11

 林は短くなった髪を右手で掻き上げ、耳にかけた。その仕草に俺はドキッとする。


「俺……。林のことが好きだから。他の男と付き合わないで欲しい」


「……それ……ほんとう?」


「本当だよ」


「平本君達と賭けをしてないよね?」


「もう、そんなことはしない。俺の本心だよ。林のことが……本気で好きなんだ。もう二度と泣かせるようなことはしないって約束する」


 林の口元から「クスッ」と笑みが溢れた。可愛い眼差しが俺に向けられた。


「本気で告白してくれたのね。秋本君とは生徒会の打ち合わせをしただけだよ。付き合ってなんかいない」


「えっ……? 違うのか?」


 林が恥ずかしそうに足元に視線を落とした。


 俺は林の腕を掴みグイッと引き寄せた。林の体が一瞬よろけ、小さな悲鳴と共に俺の腕の中に倒れ込んだ。


「……こ、こ、光月君」


「俺、林のことが大好きなんだ。俺ともう一度付き合って下さい。今度は真面目に付き合うから。お願いします」


 俺達の視線が重なった……。


 林がパッと俺から離れた。

 真っ赤な顔をして、俯いたまま小さな声で呟いた。


「私の……勝ちね」


「勝ち……?」


 俺は林の言っている意味がわからない。


 ――私の勝ちって……?


 どういうこと!?


 急に……嫌な予感がした。

 サワサワと裏庭の木が揺れている。


 まさか……。

 林を裏で操る人物が……。


 校舎の陰には人影が二つ。

 それは明らかに見覚えのある人影だった。

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