#12 白竜の魔王対英傑【12-5】
空で繰り広げられる激しい攻防。
だがそれを見ている余裕などなく。
天を
見上げた先には高波のように押し寄せる黒骨の山。
全てを飲み込み喰らい尽くそうとする暴虐の
連なるソードアーツの斬撃。
その周囲を、渦を描くいくつもの刃。
左右から挟み込むように拡がる黒骨を押し返す斧槍と
だが黒くそびえる凶骨の陰から。
ネバロは異形の大剣を横
大人の身の丈の3倍はある規格外の巨剣。
その斬撃は自身の生んだ黒骨を容易く吹き飛ばし、ディアス達を宙へと舞い上げる。
「っ……!」
「うわぁっ!?」
「アーくん、こっち!」
空中で身をひるがえすディアス。
吹き飛ばされたアーシュに、エミリアの操るシャルロッテが手を伸ばして。
エミリアは一緒に巻き上げられた黒骨にハルバードを叩きつけて方向転換。
アーシュのもとへ。
「リーシェ!」
ディルクの呼び掛けにリーシェは得物である小さな刃を操作。
それを押し固めてディルクと自身の足場に。
そしてその
ネバロへとその切っ先を叩きつける。
ネバロは自身の肌に力一杯突きつけられた刃を容易く手でパッパッと払った。
それだけでディルクの剣が吹き飛び、凄まじい勢いで地面に突き刺さる。
だが未だほとんど効果はない。
ようやくネバロがわずかに身体の気だるさを感じる程度のもので。
すでにネバロは
今までディアス達が耐えられてきたのはネバロの手心であり、本気を出して
「お兄ちゃん」
うんざりしたような声音でネバロがディアスに声をかけた。
「これが最後のチャンスだからね」
そう言って冷たく瞳を燃え上がらせ、その手に握る魔剣に魔力を込め始める。
「ディアス兄ちゃんなら」
アーシュが言った。
エミリアとシャルロッテに抱き抱えられるように挟み込まれたアーシュは、ディアスへと熱い視線を向ける。
それにディアスは視線を返して。
だがその眼差しは
「
魔力を無効化する。
それでディアスは思い当たった。
こちらのソードアーツを無力化し、ソードアーツの連続発動を何度も阻んできた純白の刃。
金と紺の装飾が施された、勇者の剣を具現したかのような
「でもあれって、アーくん取られてなかった?」
「あ」
エミリアに指摘されてアーシュはそうだ、と思い出す。
【黄鍵の魔王】シノカの作った扉の先。
どことも知れない魔宮に
「仮にそれがあれば切り抜けられたとしてだ。俺のことは俺が一番分かってる。すでに
ディアスが言った。
そう確信している。
「それでも」
アーシュのすがるような眼差しは未だに魔人ディアスを求めていた。
エミリアもディアスを見つめ、その姿に魔人の姿を重ねる。
魔人よりも勇者が強い。
それは証明されている。
なら魔人のディアスは必要ない。
逆の立場なら迷わず自分も身を引いた、と。
それが合理的な判断。
「なのになんで」
ディアスは思わず呟いた。
同じディアスだ。
差異はその戦闘スタイルだけ。
魔人に固執する意味が理解できない。
ネバロは
ゆっくりとその切っ先は地面から弧を描いて天へ。
緩慢な動作はカウントダウン。
そして
「ソードアーツ────」
ネバロは
前へと1人躍り出たのは白の影。
ディアスは自身の周囲に剣を逆巻かせ、ネバロの攻撃を1人で食い止めようと。
「またあいつは……!」
ディルクが舌打ちとともに言った。
同時にアーシュは
「ディアス兄ちゃん!」
アーシュはその声が届くかどうかも分からずに叫ぶ。
「また一緒に、おれ達と戦ってよ!」
常に一人で戦う白の勇者ではなく、共に戦った魔人のディアスを呼んだ。
────とある魔宮の、一角で。
横たわる白き剣は光を灯した。
その剣から無数の刃が生まれ、刃は剣を
格納と同時に柱のようによじれた刃の束は消失。
消えた次の瞬間には。
その剣は、主の手へ。
身構えるディアスの胸から付き出したのは小さな刃。
「なっ!?」
それを見下ろしてディアスは驚愕を
現れた刃は連なり、渦を描いて花弁のように。
その中心から白い切っ先の。
金と紺の装飾が施された
そして漆黒の柄を握る、自食の刃で形作られた手が伸びる。
それを前にディアスは目を大きく見開いた。
さらにもう一方の手が刃の花弁の中心から伸び、その縁に手をかけた。
刃の中から這い出すように、刃の魔人は姿を現す。
「『
あは! と嬉しそうに笑いながらネバロはソードアーツを放って。
それを、魔人ディアスは白の一閃を
「『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます