8
六限目の授業がやっと終わり、俺は猛スピードで教科書を鞄に押し込むと、林の机の前に立つ。
林は俺をチラッと見上げた。
大きな瞳にクルンと上を向いた長い睫毛。
林って……こんなに可愛いかったっけ?
思わずドキンと鼓動が跳ねる。
「光月君、私に何か用ですか?」
林は学生鞄に教科書を収めながら、淡々と話しかけた。外見は変わったが、口調は以前と同じだ。
「一緒に……帰らない? 大事な話があるんだ」
周囲にいた女子が、「きゃあ」って悲鳴を上げた。その声に、俺は余裕の笑みを浮かべた。
この俺が誘ってるんだ。
断るはずはない。
「ごめんなさい」
林は俺に視線も合わせず、教科書や参考書を鞄に収めた。
「この間のことは反省してる。この通り謝るから……」
俺はクラスメイトの前で、林に頭を下げた。林が大きな瞳で俺を見据えた。
この俺が頭を下げているんだ。きっと許してくれるよな?
「一体何のこと? 今から秋本君と会う約束をしてるの。彼が生徒会室で待ってるから」
「秋本? A組の? 七三分けの髪型をしていて、ダサい銀縁メガネの生徒会長か?」
俺の言葉に林がキッと睨んだ。
「人は外見じゃないわ。秋本君の人間性は、光月君よりもよっぽど優れてる。光月君、そこ退いてくれる? 私、急いでるから。邪魔しないで」
――ドンッ!
林が左手で俺の胸を突き飛ばした。不意討ちをくらい、俺の体はぐらつく。
クラスメイトは遠巻きに俺達を傍観ながら、「おぉ~」って声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます