第4話 変化【後編】

幸四郎 「・・・え、なんだよこれ・・・」


 そう言って幸四郎の目の前に出された携帯の画面には驚くべき数のコメントが送られてきていた。


莉子  「見てみなよ!」


 そう言って莉子は幸四郎に携帯を渡そうとする。


幸四郎 「・・・見なくていいよ」


 そう言って携帯から目を背けて、絵を描き始める幸四郎。


莉子  「なんで見ないの?」

幸四郎 「・・・別に」

莉子  「少しくらい見てみなよ!」

幸四郎 「・・・」


 幸四郎は莉子に背中を向けて黙り込む、その様子に何かを察した莉子。


莉子  「こんな独創的な絵初めて見ました」

幸四郎 「・・・」

莉子  「独特な感じが新鮮!」

幸四郎 「・・・読まなくていいよ」

莉子  「現代のピカソみたいでなんかオシャレ」

幸四郎 「いいって・・・」

莉子  「それに写真に写ってる男の子イケメン過ぎる、美少年」

幸四郎 「もういいいって」

莉子  「アイドル級のビジュアル」

幸四郎 「莉子!」


 幸四郎の大きな声に読むのをやめる莉子。


幸四郎 「ほんと読まなくていいよ」

莉子  「・・・怖いんでしょ、良いことが書いてあれば、悪いことも書いてある」

幸四郎 「・・・」

莉子  「それは当たり前のことだからしょうがない、でもこれってチャンスだと思

    うよ、ほら」


 莉子はまた幸四郎に携帯の画面を突き付けた。

その画面には、幸四郎のアカウントへのダイレクトメッセージが表示されていた。


幸四郎 「舞台のポスター?」

莉子  「そう!『あなたの絵を見た時、今度やる舞台のイメージにピッタリだと思

    いました。もしよければ私たちの次回の舞台のポスターを描いていただけま

    せんか?大した額ではありませんが、できるだけのギャラは払いたいと思っ

    ています。もしよければご返信お願いします。【劇団その日暮らし】』その

    日暮らしって結構有名な劇団だよ、私でも知ってる」

幸四郎 「そうなのか・・・」

莉子  「こんな事めったにないよ!物は試しで一回やってみたら?それで合わなか

    ったらやめればいいんだし!」

幸四郎 「そうだな・・・」

莉子  「幸四郎はビビりすぎ!もっとチャレンジしてみなよ、才能あるんだかか

    ら!」

幸四郎 「才能なんてないよ」

莉子  「もー!ほんっっっとうにネガティブ!大丈夫!幼馴染のウチが言ってるん

    だから!」

幸四郎 「お前って本当に・・・」

莉子  「(遮る様に)何よ」

幸四郎 「・・・何でもない」

莉子  「そうと決まればさっそく返信しなきゃ、まったく三日間も放置しちゃっ

    て」


 そういうと莉子は【劇団その日暮らし】に返信をした。

ここから僕の人生は大きく変わっていった・・・。

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