第6話 代表作

 僕がポスターを担当した【劇団その日暮らし】の舞台、は【劇団その日暮らし】の代表作と呼ばれるほど大ヒットした・・・。

 追加公演に加え、地方公演も決まっていった。

そして・・・それと同時に「あの❝叫び❞のポスターを担当したのは誰?」と話題になった。

 僕が一躍時の人になるまでに時間はかからなかった。

一日一日ソイッターのフォロワーが万単位で増えていき、ダイレクトメッセージも何千通と届くようになっていた。


 大学の創作室の椅子に一人座る幸四郎、「はぁ」と大きくため息をついた。


幸四郎 「・・・なんかすごい事になっちゃったな・・・」


 そうつぶやく幸四郎の表情には迷いがあった・・・。

そんな幸四郎のいる創作室にまたしても、「急いでいます!」と言わんばかりの足音で近づいてくる人影があった。


莉子  「幸四郎!」


 創作室のドアを外れそうな勢いで開けたのは莉子だった。


莉子  「ちょっと!幸四郎!」

幸四郎 「・・・」


 幸四郎は莉子に背を向けた。


莉子  「ねぇ!幸四郎!」

幸四郎 「・・・」

莉子  「幸四郎!!」

幸四郎 「・・・」


 むっとした表情をする莉子、幸四郎の耳に顔を近づけ。


莉子  「・・・幸四郎、幸四郎!幸四郎!!幸四郎!!!」

幸四郎 「あー!もうなんだよ!」

莉子  「返事くらいしてくれたっていいじゃん!」

幸四郎 「考え事してたんだから、話しかけて来るなよ」

莉子  「なにその言い方!」

幸四郎 「・・・」

莉子  「あ、ってか!」


 莉子は机に置いてあった幸四郎の携帯を取り、電源を入れようとした・・・だが電源はつかなっかった。


莉子  「やっぱり!携帯の電源切ってる!どーりで連絡つかないわけだ!」

幸四郎 「・・・」

莉子  「なんで電源切ってるの?」

幸四郎 「別に・・・」

莉子  「充電が切れたわけじゃないよね?」

幸四郎 「・・・まぁそんなとこ」

莉子  「うそ、充電がなくなるほど携帯使わないくせに」

幸四郎 「わかってるなら聞くなよ」

莉子  「・・・ほんとどうしたの?」

幸四郎 「・・・ここ最近ずっと携帯が鳴りやまなくて、携帯の着信音が嫌になっ

    て電源切った」

莉子  「そんなにきてるの?」

幸四郎 「まぁ、ありがたいことかもしれないけど・・・ここ最近で周りが変わりす

    ぎて・・・」

莉子  「・・・うん」

幸四郎 「少し怖くなった・・・」

莉子  「そっか」

幸四郎 「これからどうなっていくのかちょっと不安」

莉子  「でもさ!それだけ幸四郎の描いた絵に人を引き付けるものがあったって

    事だよ」

幸四郎 「・・・」

莉子  「私は幸四郎の絵が、私だけじゃなく他の人がいいって思ってくれてるの

    が嬉しいよ、ほんと」

幸四郎 「うん」

莉子  「だから自信もって!」

幸四郎 「・・・ありがとう(ぼそっ)」


 僕のお礼を聞いた莉子は嬉しそうに微笑んだ。


 僕が【劇団その日暮らし】の舞台ポスターに描いた絵は、僕の代表作になり、それがきっかけに色々なデザインの仕事が舞い込んできた。

 そして、テレビでも取り上げてもらえるようになり、こう言われるようになった。

〖現代イケメン天才アーティスト〗と・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さようならになれてしまった、私たち。 さえ子 @saeko0629

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ