第15話 女性陣からのアプローチ


 サトルたちは祝杯を挙げていた。


 まだ序盤のダンジョン、そしてレベルも10と目標の10分の1に達しただけである。しかしこの節目は、彼らを一つ上のステージに上げたといって間違いない。


「本当にサトルのおかげね。あなたがいなかったら、どうなっていたかわからないわ。あらためて、ありがとう」


 エリは三杯目のグラスを空にしながら、少し上目遣いでサトルに感謝を告げた。


「確かに4人そろうだけでこんなに戦いが楽になるなんてな。ゲームの時以上に、その重要さを感じる。それにしてもソロで10階層まで、どうやってクリアしていったんだ。一度も会わなかったしな」


 マッキーも負けじと三杯目のグラスを空にし、店員におかわりを告げながらサトルに質問した。


「ダンジョンの中は、時間によって魔物の活性が違うんだ。初日に日の出前から潜って夜までいた時に気づいてな。みんなと会ったときも、初日から潜りっ放しだった後だった」


 サトルはまだ一杯目を半分残しながら、冷静に語った。なお僧侶のワカナはすでに横で寝息を立てている。一杯飲みほす前に潰れてしまったようだ。


「ねぇミーナ、11階層以降はどんな感じなの?」


 エリを担当する召喚獣は猫とキツネみたいなミーナ。ツンとした感じのお嬢様を彷彿させるが、これでもモフモフ系であり、同じ席でミルクを上品に飲んでいる。



≪今までの階層は単体、もしくは最大でも4体までしか魔物が出てきませんでした。11階層より下は、一度の戦いで10体以上の魔物を相手にすることになりますワ。もちろん強さも上がりますし、相手が使う技もより強力になりますワ≫



 ミーナの説明に他の召喚獣も頷く。


≪今後の予定は?すぐに11階層へ向かいますラ?≫


 ボンがきのこのような食べ物をかじりながら聞いてくる。


「まず俺の考えを言えば、20階層まではそんなに気にしなくても大丈夫な感じがする。魔物のパターンもそうだし、みんなの力もそうだし。装備がいいのも大きい。


 ひとまずヤバそうな敵に会うまでは、早めに進んでレベルを上げておいたほうがいいと思う」


 俺の直感だと、攻略が遅れたり時間が空くと、攻略への意欲が低下する恐れがある。というのも、日本に戻るという選択肢がない場合、無理にダンジョンに潜ってレベルを上げる必要がないからだ。


 はっきり言って10もレベルがあれば、日常生活に支障はないし、そこら辺の魔物や他人の暴力に怯えることもない。


 仮にこの星で暮らしてもいいかと思い始めたら、ダンジョンでのレベリングをネガティブに感じてしまうかもしれない。


 この3人の本音がどこにあるかわからないが、4人で組む以上、同じ方向性で同じモチベーションでなければどこかで歪みが生まれる。その前に、本音で語り合う必要はあるし、目標を統一したほうがいい。


「私は、とにかく早く日本に戻りたい。置いてきた娘が待っているの。だから早くレベルを100に上げて、日本に戻れるようにしたい」


「そうなのか。エリは子供がいるのか。意外だったが、それなら早く戻らないとな」


「意外って何よ?」


「ハハハ、悪い意味じゃないよ。まだ若そうだし、結婚して子供がいるとは想像していなかったよ」


「若いって、年上をからかうのもいい加減にしなさいよ。あなた本当は何歳よ?」


「俺は21歳だね」


「ぶっ!(7歳も年下…)」


「俺は33だが、年上だからと言って気を使わないでくれ」


 エリは自分の年齢を言えず下を向き、マッキーは33歳と自ら説明した。そして


「私は20歳になったばかりの学生よ、やっぱり女は若いほうがいいよね!」


 先ほどまで酔いつぶれていたワカナが、片手を挙げながら何やらアピールしている。しかし顔を真っ赤にして机に伏せたままであり、酔っているようだが、勇気を振り絞っての発言でもあったようだ。


「私も20代だからね!そんなに差はないわ!」


 エリも必死にアピールしているが、その表情から苦戦といった様子だ。するとマッキーから爆弾発言が飛び出した。


「サトルは年上と年下はどっちが好みなんだ?」


 その瞬間、張り詰めた空気が漂い、エリとワカナの間は絶対零度を感じさせる冷気が漂った。


「そうだな… 恋愛経験は自慢できるほどないし、相手の年齢は考えたこともなかったな。後輩の女の子がいいと思ったこともあるし、バイト先の年上の女性も素敵だったしな」


 この言葉にエリとワカナは下を向きながらニヤリと笑みを浮かべ、机の下でガッツポーズをしていたことはサトルは知らない。


「ちなみにエリの娘さんは何歳?」


「6歳で名前はミナよ。召喚獣のミーナも娘から名付けたのよ。


旦那とは早くに別れて、二人で暮らしていたけど、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。


心配だけど、私が仕事でいなかった時も近所のおばさんが良くしてくれたし、母親も近くに住んでいるから、大丈夫だと思うけど…


 とにかく早く戻って顔を見ないと。心配でしょうがない」


「そうか、そうだよな。娘さんが待ってるなら早くレベルを上げなきゃな。


 ちなみにマッキーは独身なのか?」


「俺はバツイチだ。もう結婚とか恋愛はこりごりだよ。


 今はアニメ、ゲーム、漫画があればいい。ワンピの続きが気になるし、もしかしたらハンタが再開しているかもしれない。巨人のラストも近いし、スラの第二期も見たい。CCもウメが優勝できるか、気になるものばかりだ。とにかく俺も早く日本に戻りたい」


 なるほど。みんなそれぞれ事情があるんだな。でもここでワンピやハンタの話題が出るとは思わなかった。やはり同じ日本人同士、異世界であっても同郷が4人もいれば話が弾むし心も和む。王女が言っていた通りだったな。


 その後もくだらない話と日本の思い出、この世界のことについて何時間も話し合った。そして4人は早く日本に戻るという目標のために、心を一つにしたのである。



「タヌコらのトーク」へつづく

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