堕ちた勇者の千剣魔宮~その勇者は刃のダンジョンを身に纏う~(魔王に敗れ、心臓を奪われた勇者はダンジョン生成能力を得たが魔力消費を気にしてまさかの展開域0。だがそれが意外と強いようで?!)
#1 最小展開域のダンジョンマスター【1-5】
#1 最小展開域のダンジョンマスター【1-5】
響き渡る
叩きつけられた
展開された魔宮の石畳が
魔人の少女の影から現れたのは
全身が濃紺の毛皮に覆われ、その大きさは中腰の姿勢でもゆうに3メートルを超えていた。
血に染まった赤黒い腰布を身に
左右に巨大な
シャルと呼ばれたその魔物は巨体に似合わぬ
胴をまっぷたつに断ち、相手の剣ごとその体を
「やれる! これなら勝てるぞ!」
「なんて強さだ」
「やっちまえ!」
凄まじい勢いでスケルトンを
圧倒的攻勢。
赤いスケルトンは下からの奇襲も交えながら次々と現れるが、魔人の少女とその魔物のコンビは次々にそれらを撃破していった。
敵の魔人を手のひらに乗せたスケルトンも、その体をバラバラに砕かれる。
その間際に魔人は後ろに跳んだ。
壁からスケルトンの腕が現れ、魔人はその上に着地する。
「こっちとは真逆のボス特化型。しかも自己強化でボスとタッグを組んで戦うタイプの魔人。そういう疲れるの俺嫌いなんだよねー」
魔人はそう言って肩をすくめた。
「諦めるんだな。貴様に勝ち目はない」
キールが魔人に言った。
その
「C難度の分際でよくも手間取らせてくれたな。C難度の攻略で犠牲を出すなど他の連中のいい笑い者だ!」
キールは
「本来なら私の剣でむごたらしく殺してやらないと気がおさまらないが、今回の任務は捕獲作戦だ。後でせいぜいかわいがってやるわい」
「嫌だよ。俺は疲れるのも痛いのも嫌いなんだ」
魔人は即座に拒否を口にした。
赤いスケルトンの1体が魔人の少女からキールの方へと振り返り、キール目掛けて剣を振り下ろす。
キールは舌打ちと共に剣の
抜き放たれた刃は鋭い
次いでキールは高く飛び上がるとその首を寸断する。
その姿を見て冒険者達から歓声が上がった。
「さすがキールさん! 従えてる魔人もやべぇがキールさんもやっぱり強い!」
「さっすがA難度攻略者……!!」
「キールさんは最強だぜ!」
そんなキールと冒険者達をディアスは見て。
「あ、あのおっさん口だけじゃなかったんだ」
ディアスが思わず呟いた。
キールは討ち倒したスケルトンを踏みつけて。
「……これが最後の警告だ。おとなしく降伏するがいい。抵抗すればするほど後で待つ私のしつけは厳しくなるぞ?」
キールの言葉に魔人は顔をしかめた。
魔人はキールから視線を逸らすと、魔人の少女とその魔物が赤いスケルトンの群れをなぎ倒すのを見る。
「仕方ねぇなー」
気だるげな呟き。
だが
「俺のダンジョンに────」
その時、広間の壁から無数に剣を握ったスケルトンの腕が突き出した。
振り上げられた剣が一斉に広間の床に叩きつけられる。
「ようこそ」
そして魔人の言葉と共に広間の床が
冒険者達は空中に投げ出された。
「下の階層だと……!?」
キールが驚きの声をあげる。
「なるほど、見当たらないと思ったら下に隠れてたのか……!」
ディアスが言った。
落下する
土作りの洞窟から、白い無機質なダンジョンへとその
その先には一人の少年が
落下する冒険者達を見上げるその瞳も赤い光を宿している。
そして冒険者達は床に投げ出された。
半数は
魔人の男は少年のそばに飛び降りてきた。
「ようこそ。俺の『
「そして改めてようこそ、僕の『
魔人の男に続いて魔人の少年が言うと、頭上が土の天井に覆われた。
そしてその天井からは上半身だけを乗り出して。
先程まで交戦していた赤いスケルトンよりもさらに巨大なスケルトンが姿を現す。
その大きさは上半身だけで10メートルはあった。
頭の左右に黒い大きな巻き角を持ち、8つの腕が肩、胸、脇腹、腰から伸びている。
キールはその姿を見ると顔を青ざめて。
「ボスクラス。それも、このスケルトンは過去の攻略で見たことがある。た、確かA難度の……?!」
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