第7話 揺れる真名

そんな程度。いま、そんな程度と言ったか。


「学校が行けないとか、そんな程度のことで、文字を書くのをあきらめるのか」


ばかにされている。

でも、なぜが、わるい気はしなかった。ちょっと気持ちいいぐらい。


「頭のよさを、勝手に自分で閉じ込めてるんだな、おまえは」


「ちょっと。おまえって呼ばないでよ」


「名前を知らない」


「いや、カルテに書いてあったでしょ」


「しらん。教えろ」


「不愉快ね」


不思議。

全然不愉快じゃない。

ばかにされてるのに。


「いいわ。おしえてあげる。私の名前は」


「名前は?」


「名前」


言おうとした。

真名。

声が。

出ない。

かわりに、涙が。


「お前をいちばん人扱いしてないのは、お前自身だ」


「なによ。わかったようなことを」


「いや、分かる。俺もそうだ」


「は?」

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