第6話 魔法学園、主席
結構な数がある討伐依頼を吟味する。一つが目に付いた。
「ならこれかな」
ブラッドハウンドの群れの討伐任務。
アルフェリズから乗合馬車で1日の所にある村からの依頼だ。
ブラッドハウンドは赤っぽい毛の大型の狼で群れで行動する。
狂暴な上に、森の獲物を片っ端から食い荒らしてしまうから狩人にとっては二重の意味で迷惑な存在だ。
ただ、ブラッドハウンドはヘルハウンドのような上位種と違って火を吐いたりはしない。
接近させると手強いが、俺の風があればある程度は止められる。最悪こいつが戦力にならなくても、退路を確保して逃げるくらいならなんとかなるだろう。
難易度はさほどでもないが、4人編成のパーティとかだと報酬が低めだから残ったんだろうな。
「ブラッドハウンドの群れの討伐、早ければ3日でケリが付く。報酬は5000クラウン」
「ブラッドハウンド……」
テレーザが考え込む。
「知っているか?」
「無論知っている……本でだが」
まあ実戦経験は無いだろう。
「3日で終わるか?」
「多分大丈夫だ、経験上」
ブラッドハウンドの群れはかなり広範囲を移動するし、見つけた生き物は何でも食べようとする。森を移動していればまず確実に接触できるだろう
「よし、それでいい」
本当に報酬には何の関心も示さなかった。なにやらちょっと腹立たしいな。
依頼の紙をはがす
「それをどうするのだ?」
「向こうに持って行って受け付けてもらう」
冒険者ギルドでは依頼を受理してもらってからでないと報酬が出ない。
冒険者にとっては常識だが、それも知らないらしい。
改めて見ると、本当にこいつは駆け出しなんだな、と思う。
ブラッドハウンドは群れで動くから囲まれることも多い。俺一人でこいつを守り切れるだろうか。
経験があれば、相互に意図を理解しあってポジションをとれる。
だがこいつにそれは望めない。
ただ。
改めて掲示板を見る。
討伐任務でこれ以上期間が短いものは無いし、ほかの依頼は俺一人の手には余る。これが最善だ。
●
カウンターで依頼の紙を出した。
もう顔なじみになった受付の女の子、エレナがそれを受け取って書類に書き込んで赤いロウで二枚を重ねて封をする。見慣れた作業だ。
「はい、ライエルさん。受理しました。御武運を」
「ありがとう、エレナ……ところで」
後ろをちらりと見る。テレーザはまだ掲示板の前にいて討伐任務のエリアを見ていた。
「あの子は一体何なんだ?いきなりB2ランクって普通じゃないだろ」
「ええ……まあそうですけど」
エレナが口ごもる。流石に素直には教えてくれないか。
「あいつと組むのは初めてだ。情報が知りたい……まだ俺も死にたくないんでね」
そういうとエレナの顔が少し真剣になった。
戦力を正しく把握することの大事さは彼女にも分かっている。
ゴシップ的な興味も無くはないが、それ以上に少しでもあいつの実力を知っておきたい。あの調子じゃ本人が具体的に話す気はないだろうし。
エレナが俺越しにテレーザを見て紙片にペンを走らせて俺の前に押しやってくる。
それに短く書かれた文を見て思わず声が出そうになった。
アレクト―ル魔法学園、魔術実技……首席
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