第2話 錬金王の弟子候補

さて、薬草採取の為に森へやって来た。鑑定を発動させて、キョロキョロと周りを見渡す。すると、近くにプレイヤーが居る事に気付く。


たぶん、狐の獣人。


けど、その人の尻尾は9本。まるで、九尾みたい。


背中まで伸びる、透き通るような白銀の髪。落ち着いた雰囲気で、優しさを感じさせる琥珀色の瞳。何処か、儚く俯く姿は百合のようで美しいイメージ。


プレイヤーネームは、葛葉(くずは)


「あれ、君は……確か、いつしかの初心者さん」


ん?えっと…?どちら様でしたっけ?


「あの、初対面ですよね?」


すると、葛葉さんはキョトンとしてから笑う。そして、何やら操作すると光に包まれ、傷薬を教えてくれたあの黒髪の少年の姿に。僕は、驚いてしまう。


「こんにちは、薬草採取ですか?」


「うん。あれ、このゲームって2ndキャラは作れないよね?君は、どうやって姿を変えてたの?」


僕は、戸惑いつつも思わず質問する。少年は、九尾の獣人に戻りつつも暢気に笑ってから言う。


「まず、自己紹介からしましょう。僕は、ルイスと言います。獣人の時は、葛葉と呼んでください。祈祷師で、サブは薬師ですが錬金術師でもあります。一応、このゲームは初期からやっています。」


初期っ!?つまり、このゲーム開始時点でログインしたプレイヤーだって事。ベテランも、ベテラン…何か、凄い人と知り合っちゃったかも。


「あ、えっと…アレンです。錬金術師で、右も左も分からない初心者です!拡張メンテナンス後の、第七募集でログインしたんだけど。よろしくね。」


あー、同じ歳くらいだろうし砕けた話し方してみたけど……大丈夫、だよね?うん、大丈夫そう!


「アレン君は、フレンドとか居るかな?」


「いや、居ないけど。」


すると、考える仕草をする葛葉。


「じゃあ、僕とパーティーを組みましょうか。」


「え、でも良いの?葛葉は、前線へ行かなくて。」


すると、葛葉はクスクスと控えめに笑って言う。


「僕は、生産職ですから。前線へ、行くのは素材を求める時だけです。さて、まずは基本の話をしましょうか。まず、採取です。スキルレベルは、現在はどれくらいですか?ちなみに、現在はレベル70がMAXになっています。見方、分かりますか?」


「えっと、スキルレベル5だよ。」


僕は、困ったように呟く。すると、ルイスさんは頷く。そして、鑑定を使い周りを見渡すと言う。


「では、周りの雑草を採取のスキルが15になるまで採取しましょう。勿論、鑑定も使い続けてくださいね。MPポーション、ここに置いておくので。」


えっと、使わないとスキルレベルが、上がらないからかな?よし、頑張ってやるぞー!


開始から、2時間経過…


ルイスさんは、本を片手に魔物を討伐している。何でも、この森の魔物は初心者向けで、行動パターンが決まっているんだとか。一刺しで、倒してる。


「あの、レベル15になったよ?」


「では、もう一度鑑定してください。」


鑑定すると、薬草以外の雑草に名前が付く。


「おわっ!凄い、痺れ草と毒草ばっかり!」


葛葉は、頷くと初心者向けの錬金セット出す。


「これは、僕が使ってたものですがあげます。そうですね、トレード申請を送りました。アレン君は、OKボタンを押せば大丈夫です。」


「でも、良いの?」


僕が、オロオロと言えば小さく笑う葛葉。


「僕には、必要ないものですから大丈夫です。」


うわー、綺麗に手入れされた錬金術セット。でも、ただは申し訳ないので何かしたいなぁ…。


「あの、このままだと申し訳ないって言うか…」


「別に、気にしなくて良いのですが。でも、そうですね。なら、breezeに薬草を売りに来てください。まぁ、いつでも良いです。のんびり、楽しんでくれれば。さて、毒草があるなら毒薬を作りましょう!ちなみに、毒ポーションは別物ですからね。」


ルイスさん曰く、〇〇薬となるアイテムより、〇〇ポーションのアイテムの方が効果が良いみたい。


でも、僕がポーション系を使うのは早すぎる。


なので、〇〇薬をマスターすべきと言われた。さてと、聖水でぐつぐつと煮込んで取り出す。すり潰して、特殊手袋をはめて布を使ってそれを搾る。出てきた、液体が毒薬だそう。なるほど、なるほど!


ついでに、姿を変えられるのは年末イベントの報酬らしい。ちなみに、黙っとくように言われた。


こうして、葛葉さんとフレンドになった。


さて、次は痺れ草で麻痺薬を作る事になった。まずは、痺れ草を刻んですり潰し、沸騰した聖水の中に入れる。色が、濃ゆくなったらピント布の張ってある鍋を用意する。少しずつ、布の上に濃ゆくなった液体を流す。薬草の繊維が、布の上に残るのでそれを捨てれば完成。冷まして、瓶に入れるだけ。


「あ、レシピが追加された!」


「それは、良かった。レシピさえ手に入れれば、こんな面倒な工程をせずに、素材さえ集めれば自動で完成するので。とても、作業が楽になりますよ。」


なるほど!それは、良いかも!


「さて、そろそろ攻撃手段を鍛えるべきですね。」


「え?攻撃手段は、毒と麻痺薬があるよね?」


すると、葛葉は真剣な表情で言う。


「これは、教えないとですね。」


葛葉さん曰く、敵によっては強い異常の耐性を持つ個体もいるそう。そうなると、薬頼りでは直ぐに限界になる。だから、薬に頼らない攻撃手段も必要との事。まあ、確かにそう言われればそうだね。


「と言う訳で、武器は何にする予定ですか?」


うーん、と言われても…ね?錬金術師が、持つ事の出来る武器って短剣や短刀そして本だったよね?


「うむぅ……。」


「まあ、何事にも先ずは挑戦。取り敢えず、基本であるナイフから使ってみましょうか。大丈夫、何かあれば直ぐにフォローしますから。恐れずに、色んな武器を挑戦してみましょう!頑張って!」


優しい…。葛葉さんは、励ますように明るく声をかけてくれる。失敗しても、怒らずに安心させるように笑って落ち込む僕に声をかけてくれる。


「ダガー、そしてナイフが使いやすい。」


「ふむ、そうですか。レベルも15だし、初心者卒業おめでとうございます。サブ職業が、解放されましたね。あれ、薬師を選ぶんですか?」


そう、薬師…お医者さん!錬金術師とも、相性が良いし回復も出来る!何より、爆弾に憧れる!


「憧れの、ジョブなんです!」


「なるほど、憧れは大事ですね。僕もサブは、薬師ですから暇が有れば相談ならのりますよ。」


やっぱり、良い人だ!


ピコン   


あれ?何か、称号を貰ったみたい。


称号:新米の錬金術師

   錬金王の弟子候補


ふーん……ん?んんっ!?え?ちょっ!?えぇー!


「あの、葛葉?やばい称号、出たんだけど。」


「ん?えっと、どんな称号ですか?」


葛葉(ルイス)は、キョトンとしている。


「………錬金王の弟子候補。」


ぶはっ!?


すると、葛葉(ルイス)が紅茶を吹き出した。


「葛葉、大丈夫っ!?」


「あー、うん……出てしまいましたか。」


葛葉は、困ったよう呟くとため息を吐き出した。

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