第6話 ジュリエッタの特訓
早速ジュリエッタとの特訓が始まった。
まずは姿勢矯正から・・・となったが特にスパルタはなく、ジュリエッタは優しく姿勢について指導してくれる。
床に線を引き(ジュリエッタが指先を動かすと床に線が浮かび上がった・・・魔法って便利!)頭の上に本を載せてあるく・・・・
モデルさんが練習するアレだ・・・。
「ねえ、メルフィス姫、ジュリエッタって良い子じゃない」
と脳内で問いかけると・・・
「え?」
とメルフィス姫の裏返った声。
「ゆきち様、ジュリエッタは優れた魔術師で、世界最恐です。」
「最恐?最強ではなく?」
「はい、魔術は確かに最強です。一人で魔王軍を1/3迄減らした程です。・・・外見の見栄えとは違い性格は最恐です。外見は幼く見えますが私より年上で何歳かは分かりません。」
かわいい外見をしているのに・・・
「そもそも外見も本物か分かりません。魔術で偽装・・・・」
突然、メルフィス姫の声が止まった。
不機嫌そうな顔をしたジュリエッタが私を見ている。
椅子に座り、侍女のアリスに準備してもらったカップで何か飲んでいる。
「メルフィス姫はお喋りが過ぎるようですね・・・・ゆきち様が集中できないのでしばらく眠っていてもらいましょうか?」
ジュリエッタが右手を胸に当てると
「う・・・・ぐ・・・・」
と苦しそうなメルフィス姫の声
ジュリエッタが無表情のまま胸に当てた右手を横にずらすと・・・・
「ぎゃ~~~~~~~~」
メルフィス姫の悲鳴が脳内に響き渡る、断末魔のような悲鳴が・・・・。
「さあ、ゆきち様、メルフィス姫には”お休み頂いた”ので続きの鍛錬をしましょう!」
何事もなかったように笑顔のジュリエッタ。
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「ねえジュリエッタ、ずいぶんと時間がたったのですが・・・・休憩しませんか?」
床に引かれたラインの上を何百回歩いただろうか?
慣れない姿勢で背中も足もパンパン、座りたい・・・・。
私が提案すると・・・・ジュリエッタは何も言わすに右手の指先を波のように動かす
すると私の体が光りに包まれる・・・・。
「ヒットポイントは回復させました、歩行の練習を続けてください。」
とジュリエッタ。
「お腹がすいたのだけれど・・・・」
と私。
「必要ありません。」
「お腹が空いた感覚が・・・・」
「大丈夫です。」
「大丈夫ではなく!お腹が空いた!足も痛いし!疲れたし休憩しましょう!」
と私。
ジュリエッタは大きなため息をつくと・・・
「ゆきち様が、短時間でレベルを上げたいとおっしゃったので”私は自分の時間を犠牲にして付きっ切りで忙しい中協力させて頂いております”これ以上何がお望みですか?」
といい、カップに口をつけて飲み物を飲んでいる。目はそらさずに赤い瞳は私を見つめている。
「嫌なら早く覚えてください」
というと隣にあるケーキに口をつけて・・・
「おいしい♪」
そんなジュリエッタを私は睨む。
ジュリエッタはため息をつくと・・・・
「ゆきち様、動きが止まっていますよ!」
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あれから何十時間いや何百時間・・・何日経っただろうか・・・・
ありえないほどの空腹にのどの渇き、睡魔、疲労感などにおそわれながら練習をする私。
今は挨拶の練習・・・・。頭の上に本を置きスカートを持ち上げて会釈・・・・
1000を超えたあたりから数えるのをあきらめる程回数を重ねて同じ動作をしているが・・・・ジュリエッタの合格はもらえていない。
ヒットポイントがなくなり私が倒れる寸前になるとジュリエッタは面倒くさそうに指先を動かし私の体力を回復させてくれる。
ジュリエッタも寝ていないはずだが・・・・今は本を読んで飲み物を飲みくつろいでいる・・・。
「ゆきち様、そんなペースではいつまで経っても特訓は終わりませんよ!」
とジュリエッタは久しぶりに顔を上げると赤い瞳で私を見ながらけしかける。
「ジュリエッタ様、私は限界です・・・・食事を・・・睡眠を・・・・休憩を・・・・」
と私がのどの渇きもあり力なく言葉を発するが・・・・
「ゆきち様は我々の希望で憧れである勇者様です。その勇者様ともあろうお方がなんという情けないことを・・・・まだ姿勢もマスターしていません。」
といい、やめる気配は無い。
ジュリエッタも食べてはいるが私に見せつけるように食べているデザートと飲み物のみ、食事はちゃんととっていないし、寝ていないし・・・ジュリエッタの体はどうなっているのだろうか?
「ジュリエッタ様もお疲れでしょう。休憩を・・・・」
と言いかけた所でジュリエッタは私の声を遮るように
「私は”忙しい中、付きっ切りで協力させて頂いております”」
と言い赤い瞳で私を睨む・・・。
もう何十回も同じことを繰り返している。
助けを求めてメルフィス姫を呼ぶが・・・・断末魔の悲鳴を聞いた後から返事はない・・・・。
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何十日?何週間?ぶりの食事だろうか・・・。
私は姿勢矯正を文字通り不眠不休で特訓しマスターした。
次は絢爛豪華なものがテーブルの上に並べられている。
食事作法とのこと。
この世界の食事は現代世界の洋食・・・といった感じでフォークとナイフ的なものを使って食事をする。
ジュリエッタから・・・・
「ゆきち様の世界では分かりませんが・・・・この世界では・・・」
といい、私の目の前に右手を出して指を1本立てる
「1:音を立てて食事をしない」
指を2本、3本と増やしながら
「2:左手にナイフ、右手はフォークとスプーン)」・・・・⇒前の世界と違う
「3:お皿には触らない」
「4:食事は侍女であるアリスが運んできますので順番に優雅に食事をしてください。」
私はジュリエッタの指をみながら
(へえ、2番は人差し指と中指の”Vサイン”ではなく、親指と人差し指なんだ・・・)
と思っていると・・・・
「聞いてますか!ゆきち様」
ジュリエッタが私の顔を覗き込んでいる。
説明が終わり、アリスによって食事が運ばれてくると・・・
いい匂いに、頭がフラフラして空腹に耐えられず・・・・。
前のめりになり、口に放り込む・・・
パン!パン!と手を叩く音。私の手が魔法で止められ動かなくなる。
「礼儀作法の練習ですよ。」
とジュリエッタより冷たい視線。
「空腹感に耐えられませんでして・・・」
私はと肩をつぼめて小さくなる。
ジュリエッタは「パチン」と指を弾く・・・。
すると・・・何と言う事でしょう!私の中にあった空腹感を通り越した飢餓感はなくなり・・・・手も自由になる。
「ジュリエッタ様、ありがとうございます!」
私は冷静さを取り戻し・・・作法に注意しながら落ち着いて食事ができる。
異世界でも味付けに問題無し!全てがおいしい!!。食が進みます!
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ジュリエッタより食事が運ばれてきた際等の注意点を聞きながら間違いがあるとやり直し・・・を繰り返すと・・・。
生まれながらの性分で食事を残すことできず食べてはいるが・・・・空腹の後は満腹地獄!
その後、何度ものやり直しで・・・流石にこれ以上は食べられない。
「ジュリエッタ様、満腹で・・・・」
とジュリエッタに訴える。
ジュリエッタは
「ふう」
とため息をつき指を弾く・・・。
「これで大丈夫です。最初から食事の作法の確認をしましょう。」
今度は満腹中枢を止めたのか満腹感がなくなったが・・・・
お腹がありえないほど膨らんでいる。これは消してくれないらしい・・・。
食べさせられる状態!私はフォアグラのアヒルだ。
そんなヘロヘロな私と違い、ジュリエッタは落ち着いたもので、疲れた様子は一切ない。
「ジュリエッタ様も私と一緒に不眠不休で特訓に付き合っていただきましたが大丈夫でしたか?」
と隣で食事をとっているジュリエッタに話しかける。
「私は大丈夫です。」
アリスに入れてもらったカップを口につけながらさらっとジュリエッタは答えた
「ジュリエッタ様だって空腹や睡魔、疲労感などあると思うのですが・・・・」
「大丈夫です。私の空腹や睡魔、疲労感などはゆきち様に”下げ渡し”いや”譲渡”しましたので・・・」
「え・・・・譲渡?」
私は突如飛び出した不思議ワードについて質問する。
「はい、主従契約により、私の能力などをゆきち様に渡すことができるのです。」
と無表情で答えるジュリエッタ
「それでジュリエッタの睡魔や空腹感、疲労感を私に押し付けたと・・・・。」
「ゆきち様!”押しつけ”では無いです!”ゆきち様の特訓を効率よく行う為、仕方なく譲渡”です。」
とジュリエッタ。
「そのお話では・・・・私に礼儀作法などの能力を譲ってくれれば特訓などせずとも私がマスターできたのでは・・・・」
「まあそうですね」
と笑顔のジュリエッタ。
可愛い顔して恐ろしいことを”しれっと”答えてくれる。
「特訓は無意味だった?」
と私。
「違います。」
とジュリエッタ。
「特殊能力は譲渡できませんし、魂に色々と刻むこともできません!それでは意味がないのです。」
「意味?」
「はい、意味がありません!」
「ジュリエッタ様、意味とは・・・」
「我々の希望で憧れでもある勇者ゆきち様がこんな些細なことを気にされるとは・・・・大丈夫です!意味など知る必要もありません!大丈夫です!」
と断言するジュリエッタ。
大丈夫が2回続いたよ・・・・。
ですよね~その答えになると思っていました!
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「さあ、ゆきち様、食事がすんだら運動です。」
といい、ジュリエッタが立ち上がる。
「ジュリエッタ様、満腹になりまして・・・動きにくいですし、睡魔も・・・・」
と私。
ジュリエッタは”めんどくせー”といった感じで胸の高さまで手をあげ、「パチン」と指を弾く・・・・。
まあ!なんということでしょう!少し前は満腹で膨らんだ私のお腹はあっという間に引っ込み、今は空腹感を通り越した飢餓感に襲われる。
こんなビフォーアフターは要らない!
「さあ、次は走りましょうか?姿勢を意識しながら5日程走って次はダンスでもいかがでしょうか?」
「え・・・5日?」
「はい、5日では少なかったですか?では20日にしましょう!」
しれっとジュリエッタ。
・・・・4倍かよ!逆らうとカウントが増えるようです。
ジュリエッタが最恐と言われることがわかってきました。(魂で・・・)
外見にとらわれてはいけない!
ジュリエッタ!ツンデレのツンはそれぐらいで・・・・デレをください!
このままだと私、Mに目覚めてしまいます・・・。
ぴろりーん
勇者ゆきちのレベルが2になった。
ヒットポイントが上がった。
姿勢が良くなった。
礼儀作法を覚えた。
飢餓感・睡魔等苦しみへの耐性が上がった。
絶対服従(私<ジュリエッタ)を覚え、ジュリエッタ様と呼ぶようになった。
皆さんも契約終結の際はリスク等考えて良く内容を確認して契約してください
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