プロローグ 2
「来たか」
倉庫の影から、一台のバイクが現れ、優鬼の目の前で停まった。
「うわ!」
「あっぶな!」
由奈らが反射的に離れる中、
「久しぶりだな、郷司」
優鬼は微動だにせず、一年ぶりに再会した幼馴染に話しかける。
「おう優鬼、俺がいねぇ間に偉くなったみてぇじゃねぇか」
バイクを降り優鬼に近づき、嫌味を口にする彼が嶺郷司である。
優鬼と同い歳の18なのだが、その事を知らなければ誰が見ても18歳と言えない人相だ。
優鬼は身長がそこまで高いわけではない。それでも170以上はあるが、そんな優鬼を軽々見下ろせる郷司は遠目に見ても高身長なのがわかる。
鍛え抜かれた体躯が相まって、郷司の威圧感は凄まじいものだ。
「郷司、お前のいない間に2代目になったのは、悪いと思っている、、、だが総長不在のまま、愚麗賦をおいておく事はできなかったんだ、、、わかってくれ。」
「お前の言いてぇ事はよくわかるぜ ならおれが出てきたんだから2代目は俺に譲れ」
「今更それはできねえ」
「なんだとコラ?」
2人が距離を詰める。
「1年前の続き、やるか?」
まさに一触即発の状態になるが、、、
「はい!ストーーップ!お前ら落ち着けって」
2人の間に竜司が割ってはいり、
「また2人仲良くパクられんぞ、仲悪すぎやでお前ら!」
「竜さん、あんたOBになったんだろ?2代目の話に首突っ込まんでくださいよ」
「おい!郷司!誰に口聞いてんだ!竜司さんだぞ!」
「かまへん優鬼ちゃん落ち着きて ほんでや郷ちゃん、おれな?関係ない事なんいや」
「どうゆう事っすか竜さん」
「いや、俺な、郷ちゃんはてっきり満期なる思って、翔ちゃんと一緒に優鬼ちゃんの2代目を後押ししてん、すまん!!」
「そんなのしらねぇっすよ竜さん」
「ええやんけ郷ちゃん俺の顔たててくれや」
「竜さんの頼みでもそれはきけねぇっすよ」
竜司は諦めた顔をし、
「うーん、よしわかった!もうめんどくさいから今からお前ら勝負せぇや」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに郷司の口元が笑い
「上等だよ!」
「竜司さん、マジですか、、、」
「しゃーないやんけ優鬼ちゃん こないせんと郷ちゃんなっとくせえへんしな?」
「わかりました竜司さん」
「よっしゃ!ほな勝負やけど、何にしよかなぁー、1年前に喧嘩してパクられたんやろ?せやから喧嘩以外がええねんけど、、、」
竜司が顎を触りながら勝負の内容を考えていると、
「チキンレースでいいじゃねぇか、場所も昔を思い出して丁度いいしな」
郷司がそれを提案すると、竜司が鬼のような形相で郷司の胸ぐらを掴み
「おいコラお前、それほんまにゆうとんのけ、ぁん? 忍がなんでおらんなったか知らんとはゆわさんぞ?」
「竜司さん落ち着いてくださいよ!おれは構わないです」
「お、おう、すまんすまん。ほなチキンレースにするか、、、でもおまえらちゃんとギリギリでとまれよ?このレース、ギリギリでとまるやつやからな?」
「わかってますよ竜司さん」
「ほんまにやで?絶対とまれよ?フリちゃうからな?飛び込んだらほんまにどつくからな?」
「くどいっすよ竜さん」
ニヤつきながら返答する二人に竜司は、更に不安を募らせる。
「せや!」
なにかを閃いた竜司は3人の会話を心配そうに見ているメンバーの中から由奈を見つけ
「おー由奈くん!こっちこいや」
「はっはい!!」
すぐさま駆け寄る由奈にブイを渡し
「自分泳げたやろ、念のため二人がもし海に突っ込んだらすぐにこれ持って助けにいけ」
「まじですか!!??」
「おうマジや!」
OBの竜司の言う事に従う事しかできない由奈は泣く泣く、承諾した。
波止場でバイクに跨る2人を月明かりが照らす。
夜が深くなったが、満月が手伝い2台のバイクが渋く輝く。
「よっしゃ!お前ら!用意ええか?」
バイクのエンジンをかけた2人に竜司が最終確認をする。
「おい、優鬼、こえーなら今からでもやめていいんだぜ?」
「いってろばーか」
「ほな始めるで」
竜司が2人の間に立ち、カウントダウンを始める
「さーん」
クラッチを握り、ギアを一速に入れ、ガチャっという音と共にバイクが少し揺れる。
「にーぃ」
アクセルを回しバイクのエンジンが唸る
「いぃーちっ!」
深夜の波止場に爆音が響き渡り、
「ぜろぉ!!」
フルスロットルでクラッチを離し、ウイリーしそうになる車体を前傾姿勢になり抑え猛スピードで2人は走り出す。
「おまえらー!!ちゃんととまれよー!!」
後ろで叫ぶ竜司の声が聞こえた2人は
「ちゃんととまれだとよ優鬼 そろそろアクセル戻してもいいんだぜ?」
「勝手に言ってろ 郷司こそせっかくのバイクが海の藻屑になっちまうぞ」
「関係ねぇよっ!」
「ふっ、、、」
加速する2人を見ている竜司は、頭を抱え、
「めっちゃ加速してくやんけ、、、んまにあいつら全然ゆう事聞かへんなぁ、、、後でげんこつやな」
睨み合いながらギアを上げ更に加速してしていく優鬼と郷司はそのまま堤防の端まで到達するが、一切ブレーキを掛けず、、、
「飛んだ!?」
目の前で起きた出来事をそのまま口に出してしまった由奈だったが少し経ち違和感を感じた。
「あれ?優鬼さん?郷司さん?」
音が聴こえないのだ。
確かにバイクが海に落ちるとエンジンの音はなくなるだろうが、それ以前にバイクが海に落ちる音が無かったのだ。
その違和感は離れていた竜司も気付いた。
「あの時と一緒やないか、、、おお、ちょいお前バイクかりんぞ」
竜司は目に付いたバイクを強引に借り、端に向かいながら由奈に叫ぶ。
「由奈くん!!!2人はおるか!?」
なにが起きたか理解できてない由奈だったが、竜司の声に反応し、慌てて2人の落ちたであろう場所めがけてダイブしようとするが、、、
「あかん!!由奈くん!!」
竜司が叫んだ時には由奈は堤防の角を踏み込み飛んでいた。
「くそ!あいつらは!?忍ん時と一緒やないか、、、」
端に到着した竜司は辺りを見渡すが3人の気配は無く波の音だけが聞こえていた。
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