第3話 変化【前編】

 あれから一週間、ソイッターは開いていない。

投稿はしてみたものの、正直自分の絵に自信なんかなかったし、女々しいかもしれないが投稿を見た人からの批判コメントに自分が耐えられるか不安でもあったからだ。


 誰もいない大学内の創作室・・・。

一人で絵を描くのがいつもの日常、カレンダーに目を移す。


幸四郎 「・・・明日は日曜日か・・・。」


 特に予定のない日曜日ほど「つまらない」ものはなかった。

朝起きて大体の事を済ませると、「午後は何しよう」と悩む。

 バイトは家で禁止されていてできないし、これと言った趣味もない。

絵を描くことも考えるけど、一日くらいは絵と離れる時間も必要かと思い絵は描かない。


 そうすると、僕には何もやることがない。


幸四郎 「どうしようかなぁ~」


 そうつぶやいて、ぼーっと外を眺めていると明らかに「急いでます」と言わんばかりの足音でこっちに近づいてくる気配がした。

 その勘は当たって、これでもかという勢いで創作室のドアが開いた。


 「幸四郎!」


 そう僕の名前を叫んだのはいつも通り幼馴染の莉子だった。


莉子  「幸四郎!幸四郎!」

幸四郎 「そんな何回も呼ばなくたって聞こえてるよ」

莉子  「やばいよ!」

幸四郎 「なにが?」

莉子  「ちゃんとソイッター確認してないの?!」

幸四郎 「え、見てない」

莉子  「え!いつから見てないの!?」

幸四郎 「え、あの日から一度も見てないよ」

莉子  「・・・」


 黙る莉子、そして幸四郎をじっと見る。


幸四郎 「え、何」

莉子  「・・・ばか(ぼそっ)」

幸四郎 「え?なに?」

莉子  「バカ野郎ーー!」

幸四郎 「うるさいな」

莉子  「なんで見てないのよ!すごい事になってるよ!」

幸四郎 「・・・すごい事?」

莉子  「幸四郎の携帯は?」

幸四郎 「あの机の上だけど・・・」


 幸四郎がそう言った瞬間に、莉子は急いで幸四郎の携帯を手に持った。


莉子  「開いていい?」

幸四郎 「いいけど・・・」


 そう言うと、莉子は幸四郎の携帯の電源を点けた。

相変わらず、携帯にはロックがかかってなかった。


莉子  「まだロックかけてないの」

幸四郎 「別にかける必要もないし」

莉子  「今のご時世危ないよ、何があるか分かんないんだから」

幸四郎 「みんな携帯に依存しすぎなんだよ」

莉子  「逆に幸四郎が興味がなさすぎるんだよ」

幸四郎 「異常だよ、もう携帯がないと生きていけない人が多すぎ・・・」

莉子  「(遮る様に)あ!これだよ!」


 そういうと莉子は幸四郎に携帯の画面を見せた。


幸四郎 「・・・え、なんだよこれ・・・」

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