第7話 その後の彼等・1(旧パーティ視点)
「おらぁ!」
気合いの声を上げてロイドが粗末な槍を構えたオークの群れを薙ぎ払った。
エレミアの槍の穂先が逃げ腰になったオークの頭を貫いた。
今回の討伐任務は豚のような顔をした獣人、オークの群れの討伐だ。
オークは単体では強くないがとにかく数が多い。すでに50体は倒しているが、まだまだ居るな。
ライエルが離脱してから初めての討伐任務だ。
正直言ってライエルを外そうとロイドが行った時、ロイドを説得したほうが良いのかと思ったが。
今の所これと言って問題はない。
後ろからエレミアの魔法、光の矢が降ってきた。光に貫かれたオークがまた後退する。
いつものパターン、このまま三人で群れを叩き潰せば終わりだ。
そう思った時。
「
イブリースが叫んだ。
◆
オークの壁の向こうに弓を構えたもう一団のオークがいた。
オークは総じて臆病で、戦況が不利になるとすぐに戦意を失って逃げ腰になる。
普通ならもう戦列が崩れていてもおかしくないと思っていたが、まだいたとは。
後列のオークたちが矢を番えて上空に向けて引き絞った。今撃てばオークたちにも当たる。
狙いは後ろのエレミアか。
ライエルと呼びかけようとしたが……あいつはもういないんだった。
黒い塊のように矢が飛び上がってそのまま降ってくる。
エレミアは詠唱に入っていて気づいていない。
「エレミア!上だ!!」
大声で声をかけるとエレミアが顔を上げる。とっさに顔をかばうように手を上げた。
周りに矢が降り注いでエレミアの悲鳴が上がる。
見上げるとワンテンポ遅れて矢の塊がもう一つ降ってきているのが見えた。
「くそ!」
走りながらメイスを薙ぎ払う。間一髪で矢がバラバラと飛び散った。
矢が周りに降り注いで、またエレミアが悲鳴を上げる。
「大丈夫か?」
エレミアの手には無数の傷が出来て血が流れている。肩には一本の矢が突き刺さっていた。
痛みをこらえるようにエレミアが頷く。
深手ではないらしい。
ただ毒が塗ってあるかもしれない。だが確かめている余裕はなさそうだ。
オークの前衛はまだ数がいるし、
もう一度弦の音がして矢の塊が上空に飛び上がった。今度は落ち着いて降ってくる矢を払いのける。
この状況は不味い。どうする。
「オーク共が!小細工するんじゃねぇよ!」
作戦を考えるより早く、ロイドがオークの壁を切り開くようにして強引に突進した。
あのままじゃ囲まれる。
「イブ!ロイドの援護をしてくれ」
「分かったわ!」
三人で一気にオークの群れを潰すのが一番だ。
だが今はそれができない。
俺も一緒に切り込みたいが、周りの茂みにも気配を感じる。オークが潜んでいるかもしれない。
ロイドとイブリースが打ち漏らしたオークがこっちに走ってきた。
この状況でエレミアを孤立させるわけにはいかない。
だがエレミアの護衛に入っていると俺は何もできない。
ロイドたちをあのままにはしておけない。
二人の内一人でもやられれば、あの状況じゃ孤立して袋叩きにされてしまう。
かといって乱戦状態に魔法を打ち込むわけにもいかない。
ロイドたちを巻き添えにしてしまう……完全に分断されてしまった。
ライエルがいれば此処はあいつに任せて俺も切りこめばいい簡単な状況だが、今はもういない。
もう一度矢の塊が空中に飛び上がった。まだ
ロイドのものらしき罵声が聞こえる。
オークは強くはないが数が多くそれなりに頑強だ。ロイドの火力でも簡単に殲滅できるわけじゃない。
それに臆病で戦況が不利に傾くとすぐに逃げていくが、こっちの不利には嵩に掛かってくる。
走ってきたオーク二体をメイスで叩き潰す。血と肉が飛び散った。
もう一体、後ろから石斧をもったオークがドタドタと突進してくる。
「弓兵まで魔法は届くか?」
「……もう少し近づけば」
エレミアが怯えたように言う。
至近距離での乱戦なんて殆どしていなから仕方ないが、今はそんなこと言っていられない。
迷っている暇もない。
「……距離を詰める。魔法で少しでも矢を止めてくれ」
「……分かったわ」
エレミアが硬い表情で頷いた。
この分断された状況でロイドかイブが倒されれば、局面は一気にこっちに不利になる。
誰かが倒される前にあいつらを倒すしかない。
……オーク討伐なんて簡単な仕事だったはずだ。
ついさっきまで楽勝だと思っていた。
それが、なぜこんな危ない橋を渡ることになっているんだ?
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