六話の続き、あるいは余談

 私はAirPlay対応のスピーカーを買っていた。

 AirPlay、そうワイヤレスで音楽が飛ばせるのである。


 え? 何に使うのかって?

「どうやらお兄ちゃんは私の珠玉のCDを聞いていないようですね……」


 私が監視環境を眺めてみての結論だった。

 あの部屋にはいくつかのマイクが設置されているがCDプレーヤーの動作音を拾わないのだ。

 インターフェースはイヤホンなので音声を拾えないのかもしれないがシャカシャカ音すらしないということは動かしてないのだろう。

 思えばお兄ちゃんは替えの電池をねだらなかった、必要がなかったのだろう。


 と、いうわけでお兄ちゃんの部屋にはAirPlayスピーカーが設置された。

 コンセントは錠前でガードしてミュートが出来ないように強化ガラスの箱に入れている。


「お兄ちゃん! 遠慮せずたっぷり聞いてくださいね!」


 私がそう言ったときお兄ちゃんは何やら頭を抱えていたが直になれるだろう。


 部屋をバタンと閉めて私は自室に飛び込む。

 今日から私がお兄ちゃんの部屋のDJだ、自由に音楽を流すことが出来る。

 とりあえず私のASMRを1時間くらい流しておいた。

 ASMRはイヤホン推奨だがスピーカーでも聴けないことはない。


 いい感じにお兄ちゃんがぼうっとしたところで、私は続けて催眠音声を流す。

 お兄ちゃんが徐々にめに光を失っていくのが見えた。


 そこで私は再びお兄ちゃんの部屋に戻った。


「お兄ちゃん! 私のこと好きですか?」

「アアダイスキダヨ」


 これほど望んだ一言だったのに私の心はなんだかあまり満たされなかった。

 やはりお兄ちゃんの自由意志で私を愛してくれないといけないのだろう。


 私は部屋に戻ってAirPlayの仕様は一日1時間、私のカラオケを流す、と決めたのだった。

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