第7話 街は大騒ぎ
ジュリエッタがプロヂュースした色々な特訓?が終わったその日の夜。
私は寝室から抜け出す。
外はまだ日が出ていない。
長い髪はフードの中に入れて、変装している。
何処なら見ても目立たない・・・はず。
早朝なので城の中はだれも歩いていない。
「私。完璧じゃない♪」
「ゆきち様、御油断されないように・・・・」
とメルフィス姫の声
私たち2人?は結託して城から逃げ出す。
こんな異世界転移は嫌だ!
私が読んだ異世界転移ものの小説ではこんな設定は無かった!
両親にも姉にもやられたことがない程の特訓と称した虐め?をうけるとは・・・
この世界に私が転移してから何か月(特訓で眠らせてもらっていないので時間の感覚がなくなっています。)も城から外に出られない、登場人物も5人(狸を含む)しかいない冒険物はいかがなものか?
私が読んでいる異世界転移ものの小説ではもっと簡単?に快適に物事が進むはず・・・。
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変装した衣装は前からメルフィス姫が準備していたものだ。
この衣装を着るとお城で働く使用人に見えるそうだ。
今回の脱走?逃亡についてはメルフィス姫も乗り気だ。
女神様の転移を受けてから寝ている時以外はジュリエッタがべったりと憑いているので自由時間が取れなかったそうだ。
そして2人は結託した。
ジュリエッタの魔の手から逃れるために・・・・。
「ゆきち様、ジュリエッタは私達が疲れて眠っていると思っているはずです・・・。」
とメルフィス姫。
先ほどまでの気が遠くなるほどの特訓の後、やさしいジュリエッタは私に体力回復の魔法をかけることなく、耐えられないほどの疲労感や睡魔、飢餓感が残った状態で
「明日も朝が早いですが疲れを取ってくださいませ。」
とやさしい声で私に引導を渡してくるジュリエッタ。
「明日もよろしくなんでいわないからね。」
????なんですか?今の?デレ・・・ですか?そんなデレはいらない!
私達は、メルフィス姫が隠し持っていた体力や状態を回復する薬を飲み、ジュリエッタ部屋の前に移動、時間を止める魔法が使える杖を扉に仕掛けて起動させる。
これもメルフィス姫が事前に準備していたものでビザンテ帝国の国宝とのこと。
杖を突きたてると赤い光が出てジュリエッタの部屋を包み込む。
「大成功!?」
私たちは周囲に気をつかいながら城の中を移動する。
そして城門の門番の前も無事に通過、城壁より出て街中に入る。
(とりあえず、城からの脱出成功!)
空が薄明るくなり、周囲が見えるようになってきている中、大通りの石畳の上を私は足早に走り抜ける。
レンガを積んで作った街並み・・・。昔、夕貴時代に図書館で見た中世ヨーロッパの風景を思い出される。
早朝なのですれ違う人も少なく・・・でも街中は馬車が走りパンの焼ける匂いがしている・・・
街ももうすぐ目覚めるであろう。
私たちは急いて外界と街を隔てる門に移動する。
門番に
「薪を拾いに行く」
と私は声を替えて伝える。
門番は面倒くさそうに手を横に広げ道を空けてくれた。
私は軽く門番に会釈するとあえてゆっくりと道を歩いていく。
(ここでばれたら大変だ!)
後ろを気にしないように歩き、門が視界から消えると・・・
「城下町からの脱出も成功」
と脳内のメルフィス姫と喜びを分かち合い小走りに森の中に駆け込む。
さあ、私たちは自由!
魔法と冒険の世界!堪能しないと!
その前に状況判断を・・・・
「メルフィス姫、今いる所はどこですか?」
私はヒザンテ帝国の地図を広げる。
「今いるのはここ、私の名前がついた都市、メルフィス。」
私は地図を確認する。メルフィスと書かれた文字が地図の南端にある、
「地図の中央部には、大きな湖とそれを取り囲むように山があり、その北側にはヒザンテ帝国の帝都。私の父である皇帝と皇太子の兄がいる・・・はず。
湖を回り込むように北東に行くと私の後見人である叔父様が統治している都市があり、南下には魔王軍が侵攻してきた、標高の高い山脈が連なっています。」
地図には帝都より他の都市に伸びる線が引かれている。ヒザンテ帝国は内陸にあるようで海は無いが国土の大部分は湖が占め南方は山脈、他は陸続きで別の国に繋がっているようだ。
都市メルフィスから帝都の間には大きな湖と山があり、メルフィス姫の叔父様が統治している都市を通過しないと行けない地形になっている。
「直接、帝都には行けないのか・・・・大きな湖と山があって・・・迂回しないといけないのか・・・・」
「はい、大きな湖と山は3年前までの魔王戦の時に、ジュリエッタが放った魔法でできたものです。」
脳内でメルフィス姫が答える。
「え・・・・この湖と山ができた?」
尺図がわからないが・・・・国土の半分も?
「はい、名前を死湖、別名ジュリエッタ湖・・・・。これほどの魔法をためらわずに使おうと第2波を打つ呪文を唱えていたジュリエッタを魔王が倒してくれたので、それ以上の被害を出さないで済みました。」
「ちょっと待っって!!!!ジュリエッタってそんなにすごい魔術師なの?」
「はい、ここだけの話、第1派を打った際、魔王軍だけではなく、味方も戦意を喪失したのは秘密です。」
とメルフィス姫。
やばい!やばい!!やばい!!!
ジュリエッタ、そんなやばい人なの?
敵に回して私、大丈夫な訳ないじゃん!
「ジュリエッタに仕掛けた時間を止めるトラップは1か月ほど効力があるそうなので・・・・何処にいきましょうか?」
とメルフィス姫。
「ここは南にいきましょう!」
と私はメルフィス姫に提案する。
「魔族がいる森に向かうのですか?」
とメルフィス姫
メルフィス姫には悪いが私がこの世界にいるミッションは魔王退治。
魔王さえ退治してしまえば私のミッションは完了!
この世界ともお別れ!ジュリエッタから解放される!
ただ、その事はメルフィス姫に露見しないように・・・・邪魔されると・・・なので
「ビザンテ帝国にある他の町を目指したのでは私達、追っ手に捕まってしまいます。魔族のいる森を通り地図に載っていない他の街を目指しましょう。」
しれっと答える私。
私の悪だくみ、”魔王退治のミッション終了、転移終了”には気付かないようで、メルフィス姫はジュリエッタから解放されて冒険ができるのが楽しみのようだ。
ジュリエッタの面倒は同じ世界の方々が面倒を見てください。よろしくお願いメルフィス姫!
因みにメルフィスがご機嫌な理由は・・・・
(上手く、ゆきち様を乗せる事が出来ました!私は街から出たことがないので楽しみだわ!ジュリエッタに見つかっても大丈夫!私は体を動かせないので、すべて勇者・ゆきち様が行ったことですもの!)
お互い心の中が知ることなく、ウキウキ気分で、冒険の世界に足を踏み出した。
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太陽が昇ると都市メルフィスは大騒ぎ
姫がいなくなった!
しかも頼りになるジュリエッタの部屋には魔法が掛かっていて誰も入れず又、ジュリエッタも部屋から出てこない・・・・。
メルフィス姫がいなくなった知らせは帝国内の各都市に極秘裏に発信された。
最強の戦士であり魔王討伐の英雄であるメルフィス姫がいなくなったのは帝国と周辺国家との軍事バランスを崩す為だ。
しかし3日、4日経っても足取りは一切つかめない。
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その中、ビザンテ帝国内にある廃城となった建物の一室。
床に文字を書き、呪文を唱える一人の人物。
横に縛られてもがいている人が見える。女性だろうか?
文字より黒い煙が上がり、一匹の角の生えた生き物~悪魔~が現れた。
悪魔に向かい呪文を唱えた人物が
「我に力を~」
と問いかける。
現れた悪魔は呪文を唱えた人物を見下ろし、
「代償は?」
と低い声でしゃべる。
呪文を唱えた人物は・・・縛られている女性を悪魔に差し出す。
「この女を憑代にしていただき、うまくいった際はメルフィス姫の魂を差し出します。」
「・・・・・・」
悪魔は少し考えているのか動かなかった・・・・が、
縛られた女性の額に手を載せる。
「ムゴムゴーーーーーー」
女性は痛みにのたうち回る。そして力尽きたのか静かになった。
そして立ち上がると縛られていたロープを外し・・・・
「汝の願いを聞き入れよう」
と悪魔の声を女性が発する、
女性の表情の無い顔に背筋が寒くなる術者
(何度やっても気持ちが良いものではないな・・・・)
そう思いながら悪魔に伝える。
メルフィス姫のいる場所と捕まえる手段を・・・・。
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又、別の所でも・・・・・。
「俺らと手を組んで勇者を討伐しよう」
大きな体を動かし、小さい人物に語り掛ける。
「すまない・・・・その提案に乗ることはできない」
その人物は答える。
「なぜだ」
「我らにはもう勇者と対峙する気力がないからだ・・・・」
「魔族の長老ともあろうものがなんと情けないことを・・・・」
長老と呼ばれた魔人は大きな体をした龍を見上げる。
「龍族も対峙するなど馬鹿な考えを改めたほうがよい、我らのようになるぞ」
長老の返事に龍は大きな羽をはばたかせ、
「魔族も弱くなったものよ、だから3年前負けたのだ」
「違うぞ龍族のものよ、我らは太古の昔よりこの森より出ることは禁止とされていた。それを破り触れてはいけないものに手を出した。長老として王を止められなかった。その結果だ。」
「その結果が10万を超えていた魔族が1000人を切ったか。残っているのは子供ばかり・・・・・住んでいた都市も捨て、森の中で隠れて暮らす・・・・悔しくはないのか?」
魔族の長老は笑いながら・・・
「悔しい・・・ああ悔しい・・・勇者ではなく自分自身・・・王の侵攻しようとする野心を止められられず、魔族を絶滅の危機に追いやってしまった自分自身の不甲斐なさを・・・。」
「・・・・龍族は違う!我らの力を見せてくれよう!」
そう叫ぶと龍は上空に浮かびあがり・・・どこかに飛んで行った・・・。
「3年前まではお前のように盛んな若者がいたが・・・全員死んだ。あの圧倒的な力の前に我々は無力だった。龍族もそうなるのか・・・・」
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