第3話 テイク2

私が力なく床に座り込んでいると


”ドン!”


と勢い良く扉が開いた。

扉を見ると全身を足首まで白く長いローブをまとい、頭にはフードを被っている人物が立っている。

そして私を見ると歩いてくる。

歩きながらアリスに向かい、


「姫様とお話しがあります。下がりなさい」

とかわいい声で指示

少女?にアリスは頷くと扉から退出していった。


床に座っている私の近くまでくると少女の顔が見える

フードから覗く髪の毛は紫色、瞳は赤、赤い唇が目立つ女性、体形はローブで分からないが声や顔は幼い感じがする。


「初めまして、私、ジュリエッタと申します。」

と手を差し出す。

私はジュリエッタの手につかまり立ち上がる。

ジュリエッタの身長はメルフィス姫より小さい。


「ゆきち様、外見に騙されてはいけません」

とメルフィス姫の声


私は立ち上がり・・・。


「私は・・・・」

と言いかけた所でジュリエッタが人差し指を立てて私の唇に触れた。これ以上話すな・・・というように。

そしてジュリエッタは赤い瞳を大きく開くと・・・・立っている私の周りを観察しながら回ると・・・・


「勇者・ゆきち、この世界の風習についてご存じないご様子・・・・困ったことにメルフィス姫は説明しませんでしたか?」

といい、いつのまにか持っていた杖で私の背中を突いた。


「勇者・ゆきち、背中を丸めてはいけません!勇者・ゆきちの外見はメルフィス姫なのですからそのような姿勢ではいけません!」

次にジュリエッタはつえで私の顎を持ち上げ、


「姫なのですから簡単に頭を下げてはいけません!背筋を伸ばして!礼儀作法を私が伝授してあげましょう!」

とジュリエッタ。


「勇者・ゆきち様安心してください。私はスパルタで体に教え込むような野暮な真似はしません、痛みは忘れますし!」

とジュリエッタは口角を上げて微笑んでいるようだが赤い瞳は真剣・・・・


私は力なくベットに倒れる。胃痛も始まり、吐き気が・・・・しかもなんか体が痺れて動かない。

早速、特殊能力発動と思ったが・・・・。


「勇者・ゆきち様、大変です!」

とメルフィス姫の声・・・・


「ヒットポイントが、ありません!」


「え・・・・」

だんだんと目の前が真っ白になり・・・・・意識を失った。


GAME OVER 勇者ゆきちは侍女に毒を盛られ殺されてしまいました。


私は意識が戻ると又、白い空間・・・・

なんか慣れてきましたこの感じ・・・・

作者の文章能力の無さにも・・・。


早速、目の前に狸のぬいぐるみが落ちている。

私は勢いよくぬいぐるみを蹴り飛ばす!


「何をする?ゆきち・・・もう魔王を倒したのか?早いな・・・・」

と寝起きなのだろうか?のんきな狸の声。


「こら!狸!メルフィス姫に転生したら能力が異常に低く、最強のはずが赤子以下まで弱くなっていてしかも毒殺されたぞ!」

と再度ぬいぐるみを拾ってこんどは投げ飛ばす!


「ゆきちよ・・・おかしなことを言う。異世界にいってもゆきちの能力はそのままに決まっているだろう」


「は?」

と私。


「ゆきちはメルフィス姫ができた居合切りができるのか?魔法が唱えられるのか?」


「・・・・・できません」


「だろ、じゃあしょうがないね~猫に小判、外見の身体能力が高くても中身の転生者の能力が・・・・赤子以下では!」

と狸の笑い声。


私は狸のぬいぐるみを再度蹴飛ばす。


「何をする!」

と狸。


「何をする!じゃあない!あんな低い能力でどうやって魔王をやっつける?難関度が高すぎる!難度SS?無理ゲームにもほどがある!」


「あんな低い能力(笑)ってゆきち本来の能力でしょう?嫌なら努力してあげて!」

と突き放すような狸の声。


私が読んだ異世界転移する小説の中に、転移前の弱さのみが引き継がれるものは無い!


「私だけが使える特殊な能力とか無いの!右手で魔法を打ち消すとか・・・」

狸に説明を求める私。


「ゆきちが今まで出来たことは出来るけど・・・・できないことは転移しても出来ないよ!まあ、運がよければ何度でも生き返ることができるから・・・がんばってね~私は忙しいからこの辺で~」

と明るい狸の声。


「コラ待て、まだ話がある!」

と狸を捕まえようとするが・・・狸のぬいぐるみはすでに消えていて・・・・私は意識を失った・・・。



ベットの中で寝返りを打つ。

窓から差し込む光。

明るさで目が覚めた。

私は・・・・・心の中にいるメルフィス姫に声をかける。


「メルフィス姫、あの後どうなったの?」


「勇者・ゆきち様、おかえりなさい。ジュリエッタが解毒と蘇生の魔法を使おうとしたのですがヒットポイントが少なく、間に合いませんでした。」


「ですよね~」

と私


「ただ、勇者様の存在が消える時、体から発した強烈な光が周囲を飲み込み、その光は町全体を包むと毒を盛った侍女アリスの体や兵士、町人の中から魔族が使う呪いである黒い霧が噴き出しました。」


「どうやら魔族の呪いによって人々が操られていたようです」


「じゃあ、アリスさんは?」


「大丈夫です。今、別の部屋で休んでいます。」


「よかった・・・・」

と私。


「所で・・・・私の名前は足立夕貴(あだち・ゆうき)15歳の女子。メルフィス姫はなぜ私のことを「ゆきち」と呼ぶの?私は今まで一度も『ゆきち』で呼ばれたことが無いのですが・・・」


「さあ、私も女神様より、「ゆきち」を頼む・・・と言われたので・・・勇者ゆきち様と呼ばせていただいたのですが・・・・」


赤子より低い能力で勇者とか呼ばれる私・・・・不相応にもほどがある!


「私は自分を勇者とは思えないし・・・勇者を外して夕貴(ゆうき)と呼んでいただけますか?」

そんな私からの提案だったがメルフィス姫からは・・・・


「女神様のご命令ですので・・・お名前は変更できません。ただ、勇者を外してゆきち様と呼ばせて頂きます。」


残念!”ゆきち”から名前の変更が出来ないとは・・・この魔法と冒険の世界・・・・とんだ糞ゲームだ。

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