第10話 パーティー結成
それぞれの宿でいったん休憩し、アタミの個室で再度待ち合わせた4人。そこで3人に与えられたスカーレット王女の召喚獣が戻ってきた。
“報告に戻りましたが、必要はなさそうですナ”
僧侶の召喚獣クロミがあごをさわりながら話した。3人のパートナーは、犬とうさぎみたいなラック、猫とキツネみたいなミーナ、猫とうさぎみたいなクロミだった。それぞれ2~3確認をし、そして視線が俺に向けられた。
「じゃあ、あらためて自己紹介をしようか。俺はサトル。本名はまぁいいか、日本では神奈川県に住んでいる。こっちには3日前に来て、2日前からダンジョンに入ってレベルは10。魔法戦士で、今日10階層をクリアした帰りに、さっきの状況に出くわした」
神奈川県と言えば日本人ならわかるし、嘘ではないと信用してもらえるだろう。俺はそう意識して、あえて具体的な地名を出した。
「本当に2日で10階層をクリアしたのね。未だに信じられないけど、あの力を見せられれば納得するしかないわね。
私は魔法使いのエリ。日本の名前は置いておいて、私も住んでいるのは神奈川よ。私たちは2週間ぐらい前にここにきて、すぐに出会ってパーティーを組んだわ。それでもまだ5階層をクリアできていない。それを考えるとあなたは規格外ね」
確かにボンにも他にいないくらいのクリアスピードだとは聞いていたけど、それほどなのか。それにしても俺より10日くらい早くクリアしたのか、それは凄いな。
「俺は戦士のマッキー。住んでいるのは東京。同じ関東人だな。こっちに来てからの流れは、エリが説明したとおりだ」
「私は僧侶のワカナ。私も神奈川。さっきの完全回復は凄かったわ、あらためてありがとう」
雰囲気から察するに魔法使いと戦士は年上か、それと僧侶は年下かな。まぁ見た目からもそうだし、何か下ばかり見ているから恥ずかしがり屋か人見知りするんだろう。
「それで、一緒にパーティーを組む方向でいいのかな。俺は君たちしか知らないし、他のパーティーやクリア者がどの辺にいるのかもわからない。仮に、ということでも良ければ組みたいんだが」
「それはこちらからもぜひお願いしたいわ。魔法戦士は必要としていたジョブだし、あなたの実力は残念だけど私たち以上。お願いするのは私たちの方だもの」
「なら交渉成立だな。まずはレベル100を目指して頑張ろう。ところでみんなのレベルは?」
「それが、やっと4階層をクリアしたばかりなんだ。4階層だけでかなりの時間がかかったと思う。つまり4だ」
お、ということはいつの間にか追い抜いていたということか。まぁプライドもあるだろうから、そこはあまりつつかない方がいいな。
「まぁ4階層のペリカンみたいな魔物は確かに知らないと厄介だな。あいつは見た目以上にスピードがあるからな。
ただクチバシが弱点だから、クチバシを狙っていけば何とかなるぞ。
そうか、スピードで劣る戦士と僧侶がいると、そっちを狙われるから、それも影響したかもな」
「やけに詳しいのね。こっちに来て2日なのに」
ん?みんなは気付いていなかったのかな。
「あのダンジョンの魔物の動きは、ソーマジック・サーガ序盤のダンジョンに出てくる魔物と同じパターンなんだ。見た目がちょっと違うが、ゲームでの攻略法は通用するよ。
ゲームではあの種類の魔物は250分の1の確率で慰めの指輪を落とすから、500回ぐらい戦ったよ」
みんな唖然とした顔で俺を見ている。
「そんなの知らなかった。そもそもソーマジック・サーガでのダンジョンは、ほとんどアイテムを獲ったら素通りだから、モンスター相手にそこまでやりこんでいないわよ」
それもそうか。まぁゲームの楽しみ方は人それぞれだ。ひとまず今後の方針を決定しよう。
「まず全員で10階層をクリアしてレベル10を目指す。そこで装備とスキルを再確認して、11階層以降を目指す、そんなところかな」
全員が頷いたので方針は決定した。
~~
魔法使いのエリ
あの時は本当に死ぬかと思った。
そして娘に2度と会えないかもしれないかと思うと、今でも胸が痛い。
それにしてもサトルはかっこよかった。
年下だけれども、私もまだ20代だからいけると思う。
でも日本に戻るのが先。
今は余計なことは考えない。
早く戻って娘の顔が見たい。
今、どうしているのかしら。
私に何かあったら、隣のおばさんを頼るようにと話していた約束を覚えているかしら。
それとも隣の町に住んでいる祖母に世話になっているかしら。
一人でずっと待っていると考えたら、気が気でなくなってしまう。
そういえば僧侶のワカナはずっと黙っていた。
あれは間違いなくサトルに惚れたね。
もしかしたら三角関数になんて、ははは、まさかね。
もう寝ましょう。
明日からは10階層が待っているわ。
~~
王城
「いや~焦った焦った。
もしあの3人に何かあればマサノリさんに怒られるところだったわ。
あれ以上危なかったら私が行くしかなかったけど、サトルがちょうどいて良かった。
まぁ時間稼ぎもしたし、ちゃんと私も仕事をしたわよね。
今夜もマサノリさんに褒めてもらわないと!」
「快進撃」へつづく…
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