私はバーサーカーの妻でして!

第21話 腐った性根は治らないものでして。

~ネルファーside~



「何で見つからないんだ!」



早朝から荒れ狂いながら、やっと見つけた【彼女】が見つからない事にイライラし、剣を取り出し部屋の中を滅茶苦茶にする日々。

カーテンは使い物にならず。

切り裂かれたベッドを片付ける者もなく。

衣装箪笥も机もテーブルも傷だらけだ。



「……なんであいつが……なんで俺には見せなかった笑顔でっ!!」



――あの日、女を連れて帰る帰り道で見つけた、元妻。

直ぐに妻だと分かったのは、前世からの因縁なのか何なのか。

前世で結婚を持ち掛けてきたのは父だった。そして結婚相手がサチヨだった訳だが、見た目が好み云々の前に、彼女は俺を見て一瞬眉を寄せたんだ。

まるで、見透かすように……。

結果、その見透かしたような態度に耐えきれず、彼女を抱くこともなく、直ぐに愛人の許へと逃げ帰った。



直ぐにわかった。

――コイツは俺の事を愛しはしないだろう。

直ぐに絶望した。

――戻って来いとも、離婚するとも言わず、まるで興味がないとばかりに放置された。



構って欲しかったわけではない。

愛人の許へ行っていたのは事実だし、でも、愛人は愛人であって妻ではない。

何とも言えない罪悪感がたまらなく好きだったと言うのもある。

スリルがたまらなく楽しいと言うのもあった。


でも、それらは最初だけだった。


どれくらいすれば、俺の方に気持ちを傾けてくるだろうかと、愛人と日々を過ごした。

会社で妻を連れてのイベントには、愛人を連れ行った。

こんな話題を彼女が聞けば、流石に自分の方を見てくれるんじゃないかと思った。

だが、そんな幻想は直ぐに消え去った。

――彼女は、妻は本当に俺に興味が無かったのだ。


何度か電話したことがあったが、事務的に話すだけで、本当に俺の事なんか興味がない、愛してもない、義務的に妻でいるだけと言うのがありありと伝わる会話に、心は荒んだ。


前世の自分は、結構モテるタイプだったし、女には困らない生活をずっと過ごしていたし、自分になびかない女は居ないと自負していたのに、そのプライドをへし折るには十分過ぎる態度だった。


許せないと言う感情と、あいつは趣味が悪いと言う感情で自分を保ったが、結婚20年目にして愛人が別の男を見つけた。

気が付けば40歳を超え、頭皮だって寂しくなり始めた頃に愛人に捨てられると言う屈辱。

家を追い出され、妻のいる家に戻るために話し合いをしなくてはと迎えに行き、その時初めて「離婚」と言う言葉を聞いた。



――お前まで俺を捨てるのか!!



そう叫びたい気持ちを抑えることも出来ず、久方ぶりに、本当に久しぶりにあった妻の頭を殴った。

そのまま腕を掴んで車に押し込み、走り出した先での事故……。

俺は、短い期間ではあったが、一命を取り留めた。

だが、妻は死んでしまった。


この時初めて、彼女の両親から、これでもかと言う程の暴言を投げつけられた。

その上、彼女の遺骨を俺の元に置くことは出来ないといって、妻は両親に守られるように、骨だけになった彼女は、本来ならば……自分が変な意地をはらなければ戻っていたであろう実家の墓へと入ることになった。


俺の両親は妻の両親に何度も土下座し泣いて謝った。

病院のベッドで横たわる俺を何度も父は殴り続け、そのままベッドから頭から落ちて意識が途絶えた。





それからは、何故か知らない場所で審査を受け、気が付けばこの異世界に来ていた。

願い事は、良い家に生まれる事と、男なら憧れるハーレムを作ることを入れ込んだのは間違いない事実であり、そのペナルティは波乱万丈な人生と言うものだった。

その結果、当時は騎士団長の家に生れ落ち、モテモテの日々を送り、更に王太子の友人にすらなれた。

ハーレムを作るなら、SEXが上手くないと女を満足させられないだろうと思い、当時、王太子であったチャーリーの恋人であったアルジェナとSEXしまくった。

アルジェナだってスリルがたまらないと言っていたし、まるで愛人を抱いているときのような高揚感があった。


何より、友人の彼女を抱けると言うスリルは、何物にも代えがたい楽しさがあった。


その結果が色々な波乱万丈だったが、今は貴族社会に戻ることも出来ず、何とか冒険者登録をした時に知り合った女や、街で困っていたその辺の娘を屋敷に連れ帰り、ハーレムを築いていったが――。



正直、人数が多くなりすぎると下半身も擦り切れる。



抱き飽きた女は別の場所へ売り飛ばして金にする。

これが結構儲かった。

闇社会にも仲の良い友人ができ、ゴブリンの集落を大きくしたいと言われれば、ハーレムの中から抱き飽きた女を5人程売り渡し、懐は潤った。

裏社会の友人を通して、女性の血が欲しいと言われれば、同じように抱き飽きた女を売り渡すことで懐は潤った。

潤った金で別の女を引っかけるのは楽しくて仕方なかった。

だが――その帰りに妻の見たこともない幸せそうな顔を見た時に、自分が何を一番求めているのか気が付いてしまった。


だが、気づいた時にはもう遅かった。

元妻には、既に相手がいたのだ。


――取られてなるものか。

彼女はこの世界で償わなくては。

――取られるくらいなら。

彼女を閉じ込めてしまおう。


どす黒く湧き上がる感情を抑え、彼女を探す日々だったが、裏社会の人間に聞いても見つからなかった。

花屋にも何度も足を運んだが、元妻は行方不明になって花屋の方でも探していると言う連絡を受けた。



「女子会の帰りに何かあったのかしら……」



そう口にした女性に、あの時、何が何でも女子会に押しかけておけば良かったと後悔した。

そうすれば今頃は……そうは思っても行方不明の元妻を探す方が先決だったが――。







「ネルファーよ」

「何です父上」

「王城からの通告だ。それも最終通告のな」



老いて草臥れたこの世界での父は、私に手紙を手渡した。

そこには、これ以上ハーレムを作ることを禁止する事と同時に、この通告を無視する場合は家を取り潰すと言う内容と共に、冒険者としての働きを期待していると言う最後のねぎらいがあった。

王城からのこの手紙を見た父は足元がおぼつか無いまま、ソファーに座りこむと大きく溜息を吐いた。

昔は騎士団団長として厳しかった父だが、今ではアンダーソン家にその地位を奪われてしまっている。

自分の所為だと言うのは解っているが、そこまで落ち込む事だろうか。



「ネルファーよ、ハーレムを作ることは、今後禁止だ。これ以上進めればお家取り潰しだぞ」

「何を言うんです、冒険者として活動していればハーレムは作れるんでしょう?」

「だが、お前が冒険者として働いたことはないだろう?」

「汗水流して働かなくとも、女は寄ってきますし金は手に入りますからね」

「ネルファー。父のせめてもの願いだ。いい加減その中からでもいいから妻を見つけよ。結婚すれば多少はその考えは変わるかもしれん」

「結婚したい相手が今行方不明でしてね……必死に探してるんですよ」



実際、彼女を見つけたらそのまま教会に向かい、無理やりでも妻にしてしまおうと考えていた。

この世界での結婚とは、とても強固な契約のようなもので、離婚する場合は果てしなく難しい。

前世は結婚生活に失敗したが、今度こそ俺は、元妻に見つけた時の笑顔を向けてもらうのだ。

あの笑顔を他人が奪っていると言う面白くない事実など抹消してやる。



「妻にしたい女性がいたのに、行方不明とは?」

「ええ、リコネル王妃が経営していらっしゃる花屋の従業員なんですがね……女子会の帰りに行方不明になったそうで……」

「ならば、ワシの方からも騎士団に探して貰うように頼もう。それでお前が落ち着いてくれるのならな」

「それは是非お願いしたいですね!」



冒険者を雇うよりはマシになりそうだ。

それに、金を払うのは父の様だし、俺の懐が苦しむことはない。

笑顔で父にお願いすることにし、俺はこの世界で作ったハーレムの女性たちをどこに処分するか、裏世界の友人に相談してから決めることにしようと考えた。





=======

予約投稿です。


キーポイントにもなるネルファー視点です。

腐った性根は死んでも治らない……と言う感じになってますが

実際転生して、元の性格のまま過ごすことになるとしたら、どうなるでしょうね。


作者は想像すらつきません(笑)

皆さんは異世界にいる自分が想像できますか?

私は、出来れば、推しのいる世界に転生したいとは思います(真顔)


さて、久々にチャーリーだのアルジェナだの名前が出てきましたが

ネルファーも似た者同士なくらいに下衆だよ……って思いながら書きました。

今後どう関わってくるのかは、是非お楽しみに!


そして今日もアクセス有難うございました!!

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