#3 赤の勇者 【3-16】
そう言うとディアスは肩をすくめて。
「失礼。確かに俺は番号を偽った。高名な赤の勇者様への
そこでディアスはにやりと笑って。
「ギルドバッジの偽造、加工は重罪だ。鮮やかな手際、かなり高位の錬金術か武具の
「ハハッ、見抜かれてたか!」
【赤の勇者】フリードは鋭い歯牙を剥き出しにして笑った。
眼鏡の青年は咳払いをすると自身の持つバッジに視線を向けた。
その表面がぐにゃりと歪むと、そこに刻印された羅列が全く別な番号に変わる。
「にしても俺を一目で赤の勇者と見抜いたって事は、どこかで会った事があったか?」
フリードがディアスに
「過去に1度」
「ほう、どのときだ?」
「…………『
「あれか。あれは大仕事だったが、ずいぶん前だな」
笑いかけるフリードにディアスは無表情で返して。
「悪いが過去話をしている暇はない。今は一刻も早く救助に向かいたい」
「おっと、そうだったな」
フリードは背後に立つ眼鏡の青年に振り返って。
「魔宮の構造把握と探知にいくらかかる?」
「普通は測定って複数人でやるものですからね。1人でやろうと思ったら並のスキルレベルだとどれだけかかるか」
眼鏡の青年が答える。
「なるほど。じゃあ10分でやれ」
「ちょっと、話聞いてましたか?」
「俺は並のやつをパーティーには入れない。全員俺の頼れる心強い仲間だ。もちろんお前もな?」
フリードの言葉を受けて眼鏡の青年は呆れたように笑った。
「当然です。…………5分で済ませますよ。『
眼鏡の青年がスキルを発動すると、その視界をモノクロの映像が上書きした。
膨大な線と点が彼の視野を過ぎ去る。
「あ? 5分でやれんの? 10分も無茶振りのつもりだったんだが」
フリードが言った。
「やりますよ。フリードさんにそこまで言われたら無茶も通します」
眼鏡の青年は情報の処理を行いながら続ける。
「もちろんマップデータを全くの0から把握するとなるとさすがに時間がかかります。ですが落とし穴がそこにあったと言うなら、そこから下方向への探知をして範囲を拡げていけば子供達は見つけられる」
「ほうほう」
「平行して半年前に更新されたマップデータを利用してデータが空白の所を中心に調べて埋めていけば時間がかなり短縮できます」
「さっすが!」
フリードは眼鏡の青年の肩をバンバンと叩く。
「ちょっと、フリードさん? ノイズが走るんでやめてください」
「フリード、あまり邪魔をするんでないよ。子供の命がかかってるんじゃ」
眼鏡の青年の隣に
老婆は色褪せた桃色の髪を腰まで伸ばし、大きなつば広の三角帽子を被って。
帽子の陰から銀色の瞳がフリードを睨む。
「分かってるさ」
「お主の分かってる、は信用ならんからな」
老婆は溜め息を漏らした。
「めんどくせぇ。そこが落とし穴ってんならぶっ壊して降りればすぐじゃねぇか」
一番後ろの巨漢の男が言った。
巨漢の男は頭を丸め、頬から首筋にかけて大きな傷跡が走っていて。
人の頭を握り潰せそうなほど大きな手が握り拳を作ると、魔宮の壁をドンと叩く。
「落ち着いてくださーい。もし下にまだ子供達がいて瓦礫の下敷きになったらどうするんですかー」
栗色の髪の女性がふわふわとした声音で言った。
女性は腰に手を当て、おっとりとした垂れ目で巨漢の男を見上げると精一杯眉根を寄せて睨む。
ディアスは赤の勇者一行の挙動1つ1つに神経を集中させていた。
「おいおい、そんなに警戒すんなよ」
フリードがディアスに歩み寄りながら言った。
「だったら剣の柄から手を離してもらえないか」
ディアスは未だに剣の柄を離さないフリードの右手を見る。
「悪いがそれは無理だ」
フリードは笑みを浮かべながら。
だがその瞳は獲物を見る獣のように鋭く。
「俺は鼻が良くてな。階段の先からでも臭ってたぜ」
刹那、その眼光が一際強くなって。
ディアスとエミリアの背筋に悪寒が走った。
「────お前ら魔人だろ」
ディアスはフリードが動くのを捉える前に剣を抜いて。
剣を抜き放つと同時にディアスは剣の魔力を解放。
「ソードアーツ『
放たれた弧を描く一撃。
フリードはディアスに
衝撃に膝をつくディアス。
ソードアーツが剣技ですらない、ただの振り下ろしに押し負けて。
「くっ…………!!」
ディアスはさらに
ソードアーツを押し返したフリードの剣にさらに斬擊をぶつける。
それでようやくフリードの剣を押し返した。
ディアスは体勢を立て直す。
すぐさま逃走へと切り替えて。
下肢を折り、跳躍の構え。
そしてエミリアに呼び掛ける。
「─────」
だがディアスがエミリアに呼び掛けるより速く。
「もういっちょ!!」
続けざまに放たれたフリードの一撃。
ディアスは剣を交差させて受け止めるが、その威力は耐えられるものではなかった。
受け止めた剣が砕け散り、その身体は弾丸のような勢いで吹き飛ばされる。
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