妹、ライトノベルのレギュレーションについて思う
さて、どれがいいですかね……
私は書店のライトノベルのコーナーに立ち悩んでいる。
きっかけはお兄ちゃんが『外部の情報が欲しい!』とダダをこねたからだった。
え? 新聞やテレビ? そんな俗世間の情報をお兄ちゃんに与えるわけにはいきません。
そしてライトノベルとやらは兄妹モノがあるらしいと聞き及びました。
一般小説に妹モノが少ないことを考えるとやはりお兄ちゃんに渡す本は妹モノのライトノベルが適切でしょう。
邪悪な幼なじみや姉モノを渡すわけにはいかないので注意が必要です。
「とりあえず妹とタイトルに入っている物を集めて検閲しますか……」
私は手に持ったカゴに妹の文字が入ったライトノベルを片っ端から放り込んだ。
予算は許すが妹が負けヒロインなモノをお兄ちゃんに渡すわけにはいきません、持ち帰ってちゃんと読み込んでおかなくちゃ……
――その夜
「うぇぇぇ……良かったですねぇ……お兄ちゃんと結ばれて……」
私はライトノベルで涙していた。
読んでみて分かったのだが妹モノを謳っていても実は血が繋がっていないという設定が実に多い。
ライトノベルの規約でもあるのか、妹とくっつくラノベのほとんどは都合良く非血縁設定が唐突に入っていた。
これは見過ごせないことだ。妹と名乗るならやはり積み重ねたものが欲しい、ぽっとでの少女が妹と名乗ったからといってそれを妹モノと認めることは出来ない。
私は数冊の実妹モノと、妥協の末に選んだ義妹モノ――こちらの方が多い――をお兄ちゃんのところへ持っていった。
「お兄ちゃん! 本を買ってきましたよ!」
「本当か? ここにいると世間において行かれるような気がしてるんだ……ありがとう……ありがとう」
お兄ちゃんに感謝されるのは悪い気はしないのでいいだろう。
私はお兄ちゃんの前にライトノベルの束と私の選評を付けて置いた。
お兄ちゃんは何故かものすごく微妙な顔をしていたが気にしてもしょうがない。
私は実妹モノのお勧めを紹介し――こういうのもビブリオバトルというのだろうか? ――お勧め順に並べていった。
お兄ちゃんは発行が一番新しいモノから読んでいくことにすると言い私の選評はサッと眺めてあまり注目していなかった。
それについてはあまり気分のいいものではないが、どうせお兄ちゃんは全て読むしか選択肢はないのだから構わないのかもしれない。
私はふと……『獄中で本を読む囚人』という単語が頭に浮かんだがこの幸せな空間が獄中だとすれば一般世間は一体何なのだろうかとふと疑問に思うのだった。
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