第4話 魔法と冒険の世界

「この世界について聞いてもよいかしら?」

私は脳内でメルフィス姫に問いかける。


「私で分かる範囲であればお答えしますが・・・・私は幼い頃より病弱で、最近まで城から出たことはなく・・・。」

とメルフィス姫。


「あんなにレベルが高いのに?」

と私。


「・・・・・・・」

メルフィス姫は無言になる。


(聞いてないけなかったかな?言えない事情でもあるのだろう)


「・・・・これからどうしましょうか?」

と話題を変えるようにメルフィス姫から一言。


わたしは考える・・・・。

最終目的は魔王退治となればもっと強くなっていないと・・・・とすれば・・・。


「レベルを上げるにはどうすれば良いの?」


「体を鍛える。でしょうか?」

なるほど・・・・筋トレをして体力アップか・・・・。読んだ小説で部屋に籠って筋肉トレーニングをやっていたな~シックスパッドができるまで・・・

因みに私は筋肉トレーニングなどが嫌いだ。歯を食いしばるとか苦痛に耐えられない!


扉をノックする音。


「どうぞ」

と声をかける。

静かに扉が開き、沈んだ瞳のジュリエッタが入ってきた。


「ゆきち様、騙されないように・・・・」

とメルフィス姫の声がする。


ジュリエッタが小走りで私の前まで来ると

「勇者・ゆきち様、私の力が至らないばかりに失礼いたしました。」

と膝を着いた。


「私が気を使い、お守りしなければいけなかったのに・・・・至らないばかりに・・・・」

と涙声で謝罪をする。

赤い瞳から大粒の涙が零れ落ちて・・・・


「いえいえ、私の能力が低い理由ですから・・・・気にしないで・・・」

と罪悪感に苛まれる私、そしてジュリエッタの背中をさする。


そんなジュリエッタから

「何かお役に立てることがありませんか?」

とか細い声。

私は即答できずに考えていると・・・


「私は勇者様のお役に立てないダメな魔導士でしょうか?」

といい、今度は床に顔をつけて泣いている。


「メルフィス姫・・・どうしよう!」

脳内でメルフィス姫に問いかけるが・・・返事なし。


こういう時はどうしよう!

ゲームなら選択肢が出てくるはずだが・・・・

出てこない。

私は自称灰色の脳細胞で考える・・・・そうだ!色々とジュリエッタに聞いてみよう。


「この世界について聞いてもよいかしら?」

私の問いかけにジュリエッタは涙を手で払うと顔を上げる・・・・


「私でよろしければ・・・・何から聞きたいですか?」


「まずは・・・・この世界について・・・・」


「ゆきち様の世界は分かりませんがこの世界には知識を持って集団生活をする生物が大きく分けると2種類います。

 1:私達のように聖なる力を借りることで魔法が使える種族

 2:魔族のように聖なる力は使えないが異なる力により魔法が使える種族」


「聖なる力?」


「はい、ゆきち様も感じているかと思いますが、私達周辺には力を貸してくれる肉体を持たない力が多数浮遊しています。」


「感じる?」


「はい、そこにも、そこにも、あちらにも!」

ジュリエッタは飛び跳ねるようなしぐさをしながら空中を指さす。

私はジュリエッタが指を挿す方向を見回すが・・・・私には何も見えない。


「ここにも」

ジュリエッタが両手のひらを上に向けて何かをつかむような仕草をする。


「勇者様にご挨拶をしましょう」

と言い息を手に吹きかけそして両手を私に差し出す。

メルフィス姫の方が背が大きいのでジュリエッタの手をのぞき込むような姿勢になる。


「はい、これが”聖なる力”です。キラキラした赤色でキレイでしょう!」

私はジュリエッタの手をのぞき込むが・・・・・何も見えない。

ジュリエッタは不思議そうな顔しながら上目遣いで私の顔をのぞき込む。

かわいい!!!

ではなく!私は咳払いをして考え込む・・・・。

何度ジュリエッタの手を見ても・・・・何かあるようにはやはり見えない・・・・・


「メルフィス姫・・・・」


「ゆきち様、どうしました?」


「メルフィス姫には見えるの?


「なにが?」


「力を貸してくれる”聖なる力”」


「はい?みえますよ、透明ですが赤色で徐々に紫色に変わろうとしています、ゆきち様に触ってほしいみたいですよ!」

とメルフィス姫


「・・・・・・」


「え?ゆきち様は感じないのですか?」

・・・・どうしよう!何も見えない!感じない!

そういえば、昔話にあったな・・・・馬鹿には見えない服・・・。

ここは見えるふりをするべきか見えないことを素直に言うべきか?


回答A:聖なる力が素直に見えないと言えば・・・・

「聖なる力が勇者様には見えない!?本当に勇者様?もしかして魔王軍の手下かも⇒勇者の証拠を見せてください⇒弱いから見せられない&瞬殺されてしまう⇒BAD END」


回答B:嘘をついて見えるという

「さすが勇者様 ⇒嘘を嘘で塗り固める⇒ぼろがでてばれたら・・・・⇒本当に勇者様?もしかして魔王軍の手下かも⇒勇者の証拠を見せてください⇒弱いから見せられない&瞬殺されてしまう⇒BAD END」


まずいぞ・・・・上のA、Bの選択肢どちらを選んでもBAD ENDとなる展開しか考えられない・・・・。

そうだ!これでどうだろう!


「よろしくね! 聖なる力さん!」

とまえかがみになりジュリエッタの手に向かい話しかける。

手の先にジュリエッタの笑顔が見える。


(ごまかせた!)

私は背筋を伸ばして咳払いをすると


「これが”聖なる力”・・・私達に力を貸してくれるのですね」

といい、胸の前で腕を組み、考えるような素振りを見せる。


(どう、この判断!これなら見えたとも見えないとも言ってない、第3の答え)


「はい我々はこの聖なる力に力を借りることで魔法が使えます。」


「この聖なる力を使って魔法?」


「はい、魔法が使えます。」

ジュリエッタは誇らしげに教えてくれる。

私には見る事も感じることもできないが・・・・まあそのうちに見えて感じるようになるでしょう!


「続いて魔族とは?」

「魔族は我々エルフ族とは違います。ただ、我々もよく知りません。異世界よりこの世界の術者によって召喚されると聞いています。ただ、召喚された魔族はこの世界に肉体を持たない為、召喚されただけでは何もできません。生贄に憑依することで力を使えるようになります。」


「勇者様が戦う魔王は魔族の王様となります。3年前にメルフィス姫に転生した女神様が討伐したのですが・・・・。魔族の王は滅びることがありません。肉体がなくなっても魂が残っていて次の世代に転生します。その転生した若い王が我々に対し戦いを仕掛ける準備をしているようです。又、魔族は自分の体内より精製する力で魔法を使います、我々のように聖なる力が見えたり、その力を使うことは出来ないようです。」


「・・・・・」


(聖なる力が見えない&感じないと魔族決定!だったんじゃないの!!危なかった!第三の選択肢を選んだ私、良くやった!)


「じゃあマジックポイントとは?」


「聖なる力を集めるて使うことができる数値です。勇者様の周りには多くの力が集まっていますので強力な魔法が使えるはずです」


(そうなんだ~マジックポイント”0”だから魔法が使えず失格の烙印を押されるわけではないのね・・・。安心した。)


「ヒットポイントとは?」


「肉体的な強さもありますが精神的な強さも大きく係わります。」


「精神的な強さ?」


「はい、例えば2人走っていて同時に転び双方に同じ痛みがあったとしてAは立ち上がり走り続け、Bは痛みで動けない。A、Bとも肉体に負ったダメージは一緒ですが結果に違いが出ています。AとBとの違いは心の強さつまり精神的な部分、精神力です」


「ですので痛みのダメージが30として、ヒットポイントは B<30<A となります。」


「因みにヒットポイント5だと?」


「5?そのような方にお会いしたことがありませんが・・・・普通の方でも50はあるので子供か・・・・精神が恐ろしいほど弱い方でしょうか?」


(が~~~~~~~~~ん)

勇者ゆきちはジュリエッタから痛恨の一言をもらう。

ゆきちは力なく床に倒れる。


「もうやめて!私のライフはゼロよ~」


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