第4話 朝の騒ぎ

あれ、何でかたまるんだろ?まあ、いっか……。




とある日の朝、椅子に座り朝食を食べようとする。


すると、食堂に騒めきが。そこには、次期四公3人それと殿下が朝食を食べに来たからだ。ノイルは、それを他人事のように一瞥して食事を再開する。すると、隣に座る殿下。暫くの、硬直と沈黙……。


ノイルは、驚いて食事を止める。


「おはよう、良い朝だね。隣、座らせてね。」


「おはようございます、エウロス殿下。」


ノイルは、テーブルマナーを守って食事する。4人の視線を感じつつ、無言で食事をするが……。ファイが、暢気な雰囲気でノイルを見て話しかける。


「ノイルは、四公訓練に出ないのか?」


「四公訓練?」


ノイルは、キョトンとして首を傾げる。


「そう、父親に会えるぜ。」


「それは、興味ない。」


ノイルの即答に、四公の3人は固まってしまう。殿下は、興味深げにノイルを見る。そして、本心だと分かると驚き、思わず笑う。そして、質問をする。


「ノイルは、父親の事が嫌いなの?」


「嫌いです。」


ガタッ!


ん?何か、音がしたけど……気のせい?


すると、殿下は少しだけ困ったように笑う。四公の3人も、苦笑してからノイルを見る。


「まあ、顔だけでもだせよ。」


「わかった。」


ノイルは、暢気に言えば考えるファイ。


「なんで、そこまで?」


「ん?なんでって、僕の自由を奪ったから。どうせなら、ずっと放置しててくれても良かったのに。」


ノイルは、少しだけ悲しそうに言う。


「でっ、でもさ。クフリー団長も、悩んだって聞いたぜ。最初の奥さん、ミリエラ様を忘れられずにだな。そして、お前を2番目の奥さんから……」


ノイルは、食事を止めてから冷たい口調で言う。


「へぇー、産みの親の名前はミリエラとクフリーって言うんだ。今、初めてしったよ。」


その言葉に、思わず信じられないと驚く周囲。


「え?しっ、知らなかったのか?」


ノイルは、無言で頷くと深いため息。


「それと、2番目の奥さんから守るためって、言おうとしたよね?全然、僕を守れてないから。」


「それは、どう言う事ですの?」


アイリスの言葉に、素っ気ない雰囲気で言う。


「毎晩のように、暗殺者を送りつけて来るし。うっかり、死にかけた事もあるんだけどな。」


その言葉で、食堂は更に大騒ぎになる。


「まっ、まあ…団長も忙しいし…」


「そうだね。でも、親とは思えないかな。僕の親は、育ての親であるガーレおじぃーちゃんだけ。」


すると、3人は気まずそうに黙り、殿下は困ったようにノイルを見る。ノイルは、食欲が無くなり殆ど食事に手をつけないまま立ち上がる。


もったい無いが、食べれば吐き気がしたので、食べるのを諦めたのだ。3人は、申し訳ない表情。


殿下は、ノイルを止めるか迷って動けなかった。


ザンザスは、ノイルに声を掛ける。


「おう、朝から大丈夫か?」


「ザンザス団長、おはようございます。」


ノイルは、少しだけ驚いてから明るく笑う。


「仮入団だが、3人の団長を呼んで、評価して貰ったら合格ラインだった。と言う事で、今日からお前は見習い騎士になる。それでだ、希望騎士団はあるか?無いなら、上が勝手に決めるらしいぞ。」


「あの、17特殊騎士団が良いです。」


すると、ザンザスは驚く。


「そして、いろんなトラブルをおこすんだな?」


うんうん、分かる。分かってるぞ。っと頷くザンザス。ノイルは、少しだけ不機嫌な雰囲気で言う。


「酷いです。人を、何だと思っているんですか?」


「我が隊のムードメーカー兼トラブルメーカー。」


素っ気ない言葉で、サラッと言うので笑う周囲。


「さり気無く、酷いっ!?」


「まあまあ、それより見習い騎士の昇格。」


17特殊騎士団のエース、ガリバルは暢気に言えば17特殊騎士団のメンバーが声を合わせて言う。


『おめでとう!』


ノイルは、キョトンとしてから嬉しそうに言う。


「ありがとうございます。」


「じゃあ、所属騎士団はウチで良いんだな?」


ザンザスは、最後の確認とばかりにノイルを見て言う。周りの騎士団長が、何か言いたげだが無視している。ノイルは、抵抗なく頷いたので笑う。


「待ちたまえ!仮にも、四公なのだぞ!」


「……仮にも…ね?つまり、僕が公爵家の一員だと認めてない訳だ。ならさ、これを渡してよ。」


ノイルは、鞄から書類を出して渡す。


「……っ!?」


「絶縁書、受け取ってくれないからさ。そしたら、明日にでも王都から喜んで出て行くよ。」


すると、素早く殿下が絶縁書を奪った。


「ストップ!えーと……、落ち着こうか。君に、出て行かれたら困る。君を、敵に回したく無いし。」


「あー、なるほど。」


やっぱり、陛下は殿下に教えてたのか。僕が、剣聖に育てられ次期剣聖の資格を持ってる事。ちなみにだけど、僕の後ろには精霊や妖精だけでなく、有力な商人・鍛治師・旅団・傭兵団・貴族・優秀な軍師や武闘家がついている。まあ、おじぃーちゃん繋がりだけど。いつでも、力を貸すと約束している。


陛下としても、僕を手放すイコール後ろの人々との縁が切れたり薄れたりする。それは、国家を揺るがすくらいのダメージ。だから、陛下は余り僕を不自由にしないように対応していたのだ。


「ふざけるな!平民育ちが!公爵とは言え、大した力も権力も無い!低能で、無力な餓鬼が!」


あ、殿下が青ざめた。あらま、気を失ってファイ君に支えられてる。周りは、それに気付いている。


「力は、有るよ?権力?そんなの、いつだって持てるし。ただね、興味が無いから持たないだけ。」


「ふん!子供の強がりだな。」


第4魔術騎士団、団長ピルスだっけ?ノイルは、深いため息を吐き出す。そして、ピルスの腕を掴む。


「なら、僕の力を見せてあげるね。『我が友、理の守護者なる精霊王よ。汝の友であり、森の賢者たる我が願う。かの者を、理から弾け。』終わった。」


ちなみに、『』は精霊言語で言った。なので、周りは僕が何を言ったか、理解は出来ない。


「は!何も、変わらないでは無いか。」


ノイルは、思わず笑う。


「あーあ、駄目じゃない!もう、知らないよ!」


あ、殿下お帰りなさい。


おじぃーちゃん、森の賢者である事も話してたの?流石に、精霊王の事は言ってないようだね。それにしても、よっぽど僕を手放したくないみたい。いっそうの事、国外へ逃げてしまおうかな?


「殿下、何をご乱心なさるのです?」


「もう、ヤダ……。取り敢えず、ノイル!後で、お茶会でもしよう。勿論、逃げちゃ駄目だから。」


ノイルは、キョトンとして頷く。元より、王族からの招待。まあ、断ろうと思えば出来なくも無いけどね。やっぱり、失礼にあたるし。


「いや、逃げませんよ?」


「ふーん、一応だけど迎えをよこすから。絶対に、部屋で待機しててね?それと、絶縁書だけどおそらく通らないかも。詳しくは、お茶会で話すよ。」


何か、凄ーく嫌な予感がする。王家関係、しかも面倒な縁を感じる。嫌だな、何か知りたくない。


「うん、察しの通りだとだけ言っとくね。」


さいですか。エウロス殿下は、ノイルを見て言う。


「うわぁ……。そんな事、知りたくなかった。」


思わず呟いた言葉に、エウロスは苦笑する。


「さて、そろそろ私も公務があるし。それじゃあ、お茶会でゆっくり話せるのを、心から楽しみにしてるよ。ノイル、国から逃げるとか言わないでね?」


ノイルは、苦笑してザンザス達と騎士団へ向かうのだった。そして、見習い騎士の茶色の制服を着せられる。今日は、先輩騎士達の訓練の見学だけ。




**


のちに、ピルスが魔術を使えなくなってクビになったりしたのだが。ノイルに知られる前に、素早く騎士団長達が情報を握り潰した。主に、四公が。


**




ノイルは、着替えると真っ直ぐ部屋に戻る。数分後に、殿下の使いの者が来て案内されるのだった。

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