第3話 仮入団生としての仕事
さて、仮入団先は第17特殊騎士団だね。さて、僕の他に5人のメンバーが来てる。しかしながら、全くやる気が無く人気騎士団が良かった。っと、愚痴を漏らす。うん、あのさ……空気、読もっか!
まずは、倉庫の掃除を命じられたんだけど。
うわっ、埃臭い。
ノイルは、窓を全て開き換気する。そして、棚の中身を全て床に置く。バケツに、水を入れて掃除。
5人は、倉庫に入って来ようともしない。様子を見に行くと、視線で会話して何処かへ行ってしまう。ノイルは、深いため息を吐き出す。妖精達が、埃臭い匂いを追い出してくれた。ノイルは、嬉しそうに笑えば妖精は手を振って姿を消してしまった。
さて、頑張りますか。
「おいこら、昼ご飯くらい食べに行け!」
ハッとして、振り向けば団長のザンザスさんが。ザンザスは、深いため息を吐くとパンと水筒を置いてから、手を振って倉庫の外へ向かって行った。
「ありがとうございます。」
キョトンとして、お礼を言い窓側に座ると食べる。妖精達が、心配そうに見てるので不満は言わない。
訂正、言えない。
言ったら、妖精達…張り切って、彼らに悪戯しに行くだろうし。止めるの、面倒だしね。精霊とか、聞かれたら最悪は殺しに行くだろうし。もぐもぐ…。
にしても、彼ら……サボリがばれてるよー!
いったい、何処に行ったんだろう?やっぱり、人気の騎士団を見学しに行ったのかな?ってか、この量を1人で片付けるのか……。はっきり言って、全く終わる気がしない……。でも、頑張らないと。
ノイルは、パンをお茶で流すと水筒を洗い日干しする。そして、掃除を再開する。掃除が終わり、まだまだ使えそうな剣を集める。そして、刃こぼれした剣を砥石で綺麗に研いでいく。研ぎ方は、おじぃーちゃん行きつけ鍛治師の直伝なので大丈夫だよね。
1人で暇な時は、良くお手伝い要員として働いた事もあるし、鍛治師のお墨付きの技術だけど。
剣を使うなら、剣の事を知れってじっちゃんが言ってた!なんて、内心はふざけながら黙々と磨ぐ。流石に、眠いけど全部やらないと中途半端は嫌だし。
「お前な、今何時だと思ってやがる!」
えっ?
拳骨が落ちて、頭を押さえるノイル。うーん、痛みは慣れてる筈なのに痛い。やっぱり、気持ちが乗ってるからかな?にしても、少しだけ無茶したかも。
窓の外を見て、僅かに朝日が登っているのを確認。
「えっと、仮入団生の朝の仕事は……」
紙を見て、お仕事を継続しようとするノイル。
「お前なぁ……良いから、さっさと寝やがれぇ!」
という事で、寮に帰されてしまいました。
***
ザンザス視点
今日は、仮入団の生徒が来る日だ。まあ、毎年の如くやる気の無い奴らばかり。唯一、1人だけが空気読め!って雰囲気で他の奴らを見ている。暫くしてから、諦めたのか俺達を見て指示を待つ少年。
確か、四公の剣のお家の長男だったか?
噂では、公爵家を乗取りに来た。とか、弟を殺しに来たとか悪い噂しか俺達は聞かない。だがそれも、今の反応を見てデマだと確信する。
名ばかりの、剣公爵家長男……ね。まあ、気にしとくかな。さて、今は使ってない倉庫の掃除からな。
うん、やっぱりか……。
仕事をしてるのは、公爵家のノイルだったか?そいつだけだった。まあ、放置しとくか。そのうち、ご飯を食べて再開するだろ。それが、間違いだった。
いやいや!何で、食堂に来ないんだあいつ!
倉庫では、汗を拭いながらも必死に作業しているノイル。1人で、間に合わせようと足掻いていた。
食堂に戻り、パンとお茶を貰って倉庫へ行く。
「おいこら、昼ご飯くらい食べに行け!」
思わず、怒鳴ったのは仕方ない。
それから、会議もあって倉庫を見に行く暇がなく帰った。しかし、寮長からノイルが戻ってないと言われ早朝に倉庫へ。倉庫は、埃ひとつ無く一生懸命に掃除された事が分かる。そして、ノイルは、砥石で剣やナイフを研いでいた。見れば分かるが、研ぎ慣れていて拭き作業も丁寧。自分の顔が、映るくらいピカピカに磨き上げられていた。思わず唸る。
しかし、コレとソレは別問題……
「お前な、今何時だと思ってやがる!」
ビクッと、驚いて剣を置いたのを確認して殴る。しかも、そのまま朝の仕事をしようとするし!
「お前なぁ……良いから、さっさと寝やがれぇ!」
って、思わず追い出してしまった。
「団長、そこまで怒鳴らなくても……。」
「分かってる。けど、あそこまで自身を大切にしない奴だとは、思わなかったんだ。あんな、無理するならノルマなんて作らなかった……。」
ザンザスは、頭を掻きながら苦々しく言う。
「まあ、俺も1人しか掃除してないとは思って無かったし同罪だな。団長、それで他の5人は?」
「あ?あー、第一騎士団を覗きに行ってたみてぇーだが、叩き出された挙げ句に試験合格取り消しだったか?次期四公の、訓練の邪魔をしたらしいぞ。」
すると、腹を抱えて笑い出す。
「まあ、予想通りだな。」
「仕方ない、夕方には顔出すように伝言をお願いして、仕事の変更内容とか考えないとな。」
青年は、明るく雰囲気で言う。
「頑張れー、団長。」
ザンザスは、ため息を吐き出した。これでも、この青年はウチの若手に入るが。実力もあり、我が騎士団のエース騎士でもある。暫く、こいつに面倒を任せるか。何だかんだ、仲良くしそうな気がする。
***
さて、顔を出すよう言われたので行きます。
「もう、大丈夫そうだな。」
団長は、こちらを見る事なく言う。
「はい、ご迷惑をお掛けしました。」
僕は、頭を下げて言う。しかし、途中で止められる。公爵家の者が、そう簡単に頭を下げるなと。
そう言われても……ね?
「名ばかりの貴族ですから。そもそも、親の顔も全く知りませんし、公爵家の人達と会った事も話した事もないもので。平民扱いで、結構です。」
2人は、思わず無言になってしまった。
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