかけてくる勇者の足音が聞こえる。

キャロルは背中の羽を2本切られ、まっすぐ飛べない状況だが必死に残った2本の羽を羽ばたかせ必死に飛んで逃げる。


キャロルの目の前に迷いの湖が見る、そして湖の畔に世界樹が見えるが直ぐ後ろに剣を片手にもち追いかけてくる勇者が・・・・・。

勇者との距離は徐々に短くなり・・・

勇者は剣を振り上げキャロルへ振り下ろす。


(怖い!怖い!怖い!! 世界樹様!助けて!!)

キャロルは叫ぶ!


「キャロルよ、よくやった」

と世界樹の声。

キャロルの体が光輝き・・・・

「お前は先にもどっていなさい」


キャロルは勇者の前より消えて世界樹があった天空に浮かぶ森へ飛ばされた。

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