第10話 ノイルの過去と運命

さて、お茶会会場だけど。凄く、視線を感じる。殿下は、僕に笑顔で声をかける。ノイルは、ため息。


「ノイル、急にごめんね。」


「……はい。」


すると、エウロスは困ったように言う。


「公務じゃないし、個人的なお茶会って事になってるから敬語は要らないよ。それに、彼らは公爵家の君に用がある訳じゃないんだし。」


「と、言われてもね。」


ノイルは、椅子に座ると参加者を見る。


右から、黄緑の髪に青い瞳の少女とも少年とも見える子。この子が、神聖信仰国グレティアの祝福児アンリ。とても、明るく優しい表情で常に笑顔。


次に、赤髪に赤い瞳。独裁国家スカーレット帝国、その祝福児セネル。キツい目つきで、何処か敵を作りがち。発言も、少し粗くアンリとは不仲である。


次に、紫髪に緑の瞳。貿易国家ルナーブ国、その祝福児シレネ。この子は、口が上手でお喋り。女の子で、セネルに苦手意識がある雰囲気だ。


次は、青い髪に赤い瞳。政治国家ニーアン国、その祝福児シャオマオン。こちらは、女性だが男口調。セネルに、良く注意をする気遣い上手。


次は、産業国家ヤークン国。髪は、金髪で瞳はオレンジ色。少し子供っぽい少年で、やんちゃっぽい。好奇心が、大きく僕をキラキラとした視線で見る。


次は、茶髪に紺色の瞳。戦争国家ダナヒス、その祝福児プーア。ローブで、容姿は良く見えない。ただ、オドオドして泣きそうな雰囲気を放っている。


改めて、見返すと中々に個性的な子供達である。


ノイルは、苦笑して紅茶を飲むと深呼吸する。全員の視線が、ノイルに集まっている。なので、思い切って要件は何か聞いてみる事にした。


「それで、僕に何か?」


「えっと、森の賢者様。とても、お会いできて光栄です。あの、僕はアンリといいます。」


ノイルは、アンリを見て優しく微笑む。すると、赤面してからアンリは深呼吸。そして、話し出す。


「僕が、聞きたいのは瘴気汚染された、精霊の浄化方法です。近年、かなり増えてきていて……。」


「あー、それね。彼らは、還り方を忘れたの?」


すると、アンリは困ったように頷いて言う。


「はい、自我も少しずつ消えてきて……」


「ふむ、精霊王の導きを失ったが故の堕落かな。だとすれば、その原因を排除すれば自我は戻るよ?ただ、そのまま自我が戻れば闇落ちしかねない。うーん、一応は心当たりがあるんだけど。今の僕では、行動範囲的にも対応が出来ない。困ったな。」


ノイルは、真剣な雰囲気で言えば6人も考える。


「その、心当たりとは?」


「錬金国家、クルフナ帝国…。あの国に、もう精霊や妖精は居ない。皆んな、怖がって逃げちゃった。それに、祝福児も実験道具にされちゃったし。だから、君達はあの国に行っちゃ駄目だからね。」


ノイルは、悲しそうな苦しそうな表情で言う。6人は、頷いてから考える仕草をする。


「あー、森の賢者様……。俺は、セネルだ。お願いだ、祝福を取り消したい。もう、嫌なんだ!」


ふむ、見たところ火の大精霊の加護、もとい祝福を持っているようだね。さて、困ったな。祝福は、消す事が可能なんだけど。それしたら、彼は死んじゃうかもね。火の大精霊は、彼を生かすために全ての力を代償にした。祝福の力で、彼は生きている様なもの。もし、祝福を解けば彼も大精霊も死ぬ。


「ふーう……。何が、嫌なの。」


言葉に寄っては、少し怒るかも知れないけど。


「それは……」


セネルは、俯いて黙り込む。ノイルは、小さくため息を吐き出してから、素っ気ない雰囲気で言う。


「死にたいの?」


「は?何で、死ぬんだよ!」


ノイルは、紅茶を優雅に飲むとストレートに言う。


「君、祝福によって生かされてる。それを、失うって事は死ぬって事だよ。だから、無理かな。」


すると、納得したように黙り込む。


「はーい、うちはシレネいうのよ。賢者様、よろしくなー。話ってゆうのは、賢者様…婿に来ない?」


「笑えない、冗談だね。他を、あたってね。」


ノイルは、冷たく返事する。


「いやいや、冗談じゃないよ?親からも、国王からも頼まれたし私も良いと思ったから。」


「あのね、僕って一途だから受け入れられない。」


すると、その言葉にエウロスも驚いた表情をする。


「えー、それは無理だね。うん。」


「ノイル?僕、初めて知ったんだけど。誰?誰なのかな?場合によっては、養子に出したりする必要があるし。後で、ゆっくり話し合おうか?」


エウロスは、少しだけ動揺しながらも真顔で言う。


「嫌だ、秘密。けど、嘘では無いよ。」


ノイルは、暢気に笑う。


「そんな報告、聞いてないよ?」


「うん、言えなかったんじゃない。」


ノイルは、次だとばかりにシャオマオンを見る。


「実は、私もだ。親と国王にな…。もう一つは、森の賢者様の加護を貰いたいのだが……。」


すると、ノイルは険しい表情で言う。


「断る、僕は主にしか加護はあげない。」


すると、エウロスは驚いた表情をする。


「つまり、僕は森の賢者の加護を持っているって事なの?その、主って僕の事でしょう?」


「うん、そうだよ。君には、僕の加護がある。」


ノイルは、次だと言わんばかりに隣を見る。


「あのさ、賢者様って若いけど本物?」


「精霊や妖精に、聞いてごらんよ。僕だって、好きで賢者になった訳じゃないし。」


すると、好奇心な雰囲気で言う。


「捨てられた、公爵家の子。愛されなかった、不幸児。精霊王に、自由を奪われた哀れな子。」


すると、険しい表情をするエウロス。一方、ノイルは特に気にした雰囲気も無く微笑む。


「だから?それで?もしかして、怒ると思った?」


「……呪いを受けて、堕ちる運命の賢者。」


すると、それにエウロスが反応する。


「君は、転生者?」


「そうだよ。にしても、エルダーワンダーランドの主人公は、まだ登場して無い。ノイルが、闇に堕ちるのは13歳の夏。しかも、本人は闇に堕ちれど優しい心を保っていた。それが、本作には書かれてなかった。何で、正気を保てたのかな?」


2人は、ノイルを見る。ノイルは、2人の会話の意味が分からずに首を傾げる。何を、言ってるの?


「うーん、良く分からないけど……。もし、僕が闇に堕ちるとして思う事があるなら。きっと、感謝じゃないかな?まあ、僕は変えのきく賢者だと言う者達も居る。けど、それ以上に支えてくれた人達が多いから。その人達が、傷つく事はしたくないな。」


ノイルは、暢気な雰囲気でぼんやりと笑う。


2人は、真剣になるとノイルに言う。


「ノイル、賢者の立場は変えがきくけど。君の代わりなんて、居ないんだ。そんな、悲しい事を言わないで。君は、絶対に僕が守ってみせるから。」


「失礼な発言、ごめんね。君は、怒っても良いんだよ?君は、不自由な身なんだ。僕も、君を堕とさないように協力する。だから、怒り泣いたって…。」


すると、ノイルは深いため息を吐き出した。


「自分の為に、泣くのも怒るのもやめたんだ。大切な友人、ライナとの約束でね。幼馴染で、恋のライバルだった。何処に、居るか知らないけど。」


ノイルは、困ったように笑うと次だと言う。


プーアは、手を見せる。ノイルは、苦笑して言う。


「しくじったね。理解せず、理に触れたから呪いをかけられたんだ。まったく、仕方ない子だね。お友達、手伝ってくれる?僕1人は、少し辛いかも。」


『いーよ!』『任せて!』『はぁーい!』


ノイルは、精霊語で短く詠唱して呪いを解く。


「あ、ありがとう……ございます。」


「今度は、ちゃんと気をつけるんだよ?」


プーアは、頷いてフードを外す。アルビノで、おっとりした見た目の少女である。


「さて、要件は終わりだよね。」


全員が、頷いたのを見てから頷く。


そして、ゆっくりとお茶会は幕を閉じた。

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